60 ストラ 偏見と人見知りを発揮する。(表)
裏事情なんて知らないストラさんのリアクション編
とりあえず、初対面の新入生に対して、こんなことを言う人間をどう思うだろう?
「ふむ、謙遜だったか。いやー、よかった。うぬぼれの多いだけの若者ならお断りだと思っていたが。」
とりあえず偉そう、現場から離れた医者というのは基本的に偉そうだ。前世でもでっかい白い建物なドラマとか、そうそうに延命治療とかやめるようにいってくる藪医者といたしなー。
「合格だ、君が望むなら明日からでも医学教室に来たまえ。」
「えっいやですけど。」
何言ってんだこのおっさん? この感情が浮かぶと同時に私は周囲で自由活動をさせていたハルちゃん達に緊急招集をかけつつ、何時でも逃げられるように立ち上がる。
「お嬢?」
「ああ、そうだったね、行こうか。」
空気を察したリットン君に応じるフリをして私は、医学教授に向き直る。
「成績を評価していただけるのはありがたいのですが、すでに植物学の授業を選択していますので、お断りしますね。」
出来る限り愛想よく言ったつもりだけど、先生は意味がわからないといった顔をする。
「え、え、ええ。あれだよ、栄えある医学の。」
「ああ、そういうの間に合ってるんで。」
これはめんどくさいパターン。
「ま、まってくれ、君はストラ・ハッサムだろ。薬師様のお弟子の。「脚気」の治療法を各地で広めてたのも君なんだろ。」
これはあれか、教室へ招き入れていびり倒すか、それとも私の手柄とか知恵を横取りパターンか?
「1年生から医学の教室を選択する愚か者は多い。だからこそ医学教室を選択するのは、学園で研鑽を積んで2年目からという暗黙の了解、知っていたからだろ。だが、入学試験の成績に君の実績を考えれば、そんなものは関係ない、今日からでも教室にきて構わない。」
「いら。」
なんでそんな上から目線なんだろう。
医者の立場も教師の立場も勘違いしてないか?
前世でも教師は聖職なんてもてはやされていたけど、学校の先生なんて罰ゲームだった。苦労して資格をとってもまっていたのは、問題ばかり起こす生徒たちと、無意味に上から目線の保護者達。カスハラなんて日常茶飯事で、要領のいい先生だけが、他の人に仕事を押し付けて出世していく、そんな世界だった。あとは、教えることが好きと豪語して教師であることに酔って、残業三昧で周囲に仕事を増やす馬鹿野郎とかいたなー。本人は趣味感覚だからいいけどそういうやつほど、酒癖が悪かったり、同僚には何をしてもいいと思ってたりする人だった。
あかん、くだらんことを思い出して気分が悪くなってきた。
「おや、顔色が良くないな。そうだ、今から教室にこないかね。お茶と茶菓子を用意しよう。最近王都で流行りのハチミツケーキもあるぞ。」
それ、売り出したのは私・・・。
「じじじじじ(ストラ、大丈夫?)」
「じじじ(曲者だ、かかれー。)」
「ふるるる(お嬢に手を出してタダで済むと思うな。)」
にじり寄ってきた教師は、ハチたちにまとわりつかれて悲鳴をあげ。
「あっ、さすのはダメだよ。燃やすのも跡が残るからダメ。」
梟の出す炎であぶられ、見事に気絶した。
「ぴゅう――(で、この人、何なの?)」
「強引な客引きは、一応犯罪扱いだったよね。」
それに、手は出してない。目撃者も皆無。
「よし、ずらかるよ。メイナ様に試験結果の報告に行く約束もあるし。」
「おじょう、さすがにむちゃでは?」
大丈夫だよ、リットン君。
こういう手合いは、自分に都合よく記憶を改ざんして私と出会ったことも忘れているから。
ストラ「都会は怖いとこだねー。まさかいきなり強引な勧誘があるとは。」
ハル「じじじ(無謀)」
動物さん達も加われれば、下手なキャラや兵士よりも強いストラさん無双。




