51 風雲ハッサム城 防衛機構のみ
まだまだアスレチック。
第一関門である沈む足場こと「ハッサムの池」は見事な初見殺しとなったわけだが。私の悪ノリはそれだけじゃない。まあ、あんまりダラダラ語ってもしょうがないのでスピディーに紹介していこう。
第二関門 「ローリングブリッジ」丸太をピラミッドように積み上げた5段の塔。横から見るときれいな三角形に積まれたあれ、ちなみに子供向けには補助用の手すりとロープがついている。
「なんだ、丸太を積み上げただけじゃないか、楽勝だってばよ。」
そう言って余裕な様子で丸太に足を掛ける。
「狭く丸い足場であろうと、獣人の脚力とバランス感覚があれば、」
ツルン。
「あれー、ぐえー。」
足場にした丸太はきれいな回転してリビオンの兄ちゃんは顔面を強打してそのまま転がり落ちる。
「ぐははは、ひっかかってら。」
これにはドワーフ達もにっこり。
「な、なんだこれは。」
丸太というのは見た目だけ。表面はハチさんのロウで固定でしてツルツルにしており、丸太の中央をくり抜いて、戯れに試作したボールベアリングを搭載している。ほら、なんかクルクル回るおもちゃの軸のやつ。構図を伝えたらドワーフ達が嬉々して作り上げたよ。本来は馬車とかほかの機械に取り入れたいが、強度などが未知数なのでテストも兼ねて搭載したけど。
「ははは、ざまねえなWWW。」
自信満々の人間が引っかかるのは、最高にコメディーだよね。懐かしすぎて涙が出てきそう。
「くそ、こんなん、どうやって。」
「こういくんだよ。」
そう言って私は、丸太と丸太の隙間に足を突っ込む様にトントントンと登って見せる。
「なっ。」
「コツをつかめば簡単だよ。」
テストプレイでは何度も転んだけど、一度感覚をつかめばこの通り。前世の忍者な番組の序盤ステージのギミックを再現したものだけど、これがどうにも楽しい。この技術を利用すれば、なんかすごい滑り台とか作れそうだよね。
「くそ、なんでだ、魔法か、ぐわああ。」
頑張れ。コツは急ぎ過ぎないことだよ。
第三関門 「ターザンロープ」
頑丈に組んだ足場に儲けられたわかりやすいあれです。勢いをつけてジャンプして池の中央にある小島に着地できればクリアーです。
「ははは、これは楽しいってばよ。」
「ぐば、微妙に足りない。」
手足の短いドワーフ達には難易度が高いらしく安全のために適度にぬかるんだ泥に落ちて泥だらけになっていく。
「きゃーーー。」
「ジジジ(今。)」
子どもたちはハチさんたち共に飛んで楽しそうである。
「ちなみにこっちは上級者向けね。」
「「遠慮します。」」
白く染色しておいた特別な島には誰もチャレンジしなかった。ツルツルになるようにコーティングしておいた特別仕様はお蔵入りとなった。
第4関門 「二の腕地獄」
「なんだ、これは足がないぞ。」
「これは、またドワーフにはつらい場所を」
壇上に組んだ足場につるされたいくつもの柱やロープ。最初は足場ようの輪っかがついているが、後半はロープや柱のみだったり、絶妙な高さで並べられた棒など。
「サードステージの再現。私には無理。」
「サードステージ、これは4個目じゃないか?」
細かい事を気にしてはいけない。ともかくここは二の腕地獄。大人専用でお子様は、安全に配慮した雲梯や鉄棒、平均台の方へお進みください。
「ぐっ、これはまた未知の体験だってばよ。だが、」
「ぐおおお、酒ーツマミ」
シンプルな構造ゆえに問われるのは腕力とボディバランス。鍛えて膨れ上がっただけの筋肉では決してクリアーできないボディバランス
「うお、なんだこれ。」
ちなみに本家をリスペクトして急にガクンとなるやつも混ぜてある。
「なんだこれ、やばすぎるだろ。」
「おのれ、性根が腐っておる。」
やかましい、かつて多く挑戦者を打ち破った王道のギミックをやすやすと超えるんじゃねえよ。
第5の関門「反り返るアレ。」
あの番組といえばあれ、どうやって突破するんだよって思うあのネズミ返しを異世界使用で再現してみました。
「いや、なにこれー。」
大物との番組では5メートル程度の壁と1メートルほど沈んでカーブを描くあの形状。それを基準として、お子様向けの2メートル仕様、ジャンプの目安に印が付いたものと、異世界テンションで作った10メートルクラスも作ってみた。
ノリで
「いやいや、クマたちがやってくれたとはいえ、あんなの無理だろ。」
クマさんファミリーが組んでくれた基礎にドワーフ達が補強した結果、頑丈さは保証する。ただ見た目あれだ、青いハリネズミのゲームのステージギミックのようだ。
「とりあえず、走れば。」
そして、元気よく走り、ジャンプするタイミングが分からず頭から落ちるリビオンの兄ちゃん。走るだけだとそうなるって。
「ええ、とお。」
子どもたちはすぐに感覚をつかんだのか、子ども用のサイズはすぐにクリアできた。
「ぐおおお、もう一回、もう一回。」
「酒ーーーーーー。」
ドワーフ達を中心にはしゃいでいるようだけど、攻略へは時間がかかるだろう。
「くそ、難しい、だがなんだこの高揚感は。」
「絶対超えてやるってばよ。」
うん前世では自宅に再現してまで攻略しようとしたジャンキーな挑戦者もいたんだよねー。これは成功だ。
そんなこんなで5つの関門を中心としたアスレチック施設はわりと好評だったわけだけど。
「あれまー、休耕地で何やってんだストラ。」
すぐに父ちゃんに見つかってやりすぎだと怒られた。
「ええ、大丈夫だって、冬が開けたらすぐに元に戻すから。」
「そんでもなあ。こういう楽しい事を自分たちだけでやったらいかんぞ。」
土の突いたゴツゴツとした手で私の頭をぐりぐりしながら父ちゃんはそれぞれの関門を見て。
「おらたちもやっていいか?」
目を輝かせているのは父ちゃんや母ちゃん、畑やお家で働く大人たちだった。一仕事終えて、騒ぎを駆けつけたらしく、土や仕事の汚れついた服のまま、アスレチックの入口に集まっていた。
「うん、テストが終わったらみんなにも紹介するつもりだったよ。」
「ほんとか、作るのに夢中になって忘れてたんじゃない?」
ソンナコトないよー。ちゃんと明日には声をかけるつもりだったし。
で、それぞれの関門に挑戦した村の大人たちだったんだけど。
「おっ、あぶな、ここは沈むぞ。」
「なるほど、気を付ける。」
飛び石は沈む前に次に飛び移るという離れ業で一発クリアー。
「ほんとはこういう足場は歩いちゃだめだぞ。」
「岩場をあるくよりは簡単ねー。」
ローリングブリッジは散歩するようにクリアーし、ターザンロープと二の腕地獄は、ちょっと戸惑うだけであっさり突破してしまった。
「はっ?」
その快進撃に 呆然とする私やドワーフ達、
「まあ、俺らは毎日畑仕事や山歩きしてるからな。」
いや、絶対それだけじゃない。父ちゃんも母ちゃんも農業一筋って言ってなかった?というか大人世代の実力が普通にやばい。
「ああ、この感じ、懐かしいな。」
「そうそう、東の方の山肌にこんな道があったよなー。あんときは領主さまが先に上ってロープを垂らしてくれてたからよかったけど、あんときは死ぬかと思ったな―。」
「ああ、領主様達がいなかったらやばかったなー。」
そして最後の関門である「反り返るアレ。」も次々に超えていく。父ちゃんに至っては異世界使用の10メートルも軽々と・・・。
「すげえ、父ちゃんも母ちゃんもすげえ。」
「ははは、そうでもないぞ。」
「これでも領主夫妻だからね、いざというときのために鍛えてるのよ。これでも。」
びっくりなことに両親もなかなかの化け物だった。血筋とか才能?そういう違い?
「私も?」
「そうだね、もうちょっと畑仕事を手伝えば、ストラもできるようになるわよ。」
「まあ、女の子だから、おしとやかでもいいと思うけど。」
うーん、そこまではいいかな?
客観的にみて、私もそれなりに運動ができるとは思っている。逆上がりとかバク転とかも余裕よ。だからこそ、そんな私や一般人に無理ゲーと思えるアスレチックを用意したんだけど。
「よ、よっしゃーいけた。」
「おお、獣人の兄ちゃんが成し遂げたと、おれらもいくぞ。」
「「おおお。」」」
気づけばドワーフ達にも攻略者が。
「くっ、思った以上に攻略ペースが早い。」
なるほど、前世でテレビ番組を見ていた時は、どんどん難易度を上げていく番組の構成に首を傾げたものだが、今ならわかる。
攻略されると普通に悔しい。
初見殺しも含めて、ギリギリクリアさせない難易度で設計する、これは面白い。
結果として冬の間、私の魔改造と村人たちの攻略という熾烈な争いが起こったがこれ以上は語るまい。
「姐さん、次は、次はどうするんですか?」
まあリビオンの兄ちゃんが村にめっちゃ馴染んだので、ヨシとしておこう。
あのお城とか、忍者のあれって一度はチャレンジしたいですよねー。って話でした。
さて、日常編はこのくらいにして、次回は話が動きます。