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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ 10歳 仕込み編
4/110

3 人、それを運命とか奇跡とかいうけど、単なる食わず嫌いだから。

 前世チート爆発

 有無を言わさぬ私の気迫に、さすがの両親も青ざめて私を諫めようとするが、本気な私の行動力をとめられるものじゃない。

「こうなる気はしてた。釣りあがった目が親父にそっくりだ。」

「まあ、あとで謝りましょう。」

 祖父譲りの私の睨みは、両親には効果が抜群らしく、たいていのことは流される。

「す、ストラ嬢。急になにを。」

「ことは急を要するかもしれません。メイナ様、案内してください。」

 たじたじなストラーダ様をおざなりに、メイナ様に詰め寄って案内をさせる。

「は、はい、こちらです。」

「急ぎましょう。」 

 目を白黒させるメイナ様の手を引いてずかずかと部屋をでる。我に返った大人たちがあとを追ってくるが知ったことじゃない。

「お母さまの部屋は。」

「一番奥じゃないんですか?」

「は、はい。そうなんです。」

 うん、最悪だ。臭いものには蓋という発想はどこの世界でも共通だ。大まかな見当をつけた私はそのままずかずかと辺境伯家を歩き、やがて一番奥まった場所の部屋にあたりをつけた。

「め、メイナ様、こちらのかたは。」

「どきなさい。」

 とまどうメイドを押しのけて扉に入る。すると甘ったるいお香の香りとベールで被われたベットが見えた。

「やっぱり。」

 いらだつ気持ちを無視して、メイナ様をともなって部屋に入ると、ベールの向こうで誰かが身を起こす。

「だ、だれ?」

「お母さま。」 

「「待って。」」

 たまらず駆け出すメイナ様を私と声が止める。うん、やっぱりだ。

「失礼します。クレアさまですか?」

「は、はい。あなたは、もしかして、ハッサムの。」

「はい、ハッサム家の娘、ストラ・ハッサムと言います。」

 拙いカーテシーを決めるとベールの向こうの気配が和らいだ気がする。そんなことは気にせず、もらっていた濡れタオルを顔に巻いて、メイナ様を見る。

「メイナ様はここでお待ちください。すぐに呼びます。」

「は、はい。」

 うん、いい子だ。根はきっといい子に違いない。

「クレアさま、失礼します。」

「だ、だめよ。そんなことしたら。」

「予防はしています。」

 かりにうつる病気だとしてもマスクをして、近づかなければ問題はない。それに

「だ、だめ、みないで。」

 力ない抵抗をはねのけて布団をはいで、私は納得した。

 青ざめながらもむくんだ顔と腕。こちらから距離を取ろうとしながらも緩慢な動きは痺れからだろう。

「失礼します。」

 ベットに乗りあがって、手足の状態を確認。明らかな浮腫み。軽くたたいても鈍い反応。

「間違いない、脚気だ。」

 知識でしかしらないことだけど、ビタミン不足による心不全による足の浮腫みと痺れ、心臓機能の低下による健康被害。

「あとは、空気か。」

 とりあえずとベールをはぎ取る様に剥いて空気を少しでも循環できるようにする。

「や、やめて。メイナが。」

「ご安心を、この病は人にはうつりません。」

 慌てるクレアさまを放置して、部屋のドアを開ける。

「そこの貴女、この悪趣味なお香を捨ててきなさい、そっちの執事さんは、一番風通しのいい部屋を準備して、風通しはよくしても部屋は暖めて、お湯も用意してね。リガード様の命令よ。」

「「は、はい。」」

 何事かと部屋の様子をうかがっていたメイドと執事に指さしで指示をだす。こういう場面で大事なことは名指しで役割を与えることだ。緊急時、人はそうしないと動かない。

「そこのあなたは、こっちにきて、いくつか質問に答えなさい。」

「は、はい。」

 最後の1人、一番扉の近くにいたメイドを呼び、私は素早く質問をする。

「クレアさま、お通じは。」

「それは、あまり、最近は食も細くて、かゆばかりでして。」

「歩いたりとかは。」

「痺れがあるとかであまり。」

「なるほど、となると・・・。」

 わりと重症じゃん。と悲鳴を上げたくなるけれどまだ大丈夫だと思っておこう。

 脚気とは江戸時代の白米ブームによって流行したとされる病気だ。ビタミン不足で心臓や筋肉の働きが弱まり、しびれや浮腫みといった症状がでてひどくなると下半身が麻痺したり、他の病気と重病化して死に至る。というのは前世の知識だ。

「治療法は、点滴とマッサージ、あとは食事改善か。」

 予防が一番だが、前世で読んだ漫画では症状が進んでからでも食事療法で治っていた記憶がある。

「クレア―、きさま。一体なにを。」

「うっせ、黙ってろ。」

 そんなことを考えているとストラーダ様が部屋の惨状に声を荒げるが、そんなことでびびっていたら救えるものもの救えない。

「病人をこんな環境に閉じ込めやがって、臭いものには蓋ッてか、医者は何をやっている。」

 キレそうになるのは、医者のふがいなさだ。いやこの世界に医者という職業は存在しない、たいていのケガや病気を治す回復魔法なんて便利なものがあるからだ。

 だけど、回復魔法はもともと持つ治癒力を高めるだけなので、脚気みたいな栄養バランスの問題やもともと身体が弱い人には効果が薄い。

(まさか、じいちゃんが言っていたことが本当だったなんて。)

 病気への大まかな知識は前世の教師の経験から、そしてこういった世界の事情は私に色々教えてくれたじいちゃんの影響だ。

「す、ストラ様。母様にひどいことしないで。」

 あっやばいメイナ様へのフォローを忘れてた。

「ごめんなさい、不甲斐なさに高ぶってしまいました。あと安心してください。クレアさま、メイナ様のお母さまは元気になりますよ。」

 目線を合わせて謝罪し、安心させるために優しく笑いかける。

「元気になるの?」

「はい、任せてください。私は薬師の孫です。」

 田舎で過疎ってるハッサム村だけど、じいちゃんはすごい薬師だ。

 薬師とは薬草や生薬を調合して、健康を維持する職業。

 田舎者と馬鹿にされるのはいいけれど、健康をないがしろにする輩と薬師を馬鹿にするのは許さない。

「メイナ様、厨房へ案内してください。あと、リガード卿はクレアさまの移動を介助して。足がしびれていると痛いと思うから、抱き上げて素早くお願いします。」

「は、はい。」

「お、おう。」

 こうして、私によって辺境伯家は掌握されていく。

 かっとなってやったけど、反省はしていない。

 それに、まだまだやることがある。



 脚気は特に米食の日本で多かったらしいですね。

 まあ栄養不足や偏りによる健康障害は歴史的にも事例が多いとか?

 まだまだ続きます。

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