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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ 10歳 領地改革編
17/110

17 帰ってきたら、大変なことになっていた1 クマがでたー。

お家に帰ると仕事がいっぱい、

 クレア様の診断とメイナ様のお見合いの見守りに、ストラーダ様への食事指導と胃薬の処方。そういったなんやかんやで一週間を駆け抜けた私は、再び高速馬車でハッサム村に帰ってきた。爆速馬車は、帰りも寝落ちするほど快適だったよ。

 うん、領地が潤ったら道も整備しよう。鉄道もびっくりな快適な道を作ってもらおう。

 そんな中で私がしていたことと言えば、父ちゃんたちに渡す報告書と、じいちゃんに渡すクレア様の症状に対する所見である。

 私の目から見て、クレア様の容態は安定していた。だが10歳の小娘の診察で万が一があっても困るので薬師の師匠であるじいちゃんの意見も欲しかったのだ。

「脈拍、肌の色ともに正常。触診と問診による診断では健康そのものであった。念のため代謝を上げて血行を良くする薬を改めて処方。出血などのケガに注意することと、食事のバランスを指摘と。」

 何がすごいって、私の説明からじいちゃんが脚気を正しく理解したことだ。

「ビタミンってのはあれだろ、肉の脂とかにあるやつ。太るからってそぎ落として食べてたやつがよくなってたよ。食事ってのは大事だよなー。」

 お披露目会での話をした後で、じいちゃんは私の言葉に疑問を持たずに理解を示し、その上で治療をした責任を最後までとれと私に治療の記録を書くように指示をした。メンドクサイがこれも修業である。

「しかし、なんともまあ。」

 辺境伯家というこの世界でもトップクラスの金持ちの生活を体験しながら思ったことはこの世界の歪さである。魔法という便利すぎる力のおかげで、衛生環境は整えられているし、ケガや体調不良程度は治癒魔法でなんとかなってしまう。半面、食事の栄養バランスや医学的な知識は極端に低い。腹が膨れればいいと肉や炭水化物をドカ食いしたり、美しさのためと野菜とか白米をひたすら食べたりともうめちゃくちゃである。それでいて健康志向ということでことごとくが薄味。塩味を利かせた卵焼きや、ハチミツアメの甘さがもてはやされるわけである。

「瀉血とかもしてそう。」

 わざと血を流すというとんでもない治療法だが、なんとなく昔のヨーロッパ風のこの世界ならありえそうで怖い。いや、そもそもに私の知識ってやばいよねー。魔女裁判とか異端審問扱いされる案件じゃね?

「もしかすると、じいちゃんはそれを気づかせようとしてたのかもしれない。」

 メンドクサイ報告書とか所見を書きながら、改めて自分の異質さを感じていた。現状で世界は平和そのものだ、だが私の介入で死ぬ運命だったクレア様は生き残り、メイナ様が闇落ちする原因はなくなった。

 ガルーダ王子と遭遇したことや、適当にあることないこと吹き込んだことは、誰にもはなしていないけど、もしかしたら、どこかで影響がでるかもしれない。

「まあ、そんときは、そんときだよね。」

 馬車に乗る時間にこうして色々考えたけれども、それらについてはそういうものとして受け入れることに決めた。この世界があのゲームと同じ世界なのかも定かではないし、私の記憶も怪しい。何より知識は知識でしかない。実態にそぐわなければ修正するし、うまくいくならそこそこに設けさせてもらえばいい。

 目指すはそこそこに稼いだ村でのゆったりとした平穏な日々だ。そのためにはまだまだほしいものがある。現代日本って便利すぎなんだよねー。

「お嬢、いいところに帰ってきた。マジでやばい、クマだ。」

 帰るなり告げられた言葉に私はつくづくそう思った。どうにもならんてこんなファンタジー。

 

 馬車を降りるなり、担がれるように抱えられて運ばれた村の東側、養蜂事業の一環として、ハリエンジュの木が植えられた森の入口だった。そこにはクマ、ではなく殺気立ったハチたちがいた。

「ジジジ(セカ姉様。大丈夫ですか。)」

「ジジ(ハル、お帰り、大丈夫よ。対処は余裕。)」

「じーじーじー(女王よ、早く攻撃命令を。)」

 やべえ、めっちゃ物騒だよ。帰って寝たいのに。

「ケー兄ちゃん、説明。」

「お、おう。」

 ただならぬ気配に顔を引き締めて説明を受ける。


 最初に見つけたのは森を探検していたケー兄ちゃんたちとハチたち。明らかにおかしい足跡やフンといった痕跡を見つけ、即座に引き返して警戒態勢をとった。その後、勇敢なるハチたちの偵察により、ハリエンジュの木々に置かれたハチの巣に近づく一匹のクマが発見された。

「ジジ(戦争よ、根絶やしよ。)」

「じーじー(やったるでー。)」

 よりにもよって一番血の気の多いセカちゃんの巣にだ。間に合ってよかった。

「はいはい、落ち着いくださいねー、セカちゃん。」

「ジジ(賢い子、なめられたら終わりよ。)」

「わかってるって。」

 まるで入れ墨の入った人達のような言い方だけど、これもこの世界特有の知能の高さゆえだ。

 豊富な植生ゆえに、クマもハチも力強く賢い。ゆえにお互いの縄張りを侵すことはなく、クマも本来ならば餌の豊富な山から下りてくることはない。

「やっぱりまずかったかなー。」

 ケイ兄ちゃんを盾にして森の中を進みながら私はそんなことを思う。

 養蜂箱と村人の協力のおかげでハチたちはハッサム村を中心に着実に縄張りを広げていた。それがいつの日かほかの生き物の縄張りと接触してしまうのではないか、そんな考えが頭の隅にあったりなかったりもしたのだけれど。

「ジジジ(それはないよ。)」

「ジジジ(村の近くはもともと私たちの縄張り。)」

 ハルちゃんたちはそう言ってくれているけれど、不用意な干渉によって野生動物が里に下りてくるなんてことは前世でもあった。餌や温かい場所を求めてクマが人里に降りてくるなんてニュースもめずらしくなかった。いや、ニュースになる時点で大騒ぎか。

「てかさ、勢いでついてきたけど、どうするんだ、お嬢。」

「うーん、どうしよう。」

 イヤーノープランとかじゃないよ。

「ジジジ(任せて、クマの相手は得意。)」

「ジジジ(先方はお任せあれ。)」

 ハチさんたちがやる気だから、最悪暴力で解決できる。ただ今回の一件が自然発生したものなのか、養蜂事業結果なのか、あるいは何か別の事情が絡んだものなのか判断する必要がある。原因が分からなければ対策は立てられない。

 あと、純粋にクマを見てみたいという好奇心。ははは10歳の女の子を騒動に巻き込んだお前たちが悪い。生のクマなんて、前世の動物園でも見たことないぞ。

 とそんなことを思っていたことを即座に反省します。やばいはアレ。

「ガチめなクマだった。」

 村から30分もかからない場所に居座っていたクマは、ガチめなクマだった。薄汚れた黄色の毛皮に私ほどのサイズの手足に鋭い爪。私の頭くらいなら丸のみにしそうな大きな口。人食いなタイプなクマさんだよあれ。

「やべえ、ケイ兄ちゃん、ガチなクマだよ。ガチクマ、マジクマだよ。」

「落ち着けお嬢、クマはクマだ。」

 ちょっと舐めてました。

 もしかしたら、貝殻のイヤリングを拾ってくれたりダンスしたりするタイプのクマかもとか、ハチミツよかママレードが好きなぬいぐるみみたいなタイプのクマかと思ったんだけど。あれは猟友会とかが出勤するレベルのガチやばいやつだよ。人の味を知って闇落ちしたタイプのクマだよ。

「やべえ、どうしよう。」

 このままではファンタジーではなく、お宝を争奪する過酷はHK道になってしまう。






 

 

ストラ「〇エイカーの森じゃないんだから。」

ハル「ジジジ(それ以上はいけない。)」


 ハリエンジュといえば、アカシア、ニセアカシアと言われるハチミツの木として有名

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