162 薬師、やることがない。
ラジーバ旅行もそろそろ終わりです。
なんか、ものすごい勢いでラジーバの政変が起きました。
まず、マクベス王が退位し、メイナス王子が正式に国王に就任しました。そして、その隣にはロザートさんがさらっと王妃に収まっていました。。
うん、落ち着こう、私も驚いているから改めて話をさせて欲しい。
次期王の最有力候補だったのは、マルクスとその兄メイナス王子の2人。実力も才能もメイナス王子が勝っていると言われていたけど、マルクスは獣人でも貴重な銀の毛を持つ才人、将来的にはどちらが王になってもおかしくはないと言われていた。
どちらが王にふさわしいか、それはラジーバの人達にとって気になる話題ではあった。
が、マルクスが正式に王位継承権を放棄して、メイナス王子を推したことでメイナス王子が王太子として任命された。
そのまま王位を譲られば、メイナス王の誕生、そんな簡単な話ではない。
独身である王子達は、王になれない。世継ぎとかそう言う問題があるから、メイナス王子はは自分の実力を示しつつも、周囲を納得させる伴侶を探す必要があった。ゆえに王太子という地位が存在し、これからラジーバの有力者たちとの縁談攻勢がはじまるはずだった。はずだったのだが。
「ストラ様、私、プロポーズされてしまいました。」
何があったか、くわしく聞くのが怖い。
いや、真っ先に私に報告してくれたのは、なぜ?
いや嬉しいし、めでたいことだけど。ジレンさんと一緒にお茶してたら、糠漬けのツボとメイナス王子引きずって現れたときは、マジでビビった。
王太子就任翌日に、電撃結婚。ラジーバの歴史でも最速のスピード婚だったらしいです。
次に行われたのは、マクベス王の勇退とアクアラーズへの移住の準備だ。メイナス王子が結婚してからと言われてたが、スピード結婚のおかげで前倒しになり、急ピッチで引き継ぎが行われている。来月にはアクアラーズにある王家の別荘に引っ越しをし、港の開発の陣頭指揮をマクベス様がとられるそうだ。それに伴い王城の人員も結構な数、連れていかれる。世代交代の人員入れ替えという意味もあるけれど、マクベス様が連れていく人たちの名簿をみてマルクス達の表情が凍り付いてた。
同時に、メイナス王就任を理由に、各地へ出稼ぎやら留学で出向いている獣人たちにも帰国指示が発布された。新たなる王の誕生を祝う祭りという名目だが、真の目的は各国へ貸し出してた戦力を一時的に集めて国内の戦力を再配置するためだ。一番やんちゃしそうな帝国が大人しくしているうちに、各地の情勢を話し合い、他国への派遣も今後は縮小していく予定だとか。
もはや、これって遷都じゃない?と思うレベルに人も物資も動いている。諸外国へのアピールと牽制の意味も兼ねているとはいえ、思い切ったことをしたものだ。
「ラジーバは大きく変わるだろう。感謝するぞストラ嬢。」
退任の式典では、マクベス元王にそう御礼を言われた。
もうなんか、ややこしいな。どっちも様づけでいいですか?
そんなこんなでバタバタしているラジーバだが、私のやれることは意外と残っていない。
緑化事業についてはラグナードのサラさん達に託してあるし、コンクリートの製法についてはアクアラーズの職人さん達の方が詳しい。そうでなくても精霊王の恩恵で豊かになっていくから、ぶっちゃけいらないよね、私って。
あえて言うなら、マクベス様の診察だけど、トリミンググッズや技術も、きっかけを与えたら勝手に発展していたよ。
いや、そもそもだ。私は万能薬を作る過程で作りすぎた精霊エキスの処理と観光が目的でラジーバを訪れていただけだ。王国側のドタバタもいい加減収まっているだろうから、さっさと帰るべきだった。だというのに寄り道したら精霊王を治療できてしまい、事態がここまで大きくなってしまったのだ。
「うん、帰ろう。今度こそ。」
「じじじ(そだね。そろそろ緑が恋しい)」
これ以上、居座ってもろくなことにならない。ラジーバのことはラジーバの人達に任せるほうがいい。その判断が遅すぎることは充分に自覚しつつ、私は今度こそ王国へ帰ることにした。
「任せろ、ストラ、物資の準備は出来ているから、いつでもいけるぞ。」
「ありがとう、マルクス。」
それを相談したらマルクスも準備万端でした。
ストラ 「さあ、帰ろう。」
マルクス「そうだな、学園が恋しい。」
ハルちゃん「じじじ(ハチミツのストックが怪しい。)」
ナチュラルに王国までついてこようとしているマルクスだけど、ストラも気にしなくなってます。




