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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ13歳 ラジーバ 留学編

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115 旅の準備はやりすぎぐらいがちょうどいい 1

 ラジーバってどんな国?

  さて、ラジーバと言えば、砂漠の国、そして獣人の国である。

 そもそも砂漠とは、極度の乾燥によって、植物が育たず生物が人が生活するのが困難な場所だ。アラビアンな雰囲気のような砂砂漠を連想する人が多いと思うが、それは全体の20%。岩だらけだったり、石だったりと意外とバリエーションがある。ちなみに乾燥具合定義にした場合、温暖で多湿な日本の鳥取砂丘は、砂漠ではなく巨大は砂浜となる。その証拠というわけではないけど、1970年に行われた防風林の植樹をきっかけに、鳥取砂丘は年々縮小しているらしい。現在では、天然記念物維持のために除草作業が行われているとかいないとか。

 この世界の砂漠も、前世の砂漠と似たようなものだ。いくつかの岩山が並ぶアメリカのモニュメントバレーみたいな場所もあれば、地平線の向こうまで砂しか見えないサハラ砂漠のような場所もある。あとは、オアシスとアラビアンな街も。

 王国内に幾つかある風景画を見ては、その素敵な光景に想像を膨らまませるぐらい、私はラジーバに興味があった。前世では海外旅行をする余裕なんてなかったかしね・・・。

 学生である間に絶対行ってやるんだと、私は決めていた。

 海外旅行はね、勢いで行かないと行けないんだよ。いつかではなく、こうなったら行こうと条件を決めることが大事。貯金がいくら溜まったらとか、今年の休みは○○へみたいに決めておかないと、気づいたら休みが終わって、貯金だけが残るんだ。社会人はね、時間とお金は反比例するんだよ。


 しかし、砂漠の過酷な環境と獣人たちのプライドやら文化の違いもあり、王国の人間が訪れるにはハードルが高い国でもある。友好国であるが、それは国の外での話、獣人たちにとって砂漠は家その者であり、同族は家族である。自分の家や敷地に誰彼問わず招くいかない。というのがラジーバの風土らしい。


 だけど、幸いないことに私にはそれなりの伝手がある。いやかなり大きな伝手だ。


「ストラ嬢、こここ、この度はわわわ、我の。」

「ああ、そこはマルクス様ではなく、リビオンの招待ということでお願いします。」

「しょぼーん。」

 王城から事前に通知が来ていたのだろうか、打ち合わせのためにソフィアちゃんのゲストハウスを訪ねたら、めっちゃ緊張してプルプルしているワンコに出迎えられました。

 マルクス・ルーサー。チョコレートのような褐色の肌にモフモフした手足、とんがった御耳と左右に三本ずつ生えたお鬚が特徴の獣人国の王子様。銀色の輝く体毛ととんがった御耳は、希少なオオカミの獣人にして、獣人族の王族の証だ。

 彼はリットン君と妹の仲を取り持とうとして、私にちょっかいをかける困ったちゃんだが、妹のために私達に何度も立ち向かってくるガッツと、いざという時は、率先して動ける理性も持っている。

「今回は急な話にも関わらず、私の入国に関わるアレコレをしてくれて、感謝します。」

「それは気にしないでくれ、先の一件も含めて、俺が国元へ報告に戻るのは予定していたことだ。同行者が1人増える程度、全く問題はない。」

 私の礼に対して、マルクス王子は気持ちを取り戻したのか、爽やかな笑みを浮かべてそう答えた。喜怒哀楽の変化がすごいというべきか、立ち直りが早いというべきか迷うところではあるな。こうやって自信満々な顔をしている分にはイケメン王子なんだが、色々と忙しない子だわ。

「むしろ、薬師殿のお孫様をお招きできるとなれば、父も喜ぶだろう。彼の薬はラジーバでも重宝されている。」

 そんなことを言っているが、私の周囲が騒がしいことに同情して、自分の帰国に同行してラジーバを観光しないかと誘ってくれたのはマルクス王子だ。なんだかんだ疫病対策のときは、その立場を生かしていい感じにパシリになってくれたりもした。妹の件では暴走しているがなんだかんだ、人が良すぎて心配になるぞ王子。

「いや、そこはストラ嬢の魅力と実力を評価してなのだが。」

「あはは、お世辞が上手ですね。」

 さすが王子、スゴイぞ王子、便利だぞ王子。魔法技術とか薬学的な技術交流は引き受けるので損をさせるつもりはない。

 そんな風に、いろんな思惑が絡んでいるけれど、王子直々にラジーバへの招待を受けているんだ。今回のラジーバ訪問については、誰にも文句は言わせないぞ。 


 と思っていたら、扉が乱暴に開けられ飛び込んできた女の子が私に抱き着いてきた。

「お義姉様!」

「おお、よしよし。」

 半歩下がって勢いを受け止めつつ、乱暴に頭をなでてあげると、ニコニコと満面の笑みを浮かべる彼女はソフィアちゃん、マルクス王子の妹である。

「お義姉様。事情はどうあれ、私達の国にお招きできること、心底嬉しいです。」

「そういうわけじゃないよ。前にも話してけど、ラジーバには一度行って見たかったし。」

 彼女が私のことをお義姉様と慕うのは、女性としての尊敬とリットン君との関係を意識したものだ。入学試験でリットン君の実技を見て一目惚れした彼女は、アレコレとアプローチを画策していたが、それを知ったマルクス王子が大暴走、私に決闘を申し込むというとんでもないフライングをしてしまった。そんな兄の醜態を謝罪しにきた、マルクス王子の暴走という共通の話題があった私達はすぐに意気投合し仲良くなった。正直、めっちゃいい子なんだよね、彼女。そのまま、リットン君ともいい感じの仲にはなっているが、ソフィアちゃんは王女様で、リットン君は元庶民、将来の進路なども含めて、ゆっくりと仲を深めているのを、微笑ましく見守っている私です。

 そんな、フィアちゃんとリットン君はお留守番だ。事情がある私はともかく、1年生である彼女たちが長期的に学園を離れるのは色々と問題があるとのことだ。本人たちもまだまだ勉強したいとのことだ。

 これを機に存分に絆を深めるてほしい。

「ところで、お義姉様、。兄が同行してのラジーバ訪問となると、そのー。」

「そんな色気のある関係に見える。」

「見えないですわ。」

 だよね、釣り合わないし、色気ないもん私。


ストラ 「旅行の準備は楽しいなー。」

マルクス「急だったけど、招待に応じてくれたのでよし。」

ハルちゃん「じじじ(砂漠といっても、ハチはいるらしいです。)」

 中途半端になってしまいましたが、次回も準備編。今度は引き止めたい人達とのお話?


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