第1話 シロとクロの少女との出会い
『闇に囚われしモノを救いだせ!』
そんな他愛のないキャッチコピーだが、好きな絵師様がイラストを手掛けているという事で、ついつい手を伸ばしてしまった。
早速、買ってきたゲームのパッケージを、友人二人に見せる。
「このキャラデザがいいんだよ!!」
そう言って見せたのは、白と黒の対になった和風衣装の美少女の二人組のイラスト。
「また、その人の?」
「まぁまぁ、いつもの事ですね」
「熱く語るのは、いいけど…」
「流石に、この前みたくはね」
語ろうとする前に、釘を刺されてしまった。
「あの時は、つい語りすぎちゃって…」
冷ややかな目を向けてくる二人。
「1日の予定が全部だめになったし…」
「話を、止める手段があればよかったんですけどね」
これ以上は、やぶ蛇の様だし、早めに家に帰るようにしよう。
「あっ、そうだ。これがシェアプレイのコード。渡しとく」
ホストがインストールしてあるゲームなら、ゲストとして他の人にも分けて遊べるようしてある。一部の機能に制限が掛かるけど、一緒に遊ぶのには問題は無いし、シェアプレイを通しての本作品を買わせる狙いもあるようだ。
「それじゃ、夜に」
ここで、二人に別れを告げて家に向かう。
二人は目を合わせて、どうするのと問われれば、誘われてしまったので一緒に遊ぶしか、なくなってしまった。
「まあ、無料だし…」
「そうですね」
◆夜
ゲームのインストールは、終わったので後は二人を待つ。
「早く遊びたい!!」
そんな事を考えながら、待つことにしていたら、着信音が鳴り、メールを開く。
『課題は終わったの?』
おっと、母親からの定期的に送られて来るメールだったが、見なかった事にしよう。
再び、着信音が鳴る。
『今から、遊べるよ』
『準備に手間取りまして、遅くなりました』
ようやくゲームを始められる楽しみで、興奮が収まらなくなってきた。
ずっと流れっぱなしのオープニング画面から、先に進める期待感を胸に秘めながらゲームを開始する。
[invitation(招待状)]
「invi…tation?まぁ、いいや。始めちゃうか」
気にせずに、先に進めると、急に光に包まれてしまう。
「まさか、異世界転移って、冗談じゃ…」
思い浮かべるのは、異世界転移の小説の始まりにある光景だったが、これは違うと思いたかった。
◇???
先程までの光はようやく収まると、目の前にはゲームのパッケージに描かれていた二人組と、奥に見えるのは、かなりの数の本が並んでる棚。
「あの…」
「エン・デルフィアにようこそ」
白い和風衣装の少女が言う。
「…お姉ちゃん、名前を名乗るの忘れてる。あたしは、クロ」
教えてくれる黒い和風衣装の少女は、どうやらクロと名乗った。
「あっ、そっかそっか。ボクは、シロよろしくね」
混乱している私に対して伝えてくる白い和装衣装の少女は、シロと名乗った。
「異世界転移じゃないよ、ボク達の能力じゃ招待する位しか出来ないから」
「…肝心な事、強制ではない。帰ることも可能」
「まっ、同意しちゃったら、同じだけどね」
そう言って笑うシロ。
「…同意するなら、手をかざして」
いつの間にか、白い本を持っているクロ。
どうしようかと悩んでいた。
「ああ、帰るなら、そのまま何もせずに後ろの扉から出ればいいよ」
そうシロが言って、後ろを示してくれている。
すると、再び地面から光が溢れだし、やがて収まると見慣れた二人の姿だが、じゃっかん違う。
一人は、頭にネコミミ?を生やしているし、もう一人は……
「重い…」
つい、普段とは大きさが更に違ったので手を伸ばしてしまった。
「ほんとだ」
隣にいた友人も、いつの間にか手を伸ばしていた。
返ってくる冷たい視線と一言。
「いつまで、そうしてるつもりなのかな」
これ以上は、危険だと判断して手を引っ込める。
「お楽しむなら、ここじゃないよ」
「…重いね」
呆れた視線を送るシロと、いつの間にか後ろに回って持ち上げているクロ、そして自身の胸を見てタメ息をついてしまっていた。
「二人とも、どうして…」
言い切る前に二人からの返事が来る。
「あなたの事だから、こういう場合なら悩むでしょ」
「私達を巻き込んじゃうないかってね」
図星を言われてしまった。引き返せるなら、引き返したかったけども…
「退路を断てば、一緒に進むしかない」
「滅多にない、チャンスですからね」
どうやら、先に進むしかないようだ。
白い本に手をかざす。
「…名前」
「一之瀬…」
本名を言おうとしたけど、やっぱり止めた。
「リィズ。リリィディス」
そう伝えると、白い本にはリリィディスと名前が光って書かれていく。