第6話 幼馴染の好感度をカンストさせる方法
訓練を開始して数週間後、ゆあちゃんは女の子ながら、頑張ってついてきてくれていた。朝はランニングして、一緒に小学校に行って、授業が終わったらすぐに帰ってきて訓練場にこもる、そんな生活を続けている。
「はぁ〜、つかれた……」
アトムとの戦闘訓練を終えたゆあちゃんがペタンと床に座り込む。
「お疲れ、はい水」
「ん、ありがと」
ペットボトルを渡すと、こくこくと喉を鳴らす。蓋を閉じてから、こちらに向き直った。
「ねー、りっくん」
「なぁに?」
「りっくんのスキルって、あれからなにか変化あった?」
「変化?いや特に……ん?」
言われて、クラス替えスキルで自分のステータスを確認したところ、オレの統率力が変化していることに気づく。
「あれ?」
「どうかしたの?」
「あー、これなんだけどさ」
ゆあちゃんにモニターを見せながら説明する。
「この前まではここの統率力って、93だったんだよね。なのに今は95なんだ」
「へー?統率力ってどうやってあがるんだっけ?」
「クラスに加入してる人の好感度だったかな」
「ふーん?……え?」
「つまり、ゆあちゃんの好感度が……」
「ちょっと!!」
ゆあちゃんがオレの腕を掴んできたが、すでに的場柚愛の座席をタップした後であった。
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氏名:的場柚愛
年齢:12歳
性別:女
役職:なし
所有スキル:なし
攻撃力:6(E)
防御力:4(E-)
持久力:7(E)
素早さ:12(E+)
見切り:7(E)
魔力:0(E-)
精神力:31(C-)
学級委員への好感度:95/100
総合評価:E+
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トレーニングによって、少しずつ数値は上昇しているが、今はそれは関係ない。オレの統率力に影響する数値は好感度だ。
二週間くらい前は、たしか好感度は93だったはず。特に、ゆあちゃんが喜ぶようなことをした覚えがないのだが、なぜか95に上昇していた。
「……」
ゆあちゃんは黙ってしまい、下を向いている。
「なんで上がってるの?」
「そんなの聞かないでよ!ノンデリ!」
ただ質問しただけなのに怒られてしまった。それに、なぜか顔が赤い。
「まぁ、いいや。オレのステータスが上がってるのはいいことだし。でもなー、統率力って10ポイントおきにしかボーナスがないんだよな……」
「まぁいいやって……気づかれなくて安心はしたけど……なんか複雑……」
「なんて?」
声が小さくてよく聞き取れなかった。
「もういいわよ……で?なんだっけ?ボーナス?」
「そうそう。この統率力って数値なんだけど、10ポイント上がるごとに1ポイントボーナスがついて、オレのステータスに割り振れるようになるんだよね」
「へぇ?じゃあ、例えば、ゆあの好感度が……その……100になったりしたら、りっくんは嬉しい?」
「ん?そりゃあ、嬉しいよ?あたりまえじゃん?」
隣を見ると、ゆあちゃんがなんかもじもじしていた。
「へ、へぇ〜?じゃあ、100にしてみる?」
「どうやって?」
「……とりあえず、手、繋いでみよ?」
「……はい?」
座りながら、右手を差し出されてしまった。ゆあちゃんはこっちを向いていない。
「どゆこと?」
「いいから!手繋いだら好感度上がるかもしれないでしょ!」
「そうなの?」
「そうなの!」
「はぁ?それなら、まぁ……」
オレはよくわからずに、ゆあちゃんの手を握った。小さい手だ。それに柔らかいし、あったかい。久しぶりに握る幼馴染の手は、オレが知っているものとは少し違っているような気がした。
「な、なんか恥ずかしいんだけど、もう離していい?」
「だめ……ばかりっくん……えっち……」
「えっち!?なんでだよ!?」
変なことを言われて手を離そうとする。
「あ!離しちゃだめだって!」
オレが手を引っ込めたのに、ゆあちゃんが握りしめるもんだから、こちらに倒れ込んできた。オレの腕の中にゆあちゃんがもたれかかる。顔もすぐそばまで近付いていた。
「りっくん……」
「……」
なぜ名前を呼ぶ?なんか……ドキドキする……
「……あ!あー!これで好感度上がったかな!?」
「あ!」
オレはゆあちゃんの肩を押して、元の位置に戻す。手を離してクラス替えの画面を確認した。
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氏名:的場柚愛
・
・
学級委員への好感度96/100
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95から96に上昇していた。
「……」
「……なんで?」
「……」
「……ゆあちゃん?」
「自分で考えてよ!なんでもゆあに聞かないで!バカりっくん!」
「なんでもなんて聞いてないだろ!」
「うるさい!これから毎日手繋いでよ!そしたら100になるかもでしょ!ばーか!」
「あ!おい!」
謎の捨て台詞を残して、ゆあちゃんが訓練場を出ていった。戦闘服を着たままで。
「……まだ、訓練終わってないっての……」
オレはポリポリ頬をかいてから、自分の訓練を再開することにした。
なんなんだよ。最近のゆあちゃんの態度……調子狂うな……
♢
翌日から、訓練が終わるとゆあちゃんが手を繋ぐことを要求してくるようになった。
オレは渋々それに付き合ったが1週間もすると好感度が98/100になりカンストまでもう少しというところまでくる。
そして、98になってから、さらに1週間が立ち、数値に変化がないことにオレたちは気づいた。
訓練が終わったあと、一応手を繋ぎながら、体操座りしてモニターを眺める。
「ねぇ……」
「なんだよ……」
「手だけじゃもう上がんないと思う……」
「そっか……」
「だから……今日からはハグにして……」
「ハグ?ハグってなんだっけ?」
「抱きしめるってこと!バカりっくん!」
「……なんかヤダ……」
「なんで!ひどい!もう訓練やめる!クラスからも抜けるから!」
「え!?いやいや!待って!ごめん!ハグ!ハグするから!ほら!」
「あっ!?」
オレは、クラスを抜けるなんて言われて、焦りに焦ってゆあちゃんを抱きしめた。小さい女の子だ。あったかい。……なんか胸にやらかいものが……やめろ!考えるな!
「……あったかいね。りっくん……」
「……もういい?」
「まだ……もうちょっと……」
「わ、わかった……」
しばらく抱きしめていると、「うん……もう大丈夫……また明日ね……」と赤い顔をしたゆあちゃんが訓練場から出ていった。
オレは、ボーっとした頭で、クラス替えスキルを操作し、ゆあちゃんのステータスを確認した。
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氏名:的場柚愛
・
・
学級委員への好感度99/100
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「上がってる……」
上がってなければ明日からはハグなんてしない、そう言おうと思ったのに退路を防がれてしまった。
……明日が憂鬱だ……いや、ドキドキだ……
「面白かった!」
「ヒロイン可愛い!」
「今後どうなるのっ……!」
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