第49話 薙刀の神器
栞先輩がクラスメイトになったその日、放課後になって、高校の訓練場で準備運動をしていたら、師匠が薙刀を持って現れた。
「ほらよ、嬢ちゃん」
重そうな薙刀を片手で持って、栞先輩に渡す。
「これが……」
「ああ、神器だ」
「それが神器なんですね」
ワクワクする単語が聞こえてきたのでそっと近づく。
栞先輩が握りしめていたのは、かなり大きい薙刀で、三国志の武将が振り回すようなものだった。装飾もそれっぽくて、刃と柄の接続部分には、龍のモチーフが飾られている。緑色の龍の目には黄色い宝石のようなものがハマっていて、龍の口から刃が出ているようなデザインだ。柄は薄い紅色で、かなり長く、全体的に重そうに見える。女性が振り回すには大変そうだ。
「栞先輩、使いこなせそうですか?」
「どうでしょうか。少し振ってみます」
栞先輩が、数歩前に出て両手で構える。腰を低く落として、前に突く。そして上段に振り上げ、流れるように下段に振り下ろす。最後にブンブンと頭上で回転させて見せてくれた。すごい風圧だ。
「おお〜、パチパチパチパチ」
「お粗末さまです」
「いやいや!なんすかその謙遜!めっちゃ使いこなしてるじゃないですか!」
「そうですか?ありがとうございます」
「ま、嬢ちゃんは刀より薙刀の方が才能あるしな」
「荻堂さん?」
栞先輩がムッとした顔で師匠のことを睨む。
「おっと、悪い悪い、これは禁句だったな」
「栞先輩?どうかしたんですか?」
「あ、いえ……お恥ずかしいところを……あのですね、鳴神流は刀が主流、薙刀は祖母が別流派を学んで伝えていたんです」
「ふむふむ」
「それで、私も小さい頃から薙刀に触れていたのですが、やっぱり、私としては父の鳴神流を継ぎたくって……」
「なるほどぉ〜。複雑な気持ちなんですね」
「ええ……」
「じゃあ、その神器、せっかく師匠から借りましたけど、返しますか?」
「……いえ、荻堂さんもおっしゃっるように、今の私では、この神器を使った方が戦力になるでしょう。謹んでお借りしようと思います」
「そうですか。なんか……オレたちのためにありがとうございます」
「いえいえ。私も父を助けるために必死なだけですよ。ふふ」
栞先輩が笑ってくれたのでオレも微笑み返す。
「話はまとまったな。嬢ちゃんが冷静な判断ができるやつで良かった。だが、薙刀の扱いはブランクがあるな?」
「はい。しばらく握っていません」
「じゃ、今日からはそいつだけを握れ」
「わかりました」
こうして、神器を装備した栞先輩を含めオレたちは訓練を開始する。
栞先輩の薙刀捌きはそれは見事で、師匠が才能があるというのも頷ける動きだった。
試しに手合わせしてもらったのだが、刀と比べてリーチが長いので苦戦を強いられた。双剣を投げまくっても、薙刀をブンブンと回転させて弾き返されるし、攻めるにも懐に入りずらい武器だ。
それに、神器には特有の性能がある。神器というのは、モンスターをどれだけ斬っても刃こぼれ一つしないらしい。それに、見た目はめちゃくちゃ重そうに見えて、かなり軽かった。なんならオレの双剣よりも軽い。神器を装備した栞先輩は各段に強くなっていた。
「すごい武器ですよね」
「ああ、だがよ、俺は、これを握ってたやつを知ってるからな。本来の力も知ってるんだ」
「本来の力?」
「ああ、コイツにはもっととんでもない力がある。だが、どれだけ振るっても、俺にはその力を引き出せなかった」
「ほほう?それは一体どういう?」
「まぁ、また今度話してやるよ。ところで、なーなーで修行つけることになっちまったが、おまえら、ちょっと良いか?」
師匠がみんなを呼ぶので、全員で師匠の前に集合する。
「面白かった!」
「ヒロイン可愛い!」
「今後どうなるのっ……!」
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