side story:田所 春香①
episode:0に登場した春香ちゃんです!
大学入試の日、私は受験票を忘れ大学の門の前で絶望していた。
「終わった…浪人する…どうしよう…。なんでなん…。」
「はぁ…終わった…お母さんにどう説明しよう…。あぁ…人生終了した…。」
そう言って誰かが私の隣で絶望していた。
「あのぉ…どうかしましたか…?」
今にも泣き出しそうな顔をしていたので心配になり声をかけてみた。
「うぅ…受験票を…受験票を…!」
「忘れたんですか?」
「あ”あ”あ”あ”あ”…!」
「あぁ…忘れたんですね…。」
どうやらその子は受験票を忘れてしまいパニックになっていたそうだ。私も一緒に泣きたかったがそんな時間はない。試験はあと一時間で始まる。私はその子を連れてとりあえず受験会場へ向かった。そして色々ありなんとか受験することが出来た。
「ふぅ〜…あの子どうなったんやろ…。」
「あの…先程はどうもありがとうございました!」
「あぁ!受験票の子…。」
「あ…その覚え方やめてください…黒歴史なんで…。(泣)」
「はははっ!うち春香…田所春香。よろしくね。」
「ふふっ…西野鈴花です。よろしくお願いします!」
「あ〜タメ口で話そやぁ。同い年やしな!」
「分かった!お互い合格できるとええねぇ〜…。」
「せやなぁ〜でもそんな事考えてもソワソワするだけやから忘れよう!」
「いや…だめ…ではないか。」
「まっ!受験も終わったことだし…今から暇?」
「え…?まぁ…あとは家に帰るだけやけど…。」
「よし!んじゃぁ…帰る前にスイーツでも食べない?」
「え…なに…(笑)んじゃぁ奢ってくれる?」
「いやいや逆逆!鈴花が奢る方だから!」
「「はははっ!!(笑)」」
これが私と鈴花の出会いだった。数日後に合格発表でお互い合格だったことが分かり、それからずっと一緒に行動をともにするようになった。
「ねぇ鈴花…時々思うんだぁ。うちらおばあちゃんになっても絶対に馬鹿してると思うわ。(笑)。」
「それ私も思った!(笑)成長してもいつまでも心は子どもなんじゃない?」
ずっと一緒にいれると思ってた。でもそうじゃなかったみたい…。
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お通夜には鈴花から聞いていた高校の時の友達や大学で仲の良かった友達…親族の方たちが参列していた。ぼーっと遺影を見つめる人もいれば泣きながら思い出を語る人…特に鈴花のご両親は絶望していた。大切に育ててきた娘に先立たれたのだ…無理もない。しばらくして鈴花のお母さんが私のところへ来て言った。
「春香ちゃん…貴方は無事なのね?ちゃんと鈴花に守ってもらったの?これで傷がついてたら鈴花の犠牲が無駄やからね…。」
「大丈夫です…。だけど………本当に申し訳ありませんでした。私が転ばなければ…私が刺されていれば今頃…鈴花は…っ…。」
「やめてっ…もう…。きっと鈴花は貴方を守れて嬉しいはずや…天国でにっこり笑ってると思う…。だから…あの子の分まで生きて…必死に生きるの…。大丈夫…泣かないで…っ…もう大丈夫や。」
「クッ…うぅ…っ…あ”あ”あ”あ”…。」
私は鈴花のお母さんに抱きしめられて子どもみたいに泣きじゃくった。それにつられて泣いていなかった人も泣き出した。皆、鈴花の死を悲しんだ。鈴花とは2年ちょいの付き合いやけど誰よりも仲が良かった。
(立ち直るのに何年かかるかな…。そもそも立ち直れるかな…。)