side story:シャルル・ノーヴァス②
ふわふわな焦げ茶色の髪の毛にまるでキャラメルのような瞳…顔は丸く全体的にぷっくりしていている。動きやすそうなドレスを着ていて腰には短剣があった。護身用のためだろう。いかにも貴族のお嬢様だ。転移魔法で少女の前に行くとすごく驚いたような顔をしていた。
「ねぇ…君はなんでこんなところにいるのぉ?ここは森の中だしぃ〜魔獣もいっぱいいるんだよぉ?見るからに貴族のお嬢様だよねぇ?ここで何してるのぉ?」
話しかけてもこっちを見るだけで何も話さない。
「聞いてるぅ?ねぇ…お〜い………………チッ。」
あまりにも話さないからつい苛ついてしまった。
(はぁ…殺すか…。)
「す…。」
「ん〜?聞こえなぁい…。もう一回言ってぇ。」
「す…す…好きです!!!!!!」
「……………。」
「……………。」
聞き間違いだろうか。少女は僕に向かって告白をしてきた。
「今ぁ〜僕のことぉ好きって言ったよねぇ?」
「あ…いや…今のは...違くて…。」
「僕ぅ嘘つかれるのが一番苛つくんだよねぇ〜。」
「好きって言いました。」
「うんうん素直ぉ〜。」
そしてその子の頭を撫でると顔がタコみたいに赤くなった。
「でもさぁ〜なんで僕のこと好きなのぉ?僕ら会ったこと無いしぃ〜今会ったばっかりだよねぇ?」
「そ…それは…。」
そう聞くと少女はすこし焦りだした。悪意は無さそうだがいかにも怪しい。少しオロオロした後僕の方をキラキラした目で見た。そしてこう言った。
「そう…あなたを好きになった理由は…その見た目です…。」
「え…?」
「白色の髪の毛は月明かりの下で見れば銀色に光り輝く宝石!そう…まさにダイヤ!そしてそこに血が付けばダイヤにルビーが乗っている状態…正直言って良い!めっちゃ良い!そして次にその目!エメラルドのような色を持つその目は太陽の下で見たらさぞ綺麗なのでしょう!少し猫目でツンとしてるから猫みたいで可愛い!それにその体型!スラッとした手足…まさに芸術!圧倒的なる美!!!永遠に見ていたいです…!」
「……………………………。」
少女は喋りだしたと思えばズラズラと僕の好きなところを言いだした。
「そんなに僕のこと好きなのぉ?」
「世界で一番好きです!」
「そっかぁ〜。僕のこと永遠に見てたいぃ?」
「もちろんです!」
「………………………………。」
可愛い。単純にそう思った。こんなにも僕を思ってくれる人は初めてだから。もしかしたら殺されたくなくて僕に媚を売っているのかもしれない…でも面白いからそれもそれでいい。少女は僕のことを永遠に見ていたいと言っていた。ならば…
「じゃぁ〜毎日会う?」
「え…?」
「僕ぅ〜明日から暇だしぃ毎日会う?」
「いいんですか??」
「いいよぉ〜。」
「やった…!やったぁあ!!!毎日楽しみにしてますね!!」
(ははっ…拒否られると思ったのに…そんなに喜ぶなんて…。)
「可愛いっ…。」
「え…?何か言いました?」
「ううん〜。ねぇねぇ〜名前なにぃ?」
「あ…そうでした…!私はレジーナ・クレメンスです!」
「クレメンス公爵家のお嬢様かぁ〜。それじゃぁ〜毎回屋敷を抜け出すのは無理だろうねぇ〜。今回は運良く抜け出せたけど次からそう簡単には抜け出せないよぉ〜?ん〜どうしようかなぁ。面倒くさいなぁ…。」
(貴族だとは分かっていたけどまさか貴族の中でも上位の貴族だったとは…。)
この国には王族とその家臣である4つの公爵家によって治められている。その公爵家は四大公爵家と呼ばれており、クレメンス公爵家はその1つである。その公爵家に毎日潜入するとなるとなかなかの難易度になる。正直面倒くさい。だが…僕はこの子…レナが気に入った。
(そうだなぁ…マスターに言ってみようかなぁ〜。)
「あ…やっぱり会うのはやめですか?すみません…。やっぱり無理ですよね…。諦めます…。」
そう言って泣きそうになっていた。
「あぁ…大丈夫ぅ〜僕がどうにかするから会おぅ。」
「え…でも面倒くさいんじゃ…?」
「面倒くさいことは嫌いだけどぉ〜仕方なくやってあげるぅ〜。レナのこと気に入ったしぃ。そんな泣きそうな顔しないでぇ〜。」
そう言って頭を撫でてあげるとまた顔がタコみたいに赤くなった。
(可愛いっ…このまま家に持って帰りたいなぁ…。逃げたくても逃げられないって状況になったら怯えるかなぁ?それとも僕と一緒に居られるからって喜んでくれるかなぁ?まぁそんな野蛮な事しないけど…いや…でもいい考えかなぁ?)
「あ!名前!そうだ!名前を聞いても良いですか?」
(名前かぁ…そうだなぁ〜…。)
「あぁ〜………シャル。シャルって呼んでぇ。あと敬語もやめてぇ〜気楽に話そぉ。」
そう言うとレナは嬉しそうに目を光らせた。
「分かった!シャル…これからよろしくね!」
「よろしくねぇ〜レナ。」
面白い子みっけ…。