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第五話 勇者様
唐突に流れ込んできた映像に、不思議と不快感はなく心落ち着く何かがあった。
(一体、誰だったの?)
リューカと呼ばれた男を私は知らない。しかし、本当に知らないのだろうか。初対面、既視感すら無い人間に心落ち着くこと等あるのだろうか。今が、一人で生死の境目に居るからと感じるような物ではないはずだ。
そんなことを考えていたら、狼の空腹という名の限界が訪れたようでじりじりと私との距離を詰め始めた。
(このままでは、さっきと同じになってしまう。)
逃げ道を探す。キョロキョロと辺りを見渡すが道と言う道はない。攻撃できるものと言えば、足元に落ちている木の枝くらいだろう。私は、一か八かその枝を掴み狼に向ける。それと同時にそれは私に飛び掛かってくる。馬乗りにされ、間一髪で振り切った枝が飢えた獣の口を塞いでいる。しかし、それも時間の問題だろう。枝はミシミシとしなり今にも折れそうな音色を立てている。
(どうしよう…。このままじゃ…。)
この時私は少年の言葉を思い出した。
「リューカは、勇者だ!!!」
そこからは無意識だった。さっきまで長々と考えていたことを一気に忘れ、ただひたすらに叫んだ。勇者様を…。
「リューカ!!!!!」
五話 勇者様




