9話 顛末
そして一年が経った。
地塩は、天使の奴隷になりながら毎日せっせと作品を書いていた。
出版社から依頼が止まらなず、一躍人気作家となってしまった。占い師、生贄、不倫、同性愛だけでなく、蛇と人間の女性が恋愛する話、ヒロインが男装して騎士団に入り込む話、堕天使や鬼や死神をヒーローにした話、魔法や異能で人に呪いをかける話などを書き、順調に売れっ子になった。
本人は特に嬉しくはなかった。締め切り前になると徹夜は当たり前だ。頭おかしい腐女子がアンチ化し、連日殺害予告が届いた。
本は売れるが、パクリ疑惑は全く消えず、ネット書店のレビューでは星一つの酷評ばかり書かれていた。
親や友達からは不安定な作家になるなんてとバカにされ、ついに就活の機会も逸してしまっていた。多忙で大学の単位も落とし、おそらく中退になるだろう。当然、彼女を作る機会も無く、友達もいなくなった。
それでも辞めるわけにはいかない。
先日、辞めようとしたら、心臓が止まったらしい。
すぐ救急車で運ばれて一命を取り留めたが、あの天使が悪さをした結果だとしか思えなかった。同時に他の病気もいくつか見つかり、医者には休養するように言われたが、仕事を辞めるわけにはいかない。これは呪いかもしれない。
書籍化する方法?
悪魔が喜ぶ話を書けば良い。最近はタイトルに「悪」とつくだけでも勝手に書籍化の依頼が入ってくる。中身は1週間程度で適当に書いた悪役令嬢ものなのに。どうやら世の中は、悪魔が金や名誉を好きにする権利を握っているらしい。
今日も地塩は、悪魔に命令されながらキーボードを叩き続ける。まるで自分は悪魔の奴隷だ。解放される手段はあるのだろうか。さっぱりわからない。
冷凍庫からハーゲンダッツのクッキー&クリーム味を出して食べる。真夏の夜に食べたのに、ちっとも美味しいと思えない。
悪魔に売った魂の中には、味覚も入っていたのかもしれない。
砂でも食べているような気分だった。
完結です。
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日本の娯楽と反キリスト作品
https://youtu.be/0XNlCI0YOkg