8話 邪神
「コミカライズが決まったよ……」
天使に報告するが、地塩は全く嬉しく無い。
以前書籍化したものは、パクリ疑惑がネット上ででていた。実際パクリの様なものなので、否定はできない。出版社は法的には全く問題が無いので、強気に行きましょうと言っていたが、眠れない日々が続いていた。
「でも、もう僕は疲れたよ。もう作品を作りたく無い」
「そんな事言わないで!」
天使は泣き落としを始めた。やっぱり可愛い声で泣かれると、とても心が揺れる。
「邪神ってやつは、そんなの酷いヤツなのか」
そんな疑問も持ち始めていた。今まで書いてきたウケたものは、邪神を怒らせていたものだと思う。ただ、不倫、ヤクザは世間一般的にもあまり良いものでは無い。同性愛は、賛否あるが、自然の成り行きでは生まれないはずだ。調べると性的虐待の被害者が同性愛者になる確率が高いという。BLにあるような純愛物語は当事者にも馬鹿にされているらしい。
生贄についてはわからないが、調べるとヨーロッパのカトリック教会の幼児虐待スキャンダルが生贄儀式のようだという記事が出てきた。
666という数字も調べると悪魔の数字である事がわかる。聖書によると悪魔を拝むものが「獣の刻印」として押される数字で、額か手の甲に押されるらしい。キリスト教の牧師のブログに書いてあった。
もしかして天使のいう邪神の方が、本当の神?
そんな事まで思うほどだった。
そんな地塩の予想を見透かした様に、今度はこんな作品を作るように命令してきた。
「イエス・キリストをバカにするような作品を作って欲しいの」
そう言われても全く不思議に思わなかった。むしろそう要求される事になるだろうと思った。
「そうねぇ。ルシファーとイエスが仲良くコントでもしている様なコメディでも書いてちょうだい」
こうして地塩は「ルシファー&イエス」というギャグ小説を書いてネットに投稿した。この作品の中のイエスは、機嫌が悪くなるとパンを石に変え、ルシファーの言いなりになり、毎日ゲームと漫画に耽るという設定だった。主人公のルシファーはもちろん、サブキャラのイザベラやカインは可愛く書けと言われた。
この小説もあっと言う間に高ポイントがつき、書籍化が決まった。