7話 不倫
「ねえ、天使ちゃん。次は何を書けばいい?」
「そうね。次は主婦向けに不倫ものでも書きましょう」
「不倫?」
だいたい天使の意図が見えてきた。どうやら天使のいう邪神に嫌がらせをする為にこんな事をしているようだ。
どう言う訳かは不明だが、邪神へ嫌がらせをすればするほどこの世で成功するようだった。何となく不倫ものは書けと命令される様な気がした。
「天使ちゃんは、何でそんなに邪神を恨んでいるの?」
「だって本当は天使達が神様になれるぐらいの実力があるんだもん! 邪神から神の座を引きずり下ろしてやる!」
その声は、あまり天使っぽくなかった。なぜか地塩の背筋は、寒くなってきた。
もう夏はとっくに過ぎて秋も終わりかけているからか。
今まで順調に書籍化し、賞までとった事をだんだん怖くなってきた。
「あのさ。もう書籍化の夢も叶ったし、もう良いよ。アドバイスくれなくてても」
地塩は無理矢理スマートフォンの電源を切り、天使との通話を打ち切った。
しかし、その夜。
悪夢を見た。
単なる悪夢ではなかった。ツノを生やした悪魔が出てきた。今まで散々良い思いをしてきたんだろう、途中でやめたら殺すと首を絞められる。
「助けて、誰か」
しかし、誰かが助けてくれるわけもない。ベッドの上で冷や汗を流すだけだった。
翌日、身体を見たらあちこちアザまでできている。金縛りにもあっていたようで、とにかく恐怖心しか感じない。身体も痛くて仕方ない。
すぐにツイキャスアプリを開き、天使を呼びだし、言われるままに主婦向けドロドロ不倫ものを書き上げた。タイトルは「あなたは光の天使〜禁断の愛に溺れる666日〜」だった。
なぜか666日なのかは不明だが、天使のよるとラッキーな事が起きる縁起の良い数字だという。実際、すぐにコミカライズの企画の連絡が入った。