6話 同性愛
「何で天使ちゃんは売れる小説がわかるの?」
いつものようにアプリを開いて天使に聞いてみた。
すっかり地塩は調子に乗っていた。初めて書籍化した小説は、大好評で発売即重版になった。嬉しくて仕方がない。
自分が書いた作品とは言えないが、ライト文芸の賞も貰ったし、ふってわいた幸運を見逃すわけにはいかない。
「じゃ、次はBLを書いてね」
「は? BL?」
予想外のジャンルだった。男である地塩は、男性同士の恋愛は気持ち悪いというのが本音だった。男はやっぱり異性に惹かれるものだと思う。素直にそう言うと天使は、泣き始めてしまった。
「酷い! この差別主義者! 最低! 時代遅れ! 死ね!」
可愛い声で泣かれてしまうと、どうしようも無くなってしまった。
「何でそんなに同性愛にこだわるの?」
天使が腐女子だったとは。その事もショックだったが、とりあえず聞いてみた。
「実は私、大昔にソドムとゴモラっていう所に住んでたの」
どっかで聞いた事のある地位だが、思い出せない。とりあえず天使は日本人では無い事は理解した。
「そこで私は同性愛にふけっていたんだけど」
「サラりととんでも無い事言うね」
「でも、突然邪神が現れて火と硫黄でソドムとゴモラの町は滅ぼされてしまったの」
天使は、邪神について恨み言を十分以上語っていた。なんでも邪神が嫌がる事をすればするほど、この世の中で成功出来るカラクリなんだと教えてくれた。
「よっぽどその邪神って酷いんだ」
「ええ。他に邪神は売春、不倫、婚外セックス、詐欺、嘘、男装、女装、偶像崇拝、スピリチュアル、占い、泥棒、殺人、獣姦なんかも嫌いね」
「あれ? こう聞くと邪神って割とまともじゃない? 殺人や泥棒なんてフツーに犯罪だよ?」
「うるさい! もう作品のアイデア教えてあげないんだから」
「わかったよ」
そう言われてしまうと、何も言えない。結局天使の言う通り、BLを書いて「小説家になってみたい♪」にアップした。タイトルは「異性転生したら、最愛の上司と永久に結ばれた」というものだった。
こに作品が書籍化の連絡はすぐに来なかったが、腐女子に大ウケしてしまい、連日気持ちの悪いメールが届くようになった。