4話 生贄
「やっぱりね! すぐポイントついたでしょ?」
翌日も天使ちゃんの嬉しそうな声がスマートフォンから響く。
どういう理屈でそうなるのかは全く不明だが、夜にツイキャスアプリを開くと天使と会話する事ができた。
あれから細々とした文章などを天使から指摘され直すと、pv数やポイント数が跳ね上がった。まだランキング上位までは食い込め無いが、底辺は抜け出した。このまま上位に食い込んで書籍化したい。
「これから先は、私と一緒に新作を作ります」
「へ? 新作?」
「ええ。私の言う通りにすれば必ず書籍化できますね」
正直、天使に言われたままに書くのは苦痛。自由に書きたいとも思う。ただ、必ず書籍化出来ると聞いて欲に目が眩んだ。
「時代は異世界恋愛ものよ。女性向き異世界恋愛は売れるの」
「いや、でも俺は女向き書くのは自信ないな」
「大丈夫。私のいう通りに書けば必ず書籍化出来る!」
いつになく押しの強い天使に嫌な気分になりながらも、欲には勝てない。
創作ノートとボールペンを持ってきて、天使の言う事をメモする事にした。
ついでに冷蔵庫からハーゲンダッツのストロベリー味も持ってくる。糖分不足も感じた。甘いものが欲しい。それに今日は熱帯夜でとても暑かった。
「生贄になって龍神に嫁ぐヒロインの話にしましょう」
「そんなんでウケるかね?」
「絶対ウケるわ。生贄にされかけたのに、なぜかイケメン龍神に溺愛されるというのがポイントね。それに今流行りの和風シンデレラにしましょう。ヒロインは虐められているの」
「そんなベタな話は女子は好きなんだ」
「そうよ。いつだってベタなものはウケるから」
ハーゲンダッツを食べながら、とりあえず天使が言う事をメモし、ワードを開いて文章を打ち始めた。
なぜかスラスラと文が浮かんできて、キーボードを叩くスピードが速くなっていく。
途中、天使に色々と注文をつけられながら7日でなんとか十万文字書き上げ、さっそく「小説家になってみたい♪」にアップした。
正直なところ、地塩は執筆中の記憶がほとんどなかった。まるで、何かが乗り移ったみたいだった。
それでも何とか新作「龍神様の花嫁〜生贄にされかけたのに龍神様が私を食べないでめっちゃ溺愛してくるんですけど!〜」を書き上げてアップした。
すると、あっという間に50000ポイントがつき、出版社から書籍化とコミカライズの依頼が舞い込んだ。