わがままな妹のおかげです
部屋に入ると、背が高くて、ガッチリとした体格のよい青年が座っていた。とても穏やかな雰囲気をもった人…あれ?どこかでお会いしたような…
「すみません、手違いでミアが外出してしまって…」
「?? え?後ろにいる方がミア様ですよね?」
「「は?」」またお父様とハモっちゃいましたね。
でも、私がミアってどう言うことでしょう?
「あのルーク殿これは姉のエレナですがもしやあなたはミアとエレナを間違えていらっしゃった?」
「え? 姉? エレナ嬢…」
そのまま固まってしまいました。
でも、ミアが人違いなら、わざわざあの子の説明をしなくてもいいのでは?
とか思ってしまいました。
これなら先にお父様にアラン様の話をしてもいいかしら?
ルーク様には関係ないから申し訳ないけど。
そう思っているうちにお父様が話を続けてしまった。
「失礼ですが、なぜそんな間違いをしたのかお聞きしても?」
頭をかきながらルーク様が私を見ました。
「私の事を覚えてませんか?数週間前王立図書館で…」
「あ! あの時の!」
私も思い出しました。図書館で本をぶちまけてしまった図書職員の方を
一緒に手助けした優しい男の方がいたのです。
その後何となく立ち話をして、ずいぶん話が弾みました。
私は男の方とあんなに話が合ったのは初めてでした。
何せアラン様なんてまったく合わないから、余計にその時それが嬉しかったのです。
でも、その時私たちは名前も教え合っていませんでした。
「思い出してもらえましたか?
あの時私はびっくりしていました。
あんなに話が合って楽しかった女性は初めてで、あなたが帰るところを何となく気にして見ていたのです。それで伯爵家の馬車に乗るのを見てベルガモット家のご令嬢だと言うことは確認したんだ」
なるほど、でも妹と間違えたのは何で?
「その後、夜会で一緒に行った同僚が妹さんに声をかけた時にその令嬢がエレナ・ベルガモットと名乗ったんだ。
だから、君がミアだと思って伯爵に婚約の打診をしたんだ」
ははあ なるほど。
ミアは夜会で気のない男性に声をかけられると私の名前を出してると聞いた事がありました。
まさかそのせい所為でこんな誤解が生じていたとは…。
「そうでしたか、妹の馬鹿な行動で迷惑をおかけしました」
「いや、私ももっとちゃんと確認をすればよかったんだが、確かに伯爵が言ってくるあなたの印象が違いすぎて変には思っていたんだが…
私も少し舞い上がっていたのだと思う」
そう言って下を向かれてしまった。
「エレナ嬢はもう婚約していると聞いてるし、残念だ」
そうそう婚約よアラン様の事を言わないと…。
お父様はどうするべきか悩んでるけど、
そろそろ告白していいかしら?
「お父様、実は先程アラン様が来られて、ミアはアラン様と出掛けて行ったのです」
「!? 何でお前じゃなくてミアと?」
「アラン様は、私と婚約を解消してほしいと言いに来られたのです。
私と解消してミアと付き合いたいからと…」
「なんと!」お父様が呆気にとられてます。
それはそうですよね、いくら格上の侯爵家でも、この扱いは非礼すぎますもの。しかもお父様に、直接言わないで伝言ですからね。
アラン様侯爵様に怒られたりしないのかしら?
お父様はこめかみに筋が浮いてますから、結構怒ってますね。
後で侯爵家に抗議するかもしれませんね。
もともとあちらから是非にと言ってきたお話ですしね。
気がつくと、ルーク様が驚いた顔をしながら、立ち上がっていました。
「ベルガモット伯爵、話を聞いてしまったのだがエレナ嬢の婚約が解消になるのは本当の事ですか?
ぶしつけな提案で申し訳ないが、エレナ嬢の婚約が正式に解消したら、改めて婚約の申し込みをさせてはくれないだろうか?」
ルーク様は言いにくそうにそう仰いました。
「エレナ、ルーク殿はああ言っているがどうするね?」
「私は構いませんよ。アラン様と違ってとても誠実な方だと思いましたし、お父様が許してくれるなら問題ありませんわ」
私はそう答えました。
ルーク様のお顔がパアと明るくなりました。
この方となら、楽しく日々を、送れそうです。