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二重人格  作者: 春月桜
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二重人格1

これは、ヒィクションなので、深く考えないでください。


 あなたは自分を殺したくなるほど憎んだことをありますか?


・ ・ ・ ・ ・


 ある朝のこと、私は目が覚めた。


 起きたとき目の前にある光景が血の海だった。


 さあ、あなたならどうしますか?


 私は警察に連絡を取ろうか迷いました。


 血だらけの手の平からカランと軽い音がした。


 その音を出したものは家庭用の普通の包丁だった。


 いつも、母と仲良く作っていた晩ご飯。


 それなのに、どうして私が殺しているの?


 私が殺したの?


 いつも楽しかったのに。


 何で?


 頬には無数の雫。


 そう考えていたとき。


 バンッ!!!!!


 いきなり玄関の扉が開いたのがわかった。


 ドタドタと音を立てながら入ってきたのは警察の人達だった。


「取り押さえろー!!!」


 警察の中の偉い人なのか、その人がそう掛け声をすると、その人以外の人が私のことを取り押さえてきた。


 私はそのとき意識が飛んだ。


「いてーよ!!!てめぇら、そんなことしなくてもこいつはちゃんと歩くっつーの!!!」


 私の意識がないときにそういうふうな声が薄っすら聞こえた。


「……?」


 その声がしなくなったときに私は意識が戻った。


 私は何も言わずその人達についていった。


 抵抗したって無駄かもしれない。


 私は頬に涙を流しながらついていった。


「長官?どうなさったのですか?不満そうな顔をして。」


 部下がそう尋ねてきた。


 その言葉に若い、長官という人は。


「いや、気になることがあってな。」


 その長官はそうつぶやいた。


・ ・ ・ ・ ・


「どうして、両親を殺したんだ??」


 怖い顔をした人がそう私に尋ねてきた。


 私はその迫力を出している人に尋ね返した。


「私は両親を殺したんですか?」


 私は頬から一粒雫を落とした。


 私が聞きたい。


 私が両親を殺したのか。


 何故両親を殺したのか。


 何でそのときの記憶がないのか。


「お前、覚えていないのか?」


 その男の人が驚いた顔で尋ねてきた。


 私はその男の人の目を見て冷静に尋ねた。


「覚えていないんです。何故私は両親を殺したんでしょうか?」


 溢れ出す涙。


 何度も拭った目の周りは赤くなっているに違いない。


「長官。これは…」


 その男の人は若い男の人に言葉を言いかけた。


「ああ、二重人格だろう。」


 若い男の人は下をうつむきながら言い放った。


 二重人格という言葉はきいたことがある。


 一人の体に二つの人格(性格)ができること。


 私がその一人なの?


 そんな今まではそんなことはなかったはずなのに。


「長官、この件は降りたほうがよろしいのでは?」


 怖い顔の男の人が若い男の人に心配そうに尋ねた。


 え?


 なんだろう?この空気。


「いや、大丈夫だ。俺がこの件を処理する。」


 若い人はそう一言言い残して、どこかへ行ってしまった。


 若い人は黒髪で目に入りそうなくらい長い前髪に鋭く光る瞳。


 きりっとした輪郭。


 少し高い鼻筋。


 綺麗な顔をしている。


 何か寂しそうな顔をしていた。


 二重人格という言葉がすぐ出てきたということは前にもこういう事件があったのだろうか?


 きっと何か思い出があるのだろう。


 今の私には別に考えなくてもいいことだ。


「では、君は表の人格だね。」


 また怖い人が私に向かってそう言ってきた。


 私は小さな声で「多分。」と言いながら頷いた。


「色々大変になりそうだ。」


 ため息を吐きながらつぶやいたその言葉は、私に重く圧し掛かった。


・ ・ ・ ・ ・


 初めて入る牢屋というところは寒かった。


 床はコンクリートで冷たくて。


 壁にはところどころ隙間風が入ってくるところがある。


 私は硬いベットに寝転んだ。


 コンクリートの天井少し黒くてほこりっぽかった。


 近くから大きな声が聞こえたりすごい物音がしたりした。


 「ここから出せー!!!」「何で俺がこんなめにあうんだよー!!」と色々。


 物音もすごかった。


 でも、私はそんなの気にはしなかった。


 そんなことしたってここから出られるわけじゃない。


 私は家に帰っても一人だからまだ、ここのほうがいいのかも。


 少し慣れてきてそう思えるようになってきた。


 私にはもう一つの人格があるの?


 そのときだった。


「おい。」


 いきなり柵の前で私を呼んだのはあの若い男の人だった。


 私はその呼ばれたほうに目を向けた。


「自己紹介する。俺は嘆崎たんざき 賢治けんじだ。よろしく頼む。お前はなんという名前だ?」


 いきなりそういわれたので驚きながら…


夕月ゆうづき 香蓮かれん。」


 私はボソッと言った。


 あまり大きい声は出せなかったが、ちゃんときこえたと思う。


「そうか。お前は殺したときのことを覚えていないんだな?」


 嘆崎さんは私にそう尋ねてきた。


 私は応えようとしたときいきなりまた意識が遠くなった。


「いいや。覚えてるよ?」


 私が意識が遠くなってる間にそのような声が聞こえた。


 ああ、やっぱりもう一人の私がいるんだ。


「お前何がしたいんだ?裏の人格さん?」


 嘆崎という男はそう俺に言ってきた。


 裏の人格。


 確かに俺はそうなるのかもな。


 いつもいつも俺は悪いことばっか。


「俺はこいつを陥れる。こいつに接した人間はすげて排除してやる。それが俺の夢。」


 俺はそう言って笑った。


 きっとこれでいい。


 私は意識が戻った。


「私はやっぱり二つの人格があるんですね。意識が遠くて何を言ってるかあまり聞こえなかったけど。何をもう一人は言ったんですか?」


 私は嘆崎さんに尋ねた。


 嘆崎さんは唇をかみ締めていた。


「嘆崎さん?」


 私は心配しながら嘆崎さんの顔を覗き込んだ。


「君に接した人を全員殺すのが夢だそうだ。」


 その言葉を聞いた途端に吐き気がした。


 体が震える。


「私は何かうらまれることをしたでしょうか?どうして、裏の人格はそこまでして私を憎むんでしょうか?」


 私はゆっくりと冷たいコンクリートの上に体を丸めて座った。


 どうして、自分に裏の人格ができているのか。


 私にはわからない。


 でも、裏の人格と話せないのだ。


 どうやったら殺した訳を聞けるのだろうか?


「わからない。でも、頑張って探してみるよ。裏の君の本当の気持ちを。それじゃ、またくるからな。」


 嘆崎さんは私の背中にそう言い残して行ってしまった。


 薄暗い牢屋の中は一人の寂しさが冷たかった。


 きっといつまでも、こんなところにいたら自分が自分でいられなくなるような気がする。


 お母さん、お父さん、ごめんね。


「どうしてお前はそんなお人よしなんだよ。」


 耳の鼓膜のもっと奥のほうからこの声が聞こえた。


 私の声とよく似ている。


「あなたはもう一人の私なのね?」


 私はもう一人の自分に問いかけた。


「そうだよ。俺はあんたが大っ嫌い。だから、両親も殺してやった。」


 もう一人の自分はそう言った。


 何か悲しそうな声をしていた。


 私にはわかったような気がする。


「じゃあ、私を殺せばよかったじゃない!!!親を殺して何になるのよ!!!どうして、私を一人にさせたのよ。」


 私は泣きながらそう叫んだ。


 私がいなくなればよかった。


 犠牲は私だけでよかった。


「そしたらが俺がいなくなるじゃねーか。」


 私はその言葉が耳に残ったとき思いついた。


 私がいなくなればこの事件は終わるじゃない。


 みんな苦しまないで終わる。


 なら、私がこの事件をとめなきゃ!!!


 私はそう思いつき何かないかと探した。


 目についたのは水道だった。


 洗面台に水をためて息をできなくしたらきっと…


 私は洗面台の前に立ち、水道の蛇口をひねった。


 そのときだった。


 意識が急に飛んだ。


「バカな奴だな。無駄なことをしやがって。」


 キュッ


 蛇口を閉めたのはもう一人の自分だった。


 私は気づいたら変な異空間にいた。


「ここは…」


 私は全部濃い紫色をした空間に立っていた。


 そして、真正面にもう一人の自分が立っていた。


「ここは俺がいつもいる場所。わかんないだろ?いつも外をみているもんな?」


 もう一人の自分は無愛想にそう言った。


 でも、やっぱりどこかに寂しそうで、悲しそうで、切ない何かがあるんだ。


「あなたはどうして、私をそんなに苦しめたいの?」


 私はゆっくりと尋ねた。


 本当の気持ちが知りたい。


 きっと人殺ひとごろしなんてしたくないはず。


 そう信じたい。


 私はそう思っていた。


「あんたにはわかんない。」


 もう一人の自分がそう言ったとき、いきなり現実に戻された。


 え?


 でも、もしかしたらこれで話せるようになったかも。


 何を考えて私以外を殺しているんだろう?


 私はそう思った。


・ ・ ・ ・ ・


「今日は外に行こう?」


 いきなり嘆崎さんが私に声をかけてきた。


 私は目を丸くした。


「でも、そしたら、もう一人の…」


 私がそう言いかけたとき。


「大丈夫。さぁ、いくぞ!!」


 嘆崎さんはそう言うなり牢屋の鍵を開けて、私の腕を掴んで連れて行った。


 え??


 ちょっとー!!


・ ・ ・ ・ ・


 きっと知らなかった。


 人がこんなふうに傷つけあうなんて。


 人がこんなふうに傷つくなんて。


 誰も知らない気持ちはどこへ消えていくのだろう?


・ ・ ・ ・ ・


 次に続く…













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