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男は今日も薄暗い部屋にいた。変わったところがあるとすれば、今日はティーカップではなく、見た目の悪い鉄の輪を手にしていることだ。
「ボクが楽しそうに見えるって? キミがそう思うなら、きっとそうなんだろうね。うん? そう。原因はこれだよ。さっき貰ったんだ」
男はそう言うと、先ほど梨璃子から貰った腕輪を楽しそうに指でクルクルと回して見せた。
「ふふ。王子様から貰ったんだって。キズナだね。うん。ボクたちにもあったよね」
男はそう言うと、うっそりと笑ってみせた。笑顔のままカップに手を伸ばすと、中身を既に飲み干していたことに気づく。
「さっき飲んでしまっていたんだっけ。ポットにもなくなってしまったんだ。キミは行儀悪いって言うかもしれないけど、キミのを貰ってもいいかな?」
男はそう言うと、対面にあるティーカップへ手を伸ばす。淹れてから少し時間が経っている為、それはすっかり冷めてしまっていた。
「ありがとう。キミはいつも飲んでくれないね」
そう言って男が紅い瞳を向けた先には、薄汚れた兎の人形が座っていた。
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