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6-1


 0時になるといつも通り転移能力(ギフト)が発動され、梨璃子はあっという間にこの間スラッグルを撃退した場所に飛ばされた。先日はベトベトの体液の海であったであろうその場所は、そんな惨事はまるで存在しなかったかのように、何もない綺麗な大地がそこにはあった。

「大丈夫?」

 先に来ていただろう紫蘭の声にはっと意識をやると、紫蘭は真面目な視線を梨璃子へと向けた。梨璃子は否定する様に頭を横に振る。

「別に大丈夫よ。随分綺麗になるものね、って感心しちゃった」

「ふーん? 俺はスメラギさんに感心するよ」

 紫蘭はちらりと気づかわしげな視線を投げると、それ以上はもうその話題に触れることはせず、持っていた鞄から真っ赤なダイスを梨璃子に投げて寄こした。

「元気なら、さっさと今日のノルマ終わらせよ」

紫蘭が欠伸を噛み殺しながらそう言うと、いつもと同じように空中でクルクルと回るそれに梨璃子が触れ、それは五と三を示した。

「今日は出目が大きい! 少しでも先に進めるからいいことだわ」

 梨璃子が満足気にそう微笑むと、紫蘭が梨璃子の方へ手を差し伸べた。

「なに?」

「転移能力。(ギフト)苦手でしょ? ていうか、このくだりもうなくてよくない?」

 だから早く掴まれと言わんばかりに紫蘭はぷらぷらと手を振ると、梨璃子は素直にそれに従った。

「ありがとう」

 紫蘭のジャージの裾を少し摘む様に持つと、

「どういたしまして」

と、紫蘭は梨璃子のことを抱きこんだ。

「?!」

(なんでっ?!)

 ふいに紫蘭の胸元に抱きしめられるように体を固定され、梨璃子はその体勢のまま紫蘭を仰ぎ見た。梨璃子の心拍数は急激に上がろうとしているのに紫蘭は別に普段と変わった様子もなく空を仰いでおり、

「じゃあ飛ばして」

と、ゲームに向かい声を掛けた。

(なんか、私だけが意識してるみたいで恥ずかしくなってきた……)

梨璃子が身動きが取れないまま頬に熱が集まるのを意識しまいとしていると、ゲームが紫蘭の声に反応し、すぐに自分達の周囲が光に包まれ、転移能力(ギフト)が発動されたことが分かった。

(ああ、また来るっ!)

 梨璃子が未だ慣れない感覚にぎゅっと目を瞑ると、梨璃子の背中に回された紫蘭の腕が、ぎゅっと梨璃子を抱きこんだ。

(……なんか調子狂う)

 やはりなんだか様子のおかしい紫蘭に梨璃子はドキドキしながら小首を傾げると、だが梨璃子は抵抗することなく、されるがまま紫蘭の腕の中に留まった。


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