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5話 空間歪曲


 俺は3歳になった。


 自宅の部屋、誰もいない中で、俺は意識を集中させる。


 必要なのはイメージ。

 必ずできるという、自身を信じる心。




(空間転移――テレポート!!!)




 目の前の景色が、ぐにゃり、とゆがんだ。


 そして、気がつけば俺は、家の外に瞬間移動している。


 家屋の裏側に移動したから、誰にも見られていない。


 このあたりは雪国で、昨日も雪がふっていたため、あらかじめ履いていた靴が少し雪に埋もれた。


《失敗して不発になることはもうなくなったな》


 ディメンションの言葉が頭の中に響く。


 初めてテレポートを発動させてから1年。

 この【次元魔法】に関しては何とか板についてきた。


 始めの方は失敗が多かった。

 1日のうちに魔法を使える回数が少なすぎて、しかもテレポートも発動しない。


 が、回数をこなすたびに、成長するたびに、魔力の総量も上がっていったらしい。

 ある時を境に、ほとんど失敗せずにできるようになっていった。


「できるようになったけど、これからさきも、テレポートのれんしゅうをするの?」


 ちなみに、3歳になったから会話も流暢にできるようになっている。


《……いや、戦える力を身に付けるのは早ければ早いほどいい。テレポートだけじゃ敵を倒せないからな。次の段階にいこう》


「つぎのだんかい……」


 どんな【次元魔法】を使えるようになるのか。

 それなりにワクワクしていた時に、物音が聞こえた。




 どうやら、父さん――レクスが戦闘訓練をしているようだ。

 父さんはよく剣をもって素振りをしている。




 裏庭からコッソリと家の正面に戻ると、父さんは俺に気づいて声をかけてきた。


「おはようレクス。起きるのが早いな」


「う、うん。なんかたまたま目がさめた」


「そうか。……ごめんな。少しだけ訓練をさせてくれ」


 父さんは真剣な顔つきに戻ると、手にした大剣を鋭く速く振り続ける。


 びゅん!! という空気を切り裂くような音は聞いていて気持ちがいい。


 この村の日常には、魔物との戦いも含まれている。


 いつでも戦えるよう、死ぬことのないように、父さんは身体を鍛えている。




 ふと思う。

 俺と父さんの見ている世界は、かなり違うのではないかと。




 俺はまだ幼いから、家から出ることがほとんどない。


 一方で、父さんは村にいる多くの人とかかわりがある。

 だから視野が広くなって、その上で家族を一番大切にしてくれている気がする。


 これから先、俺はルリアに会うことになる。


 アリシアやルリアと、関りを持ち続けることになるんだろう。




 けど、具体的に何をしていくのだろう?




 時がたち、ここが辺境の地であるがために、いまだ女神には見つかっていない。


 しかし、一生をかけて、俺たちはこの村に居続けるのだろうか。


 果たして、それが2人にとっての幸せだろうか?


《気が早いな》


 ばっさりと、ディメンションが言い切る。


 その通りだとは思うが、父さんを見て、何となく思ってしまったのだから仕方がない。


《まずはお前が力をつけてからだ。明日から本格的に次の訓練に入る》


 そういえば、その話をしていたんだった。


「なにをするんだ?」と聞くと、ディメンションはさらりと言った。




《実践だ。明日から魔物を倒してもらう》


「……まじか。攻撃手段が何もない状態でか?」



   ♦ ♦ ♦



 翌日。


 いつものごとく、俺は親の目をはずれて、1人になった。


《さぁ、始めよう》


「ほんとうにやるの?」


 死んだら元も子もないのに、実践は速すぎるのではなかろうか。


《家で攻撃系の【次元魔法】を使うわけにはいかないんだよ。下手したら一瞬で家がぺちゃんこになる》


 それは……確かにごめんこうむる。


「でもさ」


《大丈夫だ。テレポートの時のように、失敗を繰り替えしたりはしない。というか、テレポートを習得した時点でいくつかの魔法は簡単に使えるようになる》


 ……そこまで言うなら、やるしかない。


 戦えるようになるのは望むところ。




《作戦はこうだ。テレポートで適当に村の外、森の方向へ飛ぶ。魔物を見つけて倒す。テレポートで家に帰る》




「わかった」


 帰る分の魔力はしっかりと残しておかないとな。


 そんなことを考えつつ、俺はテレポートを発動した。


 まさか、あんなことになるとは夢にも思わずに。



   ♦ ♦ ♦



「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 端的に言おう。


 テレポートで飛んだ瞬間に魔物に遭遇した。


 2メートルを超える巨躯。

 でかすぎる腕とそこから生える爪は、大木ですら真っ二つに切り裂けそうだ。

 真っ白な体毛が身体じゅうを多い、ちょっとやそっとではびくともしないだろう。




 おそらく、いやほぼ間違いなく、2年ほど前に村に大きな被害を与えた『スノーベア』だ。




「……おい」


 3歳の少年が立ち向かう相手では絶対にないだろう……。


《たしかに予想外だった。だが勝てるさ》


「むちゃいうな!!!」




 さらに絶望的なことに、その恐ろしすぎるスノーベアが、一切のためらいなくこちらに突っ込んできた。


「なあああああああああああ!!!」


 俺は居ても立っても居られない叫び声をあげながら、テレポートで距離をとった。


《さて、ぶち潰すぞ》


「どうやって!!!」


《テレポートをするときに散々空間を歪ませてきただろう。その歪みを、今度はスノーベアにぶつけるんだ。空間ごとこの魔物を破壊する》


 くっ……! やるしかないか!


 急展開! ぶっつけ本番!


 だけど現実は非情で、こんなことは珍しくない!?


 もう一度、スノーベアがとんでもない速さでツッコんでくる。


 俺は拳を握り締めて、魔力を全開放させるつもりで思いきりぶちかました。


「こんなところで、死んでたまるかああああああ!!!」



ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!!


まことに恐縮ですが、お願いがあります!


この物語を読んで面白いと思っていただけた方は、ぜひブクマと評価をしてください!


画面下の「☆☆☆☆☆」をクリックしていただければ泣いて喜びます!


皆様、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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