表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/31

幕間 早瀬ふみ

 岡本光への接近は、パーティーに参加できたことで成功した。ただ、神崎先輩が一緒だったことには驚いたけど、結果的には良かったのかなと思う。


 私には、一美というお姉ちゃんがいた。岡本のお兄さんと同級生で、ヒーラーとして岡本のお兄さんとはバディを組んでいた。


 その関係は単なるバディではなく、岡本のお兄さんとは恋人関係であり、高校卒業後は一緒にプロのダンジョンプレイヤーになることを夢見ていた。


 私は、お姉ちゃんのことが大好きだった。ドジで間抜けな私をいつも面倒みてくれて、ダンジョンから帰ってきたら一番に珍しいお土産をくれたり、ダンジョンの話をしてくれた。


 そんなお姉ちゃんがおかしくなったのは、高校卒業する直前のことだった。晴れてAランクのランクアップ試験も合格し、所属するパーティーにスポンサーもついた矢先のことだった。あろうことか、岡本のお兄さんがダンジョンで命を落としてしまったのだ。


 しかも、魔物と戦ってとかじゃなく、足手まといのお荷物だった弟の身代わりになって命を落としていた。


 その話を聞いた時、私は怒りで体の震えが止まらなかった。お姉ちゃんの話だと、岡本光は闇属性というダンジョンプレイヤーとしては致命的な欠陥を持っていたらしい。


 そんな弟の為に、岡本のお兄さんは闇属性を変える方法を探してダンジョンに潜り、結果的に帰らぬ人になった。


 そのおかげで、失意の底に叩きつけられたお姉ちゃんは次第に塞ぎこむようになり、私が中学三年生になったばかりの春に、この世を去っていった。


 その日から、私の中に屈折した怒りの感情が渦を巻き始めていた。お姉ちゃんが詳しく教えてくれなかったからよくわからないけど、岡本光が闇属性のくせにダンジョンプレイヤー育成専門の高校に入学していることだけはわかった。


 その事実を知った時、私は一度は諦めたダンジョンプレイヤーになることを決めた。無我夢中でランクアップ試験を受け、可能な限りのスキルを身につけることに躍起になった。


 別にプロのダンジョンプレイヤーを目指しているつもりはなかった。気持ちは、岡本光への復讐心で一杯だった。岡本光さえいなければ、岡本のお兄さんは死なずにすみ、お姉ちゃんも自殺することはなかった。岡本光が闇属性のくせに、ダンジョンプレイヤーなんか目指していなければ、こんなことにはならなかった。


 そんな気持ちが私を突き動かしていた。会ったこともない人を憎むのは変だけど、当時の私には岡本光を憎むことでしか精神を保てなかった。


 計画通りに高校へ入学し、岡本光の存在を探して回った。岡本光は、相変わらず闇属性でFランクのままだった。そのことを周りにいじられ、岡本光は陰湿な学園生活を送っていた。


 その姿を見た時、私は嬉しく思うと同時に、なんでこんな奴の為に未来あるダンジョンプレイヤーだった二人が死ぬ必要があったのかと、私の中でさらに怒りが爆発した。


 おかげで、岡本光の卒業に合わせて組んでいた計画を変更し、前倒しで実行することになった。岡本光を騒動に巻き込み、闇属性のスキルを使わせて退学に追い込むという私の作戦は、途中までは順調だった。


 お金でガラの悪そうな連中を雇い、トラブルに巻き込んで闇属性を解放させるところまではよかった。けど、解放された闇属性を見て、私もお金で雇った連中も腰を抜かしてしまった。


 Fランクだと侮ったのが間違いだった。底冷えするような黒いオーラに包まれた岡本光は、私の中に芽生えた黒い感情さえもあっさり飲み込むような冷たい眼差しをしていた。


 恐怖心で動けなくなった私は、ただ岡本光の姿を見つめるしかなかった。黒いオーラに包まれ、全てを壊しそうな冷たい笑みを浮かべた岡本光に対して、私は完全に飲み込まれていた。


 死ぬかもしれないと本気で思った。けど、幸運にも助けが現れた。鈴木さんという用務員のおじさんだったけど、にこにこと笑みをたずさえたまま、あっさりと岡本光を気絶させて闇属性を封じ込めた。


 そんな鈴木さんに、外見からは想像できない実力の欠片を見たような気がした。なにはともあれ、私は助かったことに感謝しつつも次の作戦を練り直す必要があった。


 そのためにも、岡本光にさらに近づく必要があり、様子を見に行った矢先に厄介事が発生していた。最悪なことに、私が尊敬する神崎先輩が岡本とバディを組むという話になっていた。


 神崎先輩は、雰囲気は違うけどお姉ちゃんと同じ匂いがした。真っ直ぐにプロのダンジョンプレイヤーを目指し、仲間のために切磋琢磨する姿は、男子はもちろん女子の間でもカリスマ的に人気があった。


 けど、神崎先輩はダンジョンで開けてはいけない宝箱を開けたことで呪われていた。でもそれは、決して強欲なんかじゃなくて、仲間のために仕方がなかったらしい。


 そんな神崎先輩が、危険過ぎる岡本光とバディを組むというわけだから、当然阻止するために、ゴブリンの洞窟に導くふりしてオーガの洞窟に案内した。属性反転がうまくいけば、岡本光はダンジョンプレイヤーとして動くことになるし、何より神崎先輩とバディを組むのが許せなかった。


 でも、結果は期待通りにならなかった。属性反転により光属性となった岡本光は、数々のスキルを身につけたSランクに匹敵する強さを持っていた。たぶん、ランクアップできない代わりにスキルをがむしゃらに身につけたんだと思う。そのおかげで、光属性を解放した時の岡本光には、今の私ではかなわないことがはっきりとわかった。


 だから私は、岡本光のパーティーに参加することを決めた。幸い、ある程度のダンジョンを攻略するだけのスキルを私も持ってはいる。怪しまれないように仲間のふりして、いつか、隙をついて岡本光に復讐しようと思う。


 そのチャンスがいつ訪れるかはわからないけど、私はその時を夢見ながらじっと待つことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ