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デッドオアラブ~Dead or Love~  作者: 平河 宗真
6/8

6話 絶叫系引っ越し

前回のあらすじ的なやつ。

自分の子供を産んでそして殺そうとするヤバい殺し屋が隣に引っ越してきたことによって急いでマンションから離れる弥とみづき。

マンションの地下を進んで出たのはシーの方だった。

ちなみに僕はランドの方が好きです。

さて、何とかしてリリーの元から逃げてここまで来た訳だが…。

「とりあえず、なんで地下通路がシーに繋がっているんだ?」

車から降り、様々なアトラクションを見ながら弥は質問する。

「外部には秘密にされているけどこのテーマパークは元々久遠家が作ったものなの。」

知らなかった。久遠家はエネルギーや医療、軍事などの幅広い分野に精通しているがまさかこのようなものにまで手を出しているとは思わなかった。

「なんで秘密にしているんだ?」

弥の頭に浮かんだ疑問。

別に秘密にする必要など無いではないか。寧ろ久遠はこのようなエンタメ系にも通じているという外向けのアピールにもなるのではないか。

「それはここを作った目的が理由よ。」

「目的?」

「そう、特別な目的。」

一体どのような目的なのだろうか。こことマンションが繋がっているということも絡んでいるに違いない。

「弥のためよ。」

「は?」

答えになっていない解答がやって来た。

「このテーマパークがここに出来て今年で何年になるか分かる?」

まだ理解出来ていない弥にみづきは聞く。

「確か…20年くらいか。」

「そう。正確には17年になる。この数字が何を意味するか分かる?」

17年。そして先程の俺の為という解答。

「もしかして…」

弥はひとつの答えに辿り着いた。

「そう。このテーマパークはあなたの出産祝いなの。」

「はぁ!?」

分かってはいたが弥は大きなリアクションをとる。

「弥が、念願の長男が産まれるということで弥のお父様、久遠宗介様は大変喜びなさって急いでアメリカに飛んで根回しをして作られたのがこのテーマパークなの。」

とんでもないカミングアウトだ。

まさかここが妻の妊娠にテンションの上がった男が作ったものだとは思いもしなかった。てか、根回しって言ったな。どんだけ息子を喜ばせたかったんだよ。

「でもそれじゃあ秘密にする理由が無いんじゃないか?息子のために作りましたって言わなければいいし、それに仮に言ったとしても大きな問題にはならないんじゃないか?」

アラブの石油王も息子のために電車を作ったという話がある。別にテーマパークを作ったことで問題が起きているという訳では無いしなんなら人を集めて活気づけている。

「秘密にするっていうのは世間に対して秘密にするっていう事じゃなくて弥に対して秘密にするっていうのが目的だったの。」

「?」

弥は首を傾げる。

「あなたがお腹の中にいるって分かった時に急いで作ったものだから完成したとは言い難い出来だったらしいの。そんなものを出産祝いと言うのは宗介様の信念が許さなかったらしいの。だから完成だと完璧に言うことができるまで黙って置きたかったらしいの。」

「それが今の今までと。」

「えぇ。」

「ちなみにこの通路は?」

「弥をびっくりさせるために作られたものよ。」

「はぁ…。」

いつもはあんなにも威厳のある父がこんなことを考えていたとは。なんだかガッカリしたようなそんななんとも言えない気持ちとなる。

「それで…、そのテーマパークを今見せても良かったのか?」

「えぇ。昨日許可を取りに行ったら、あぁすっかり忘れてたよ、って言っていたから問題ないわ。」

何だか悲しくなった。あれだけ熱心に取り組んでいたものを忘れたとは。まるで自分に興味がなくなったかのようでいたたまれない。

「それでここからどうするんだ?まさかここで暮らすのか?」

「まさか。ここからまた移動して別のところに移るわ。ここはあくまで中間地点。」

そう言ってみづきはついて来てと言い園内をぶらつく。その後ろを黙ってついていくとやがて関係者以外立ち入り禁止の文字が書いてある扉にたどり着く。もちろんみづきと弥は関係者なので平気で入っていく。

中は薄暗い洞窟をイメージされたものらしくランプが点々と中を照らす。きっと何かのアトラクションにする予定だったのだろう。そうでも無ければ関係者以外立ち入り禁止の場所がこんなにも整備される訳が無い。

そう思いながら石造りの階段を降りて深く深くへと歩いていく。

そうして数分ほど歩いていくとやがてぼんやりとした光が目的の場所らしきものを照らし、その正体に弥はため息をついた。

「一応聞くがこれは?」

「レッツゴーホームというジェットコースター式のアトラクションよ。」

「ほんとなんなんだよ…。」

弥は再びため息をついた。

トロッコをイメージしたようなカート、そしてその横に何故か身長制限のパネルが置いてある。

「弥は150センチある?」

「あるわ!!」

弥は叫んだ。みづきよりも大きい時点で明白で寧ろみづきの方が心配になる高さだ。

念の為と言われてパネルの横に立たされるがもちろんパネルの高さを弥はゆうに超えており、みづきは数センチほど高いくらいだ。

「…、子供はこんな風にあっという間に大きくなっていくのね。」

そんなまるで思春期の子供を持った母親のようなことを言ってみづきはカートの先頭に乗る。

弥もカートに乗るが中間辺りを選択した。

それを見たみづきはカートを降りて弥に詰め寄る。

「怖いの?」

「別に絶叫系が怖いんじゃない。このジェットコースターの安全性に不安があるだけだ。」

「言い訳は男を下げるわよ。」

そう言ってみづきは弥の隣に座る。

「勝手に言っとけ。」

弥は安全バーを下げながらそう答えた。

しかしながらどのようなアトラクションなのだろうか。

地下に作られたものであるので普通のジェットコースターのような大きな坂というのは無いだろうし景色を楽しませるということも出来ないだろう。

となると速さがウリのアトラクションか?

それなら大丈夫だが。

「それじゃあ出発させるわよ。」

リリーはいつの間にか持っていたボタンをポチッと押す。

すると機械の動く音が聞こえて数秒後…

ガチャンッ!

という音と共にトロッコの下の地面が消えた。

もちろんトロッコは落ちていくわけで…

「ウア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

突然の落下に弥は両手を挙げて発狂する。

みづきはと言うと無表情をキープしたままである。

しばらく落下するとだんだんと落下スピードがゆっくりになっていきやがて止まった。

弥は大きく息を吸い込みこぼれ出した涙を拭く。

奇を衒いすぎだろ。おじいちゃんおばあちゃんが乗ったら死ぬぞ。

弥は何とか息を整える。

しかし

ガチャンッ!

再びあの音が聞こえた。弥は再び来るであろう落下に備えて歯を食いしばる。これ以上見苦しい姿を見せる訳には行かない。

しかしながらコースターは弥の予想に反して後ろへと急スピードで進んでいく。

予想外の動きに弥は目を見開くが何とか声を出さないようにする。

一方みづきはというと相変わらずの無表情である。感情を捨てたのか?

そんなことを思っていると今度はコースターが急激な坂に差し掛かったようでコースターが大きく傾く。

弥は両手の拳を強く握りしめて声を堪える。

みづきはというと…言わずもがなである。

そんな弥にとっては辛い時間がしばらく続きやがてコースターが減速し始める。

弥は後ろを見ようとするが先程のこともあるので警戒態勢のままで待機する。

しかしながら今度は良い意味で弥の予想に反してコースターは停止して弥の横には発着場が確認できた。

弥は全身の力を解放して背もたれに全身を預ける。

やがて安全バーが解除されてようやく弥たちは自由の身になる。

弥は自分よりも後に乗ったみづきが降りるのを待つがみづきは硬直したままで動こうとしない。

「みづき。お前が降りないと俺も降りられないんだけど。」

弥がそう言うとみづきはゆっくりと弥の方に首を向ける。

「ごめんなさい。腰が抜けて動けないの。」

みづきの人間らしいところが垣間見えた弥であった。

さて弥はみづきに肩を貸しながらみづきの案内で地上へと向かう。みづきは全身を弥に預けてやけに密着してくるのだが今までに比べたらジャブ程度なのであまり気にはならない。それに何と言うか…固い。

しばらく歩くとエレベーターが見えてきてその頃にはみづきは1人で歩けるようになっていた。

エレベーターにはレバーがつけられておりそのレバーを引くと上へと進む。

やがてエレベーターはチンッと鳴り、止まる。

そして鉄扉が開いて見えたのは……

今までのマンションと同じような部屋だった。

同じようなでは無い。全く同じだ。

「ここが新しい家よ。」

「今までと同じなんだな。」

「えぇ、急に生活様式が変わるのは良くないから。荷物等ももう運び込まれてあそこと同じになっているはずよ。」

そう言ってみづきはエレベーターから降りて自室へと向かう。

弥は念の為に家中をくまなく調べる。するとある大きな違いを発見した。

弥は急いでみづきを呼ぶ。

「どうしたの?」

「玄関はどこ行った?」

この家には玄関が無かった。

「玄関は使わないわ。これからはこのエレベーターが玄関になるから。」

そう言ってみづきは説明し始めた。

ここは完全にカモフラージュされた家らしくみづき曰く家らしい姿をしていないらしい。そのため玄関なんて付けると簡単にバレてしまうし侵入されやすくなる。

そのためこれからはこのエレベーターと地下にあるモーターカーを使用して街中のあちこちに設置された発着ポイントから外に出るという。

「念の為に聞くがモーターカーっていうのはあの乱高下の激しい奴か?」

「いいえ。安心安全よ。」

その言葉を聞いて弥はホッとした。出かける度に発狂しないで済むのか。

様々なことに安心して心にゆとりを持ちある事に気づいて時計を見る。

時計の針は10時を過ぎたあたりを刺している。完全な遅刻だ。仕方なく学校側に連絡しようとするともう済ませてあるようでみづきは疲れで眠ってしまった。

弥もこのハードな引っ越しに心身ともにやられてしまい休憩を取る事にした。

さて明日からどうなるのだろう。

そんな不安を押し殺しながら。


おまけ

リリーが目覚めるとそこは玄関だった。何があったのか思い出そうとするが思い出せない。状況を整理しようと立ち上がると何かが身体からずり落ちていく音がした。

一体なんだと下を見ると男もののパンツ、そして自分の衣類だった。自分の身体を見てみると生まれたままの姿になっておりそして全身が汗ばんでいる。

「くしゅん!」

くしゃみを一つ。

そしてだんだんと記憶が蘇ってきた。

玄関を飛び出すと彼のパンツが5枚もあって急いで持ち帰った。そして匂いを嗅いでその後で……。

一気に顔が熱くなった。

こんなの罠に決まっているのに私は一体!!

リリーは頭を抱える。

しかしながらリリーもプロだ。

起きてしまったのはしょうが無い。

まずは今できることをしよう。

まずはパンツを保管しよう。

いや、その前にもう一度。

このサイクルでリリーの一日は終わった。






よく分からないタイトルのよく分からない回を読んでいただきありがとうございます。

やっぱりコメディ書いてる時が一番楽しいです。

もっと長くなる予定でしたが中途半端になりそうなのでここで切りました。

次回も見ていただければ幸いです。

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