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違いますロボ


「アキトー、関わらなくてもいいんじゃない?戦って死にたい奴だっているでしょ?」


「僕の名前を使って祈り、守るとか戦うとかぬかしてるのが気に入らんわ!誰も望んでいない、僕の実態を見せて失望させたら勝手にやめるかもしれないけど。全てがマイナスからスタート過ぎる、信じてきてた奴らは皆無駄死によ!!」


「実態を知らずに祈って戦って死んでいけたのだから満足なのでは?」


「そいつらはね!僕が嫌なの!キモイキモイ赦されるわけがない・・・。何なの本当に・・・僕が悪いの!?」


「油ですじゃ・・・」


「心の傷には効かないよ!!なぁにが油ですじゃだよ馬鹿だろ・・・情けない事に本人達の前で言えないし・・・もうもう・・・」


 今僕達は村を出て常闇卿が住まうという街へ向かって歩いている、僕の領民となっている者達に自分達の意思で生きろといっても、僕の為に戦うというような頓珍漢な回答しかしない。話が通じないから僕が方針を決めたらそれに従うように伝え。そしてその方針が気に入らないものがいたら罰などないので心のままに自らの意思で好きに生きるように伝えた。


「アキト様、彼らがアキト様の意思に従わず自らの意思で戦って死ぬ場合はどうなのですか?」


「それはそいつのやりたいことだから、敢えて言うなら他の奴らの和平の邪魔になるからやってほしくはないけどね。謎の信仰も捨てて仲間だった奴らの和平の邪魔をしてまで戦って死ぬことを選ぶ奴はもう止まらんわ、大抵よそいくんじゃない?でも6世代守り続けるって・・・ひいひい・・・とにかくじいちゃんの仇と仲良くできるかみたいな事言い出したら強烈だな」


(死んだら終わりなのに・・・終わらせたくない残ったやつが戦うのはいいけど6世代後まで殺し合いを残すなよ。6世代前にこういうことあったから関わりたくないならわかるけど、わざわざ顔合わせてドツキ合う必要あるか?)


「アキト様の望む形になればよいのですが・・・」


「エフェメラルは上手くいかないって考えてるの?」


「その、申し訳ありません」


「謝る必要はないよ。妖精達が古い盟約を大切にしているようにエフェメラルは彼らの事が少しわかるわけだ?でも信仰が簡単に捨てられないとかそういう話じゃない、僕は唐突にゴリラになったりするロボなんだ。そんな奴を信じて戦うなんて馬鹿げてる」


「・・・」


 エフェメラルもありのままの僕をみているというより他の何かとしてみている印象がある。そういう意味では村人達の前で僕の実態を見せて失望させなかったのに対してエフェメラルには言えているあたり、僕は大分オープンになっているのかもしれない。彼女は聞きたくないかもしれないがこれが僕なのだから。


常闇卿(とこやみきょう)側から領土に攻撃を加えてきている以上、守るのは仕方がありません。納得するのは難しいかと」


「・・・それはあるけど、僕の領民であることに意味を見出しすぎてるんだよね、嫌なら逃げてほしいし穴倉みたいなところで変な生活して無理してないって無理があるでしょ。生きる場所を選ぶ力がないのなら僕が魔法を使わなかったから魔法を使いませんみたいなのはまじでやめてほしいわ、追いかけて攻撃されるならなんでもやるんだよ、居場所を守るためにいいわけもなく本気で戦わないといけないんだ」


 とりあえず領土の切り取りで攻撃を仕掛けてきているほうが問題なのは間違いないため、話し合いに行く。魔族領域でのルールがよくわからないが領土の取り合いが常識で強い奴に従うということなら実際しょうがない。そこを僕の力で全て捻じ曲げて納得いくまで戦うのは僕のやりたいことではないのだ。



 教えられたまま東のほうへ進む事3日ほどで大きな街についた。そこはオリアスというかつては暗黒卿の領土であった街らしい。今は常闇卿がそこで暮らしているらしく、常闇卿の領土の中心として機能している。


 エフェメラルとメイにはフード付きの外套でフードを深くかぶってもらう。魔族領域で人族に分類される者達がいれば、攻撃の対象になりかねないからだ。人族領域と比べると魔族領域では人族狩りみたいなことは行われていない、少なくとも以前僕が素の状態でうろうろしていたときはケンカはよく売られたが殴り返していると襲われなくなるのだ。統治してる国や領主が出張ってきて拘束されるようなことはなくどちらかというと個人での戦いになる。


 僕も竜頭骨を頭にかぶり変装する、おっさんから貰ったこれも大分役に立っていると思う。常闇卿の領土は夜の一族というだけあって黒を基調にしたマントや服装をした領民が多く、その種族の多くがヴァンパイア系かサキュバス系の血筋であることが窺える。アキトは種族のことについて興味がなく詳しくない為、あまりよくわからないがヴァンパイアは吸血鬼と呼ばれ他者の血を飲むのと掟を大切にする種族だということを知っている。


(サキュバスはなんかエッチなやつ)


「アキト、エッチなこと考えたでしょ?」


(エスパーかな?)


 様々な店があるなかで怪しげながらも薬屋があったのでついでに店内に入った。魔力薬を扱っているようで僕は店員に魔力瓶の補充をお願いした。女性の店員だがとんがり帽子に魔女のような装いをしているおばあさんだ。


「おや?人族領域の通貨じゃないか、珍しい物を持ち込むね」


「300年前とかは普通にやり取りしてた覚えがあるんですが、魔族領域で新しい貨幣でも出ましたか?」


「いや?物々交換か労働対価で払うことが多くなってね、領土によってかなり違いがある。常闇卿の領土では血でやり取りされることがほとんどさ・・・。血を瓶に入れてやり取りする」


「血のやり取りはちょっと無理ですね、これでお願いします」


「いいけど通貨価値としてはかなり落ちるよ?銀貨も銀片として扱うようなもんだし」


「お願いします」


 路銀で持っている物を適当に並べて魔力薬を購入する。通常価格の二倍ほどに感じたが元値がそれほどでもないため懐が痛くなるわけでもない。


「常闇卿と会うにはどうすればいいですか?」


「面談はやってないね、城から出ない御仁でね。4大魔族や魔王様としか会わないんじゃないか?」


「暗黒卿の名を騙れば会えますか?」


「ああー間違いなく会えるだろうね、ただ殺されるよ。常闇卿は暗黒卿にご執心だからね」


(・・・んん?)


「詳しく聞いても?」


「領土を拡大させているのも、元々いた奴らが弱いからではなく暗黒卿への態度みたいなもんだと思うよ。他の領土への侵攻は一度もやってないからね、300年も続けているのを見る限りこだわりがあるんだろうよ」


(なるほど・・・確かに、暗黒領の領民を見る限りズタボロだけど何故か生かされている。この街を見る限り全力で取り組めば300年も時間をかけることなく潰されているはずだ。)


「確かに戦いで拮抗しないならば普通はすぐ終わりますね、交渉とか行われていないならば」


「常闇卿から奴らに何度か打診は送ったようだけどね、無視されるか拒否が続いたらしい。どういう内容かはわからないけどそのたび常闇卿は荒れて、領土攻撃を再開したみたいだけど結局ギリギリまで追い込んでも折れないものだからそれからずっと城に籠っているようだよ」


(ギリーガタイガー族は話が通じないからな、気持ちがわかるわ・・・)


 薬師のお婆さんに礼を言って城に向かい、門番に暗黒卿が来たから常闇卿に会わせろと伝えた。門番達はすぐさま城に向かって走り、確認を終えたのち案内が城の中から出てきて僕達を先導した。城の中に入るにしてももっと手続きがあるものだと普通思うが、あまりにトントン拍子で事が進むので僕も驚きが隠せない。女性の吸血鬼が多くメイド服のようなものを着ている者達が世話しなく動き回っている。兵士も武装しているというより執事服のような出で立ちで兵とわかるのは腰に剣を吊っているからだ。


 謁見の間のような場所に案内されて扉を開けると薄暗い空間の中、地面の赤い絨毯と左右にある燭台が眼に入る。僕の左右にいるメイとエフェメラルを気にかけながら迷わず進んでいくと玉座に座っている女性が見えた。金髪に妖艶な黒い衣装の上から赤いマントを羽織っている、何処となく赤いマントは僕の火鼠の外套と似ておりお揃い感が出ている。見た目は人でいうところの20歳やそこらだがやけに色っぽく美人だ。


(胸は普通サイズだな・・・エスパーされる前に視線を外そう)


「よく来たな暗黒卿・・・。真に其方であるのならばその被り物を外して我に顔をみせよ」


 僕は竜頭骨を外して、顔を見せる。顔を見せた瞬間周囲で見張っていた常闇卿の兵達がほっと安堵の息を吐いたように感じた。目の前の常闇卿は僕の顔を見てどことなく震えている。


「本物だな・・・其方が我の元にようやく現れた。暗黒領の領民達を追い詰めても其方を一切寄越さぬ・・・ようやく我の物になりに来たか」


「チガイマス・・・和平交渉ニ来マシタ」



 常闇卿の狙いは暗黒卿である僕だった。だが僕は全く彼女を知らない。僕は知らないけど大勢の人は僕を知っているという状況に困り、僕はチガイマスロボになっていた。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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