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王都でやること

朝食を食べながら検問についての話をアキト達は続けていた。


「どのみちずさんな管理体制というか、そもそもあんなもので英雄とやらが見つかりっこないんだから王国兵も賢王教会もさっさとやめればいいのに」


「そういえば混合兵でやってる時点で連携もとれてなさそうだね」


「・・・教会がアキト様を探すのはまだわかりますが、何故王国兵も参加しているのでしょうか?」


「それそれ、数日やそこらで取り決めた物事なのに広域で参加数が多いのも意味が解らない。一応大きな力を持つ個人に対する警戒とか聞いた気がするけど、結局王都の南側だけじゃなくて囲うように検問敷いてるみたいだし」


「実はアキトを探しているんじゃなくて、他の目的があるのかな?」


メイが尻尾を動かしながらそんなことを言う。


(他の目的ってなると見当がつかないな、まあどうでもいいか)


 食事を終えてゆっくり話をした後、僕達は食堂からでて、そのまま街道沿いの村を抜けた。元々この村は宿場としての役割面が殆どで食べ物以外の消耗品の補充や必要品を扱う店などはなかった。見張りの兵などはいるが、通りを抜けていく人がほとんどで治安が悪いわけでもない。入るのも出るのも通行費など取られず簡単に外に出た。気分としては贅沢な野営という感じだった。


 その後特に大きな問題もなく、いくつかの検問と野宿をはさんで王都につくことが出来た。王都は四角い大きな壁に囲われていて、外壁だけでみると他の街より遥かに広い。外壁の外側に不法滞在者のような者達が住み着いて拡張していかないようにするためか騎兵が巡回しているようだ。王都に入るための門は広さのわりに東西南北の四か所しかない、その分防衛力はあるようで堅牢な城壁と練度の高そうな数多くの兵が配置されているように見えた。


(なんていうか港街とか貿易が盛んなところより文明が発達しなさそうだ。現にそうなんだろうけど)


 旅人として通行料を払って西門を抜ける。門をくぐる前にメイがそわそわしているのが伝わってきていた。エフェメラルは落ち着いた様子で僕の傍にいる。壁を抜けてすぐに民家や店があるわけではなく、広い敷地がとられている。王都の生活用水にいくつか治水された川が通っており景観も良い。


「凄いなアキト、あたし王都に来るの初めてだ。綺麗なところだな」


「そうだね、もっとごちゃごちゃ拡張してやりたい放題してるほうが国としては強そうだけど王都としての管理は行き届いてそうだね。やっぱり教会とかが幅を利かせてたりするのだろうか」


(外での兵の扱いは雑で管理も悪いけど王都内だけでみればしっかりしてるな、雑な感想だけど他の街よりここだけ秩序があるように感じる。)


「アキト様は王都に来るのは初めてではないのですよね?」


「エル・・・何百年ぶりとかそんな感じだっけ?全然覚えてない」


「いや・・・アキト、数十年ぶりかもしれない。ウゴゴゴ」


 メイはそんな僕達の反応に呆れているような感じだ。しばらく進んでいくと西門から出入りする人向けの店や宿などが増えていき、段々と店と民家が密集し始めてきた。門から続く舗装された道を大通とするならば、大通りから細かい道が網目のように張り巡らされ、気が付けば家々に飲み込まれたように今自分達がどこを歩いているのかわからなくなる。看板や大通りを把握しておけば問題ないのだろうが、迷子にならないように宿だけは決めておきたい。


 西門からすぐ近くの宿ではなく、少し進んだところの宿に部屋を取る。思えば街道沿いの宿場はかなり安かったのだろう、通り抜けるための村だけあって一泊で食事も簡素ではあったがお手頃な値段であった。今宿をとったところ狭い部屋に三人同室で一泊小銀貨2枚である。


「メイ、憧れの王都の宿だけど狭い部屋でこの値段の高さどう思う?」


「これだけ狭いと同じベッドで寝られるな」


(なんだこいつ・・・)


「そもそもアキト様が寝袋で寝るなど許されないことです」


「何者だよその存在は、僕が自分で自分を許しているんだよ・・・」


 ひとまず宿の部屋を確認して三人で迷子になってしまったときの集合場所が決まった。5日分の滞在費として丁度大銀貨1枚なので支払った。その後酒場に向かい、ゆっくり食事を取りながら目的の確認と情報収集をすることにした。


「まず、賢王教の神殿騎士ジークハルトについて調べる。ハルトの家が王都にあるのであれば、そこで初代ハルトの今いる場所の手がかりが得られるはずだ」


「その、初代ハルトという方はアキト様と同じ存在なのでしょうか?」


「そうだね黎明の担い手、スプリングマンだよ。僕と同格で同じことが出来ると思っていい。いや?エッチしまくりで好き勝手生きてるみたいだから僕より縛りがない分、強いかも」


「アキトには俺がいるから、アキトより強いなんてないない。ていうよりその~~マンってシリーズ物だったんだ」


「とりあえずジークハルトが王都にいるかどうかだな、問答無用でまた襲われるかもしれない」


 エフェメラルの目つきが変わったのを感じる。初代ハルトのことはともかくハルトは明確に敵認定している。エフェメラルは僕がハルトに会う前に交流があり、悪い人ではないという印象を持っていたようだが、僕が襲われたという話をしてからジークハルトに強い敵意を持つようになってしまった。


「別にエフェメラルからすれば敵ってわけじゃないから、相手が襲い掛かってこない限り攻撃的に接する必要はないからね?」


「はい、アキト様」


(わかってなさそう)


 エールを少しずつ飲みながらリンゴとサラダ、厚切りの焼いた肉を食べる。メイは話を聞きながらもどちらかというと食事に集中しているようだ。肉というと保存用の干し肉などの加工肉が多いため、生肉を焼いて出されたものは野営ではあまり食べれない。塩胡椒以外の味付けもされているため美味しく感じるのだろう。


 食事を楽しんでいたら近場のテーブルで食事をしていた女性にゴロツキのような男性が突っかかっていくのが見えた。ゴロツキは二人組で周囲で食事していた人たちは迷惑そうにして席を離れて行った。


(王都は治安がいいと思ってたけどこういうのは何処でもいるもんだな)


 女性は丁寧に断っているのだが、ゴロツキ達は退かずにからんでいく。しかし、あまり無理矢理な誘い方じゃないからか周囲の人もそれほど気にしなくなり風景に溶け込んでいる。こういう場合女性から衛兵を呼ぶそぶりやら依頼をしない限り兵もこないだろう。慣れていないのか呼ぶ気がないのかネチネチしたゴロツキ達とのやり取りが続く。僕も見るのをやめようと思った時、女性がこちらに歩いてきて助けを願い出てきた。


「旅のお方、どうか助力をお願い出来ませんか?」


「衛兵呼ぼうか?」


手を上げて衛兵を呼ぶ素振りをしたところゴロツキ達が焦ったのか足早に去っていった。


「断りたいならこういう時はさっさと衛兵なりなんなり助けを呼ばないと」


「いえ、その・・・衛兵を呼べない理由がございまして」


「はったりでもいいか───えぇ??犯罪者か何か?」


僕は面倒になって衛兵を呼ぼうか迷い、手をあげようとする。


「お待ちください、その誤解です。助けていただきありがとうございます。その、これも何かのご縁です。どうか話を聞いていただけませんか?」


「・・・」


「アキト、女の子には優しく」


(まあいいか・・・世間知らずの女性が気になってみてたのは確かだ)


僕は焼肉を夢中で食べているメイを見ながら、お悩み相談室を開いた。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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