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デーモンとの闘い


 アキトはエフェメラルとメイがついてこれるギリギリの速度で走った。二人を置いて全力で向かうことも出来るが何が起きるかわからない状態だ。守る対象は傍にいてもらったほうがいいと判断してのことだ。


「デーモンが暴れているって言ってたけど、人間を滅ぼすためにつくられたって奴ら?実際に人間を見たこともないしデーモンが襲うのもアキトだからよくわからないんだよな。一応知識としてはあるけどさ、デーモンがいるなら人間もいたみたいなのはちょっとなあ」


 デーモンについてアキトは何度も戦っているから知っているが、実際に人間に大打撃を与えるほど暴れまわったのかは今もよくわかっていない。知識としてエルと共有しているが不明な点が多いのだ。ただアキトにとっては人間を殺すというデーモンはそのまま敵である。動いていないならまだしも動き出して目の前にいるなら積極的に殺す純粋な敵だ。


 走り続けてラナンが向かって行った都市遺跡への通路を抜ける。大きな火の塊と激しい戦闘音が聞こえる、中心地には巨大なデーモンが見える。5mほどの人型の体格に牡牛の頭、背中にグリフォンのような巨大な翼がついている。


 ラナンと教会騎士達は押されているようでかなり手傷を負っている。先頭を立ってラナンが戦っているが、ダメージを与えるよりもどうにか持ち堪えているという感じだ。


「アキト、あそこの神殿騎士らしい人が持っているのはガブリエルのレプリカだね。恩を受けたのってあの人?」


「そうだよ」

エルが僕に確認をしたところで、手元に大鉈を出し勢いよく身体をひねって投擲する。投げつけた大鉈がデーモンの腕にぶつかり、激しい衝撃音が響き渡る。態勢を崩したデーモンは脅威を感じ取ったのかアキトの方向に体を向きなおす。


「アキト殿!?」


 ラナンが驚きと困惑を示してアキトに視線を向ける。大きな傷を負っていた教会騎士達が下がる機を得たことで引いていく。それを見て死者はいないようだが、かなり追い込まれていたのだとアキトは知った。


「ラナンさん、生きていてよかったです。恩を返す相手がいないと嫌な気分になりますから」


 一気にデーモンに向かって間合いを詰めて右手のエルでデーモンを斬りつける。デーモンは翼を閉じるように自身を覆い、エルの斬撃が止まる。すぐさまカウンターのようにデーモンに振り上げられた拳がアキトに向かって落ちる。それを剣を滑らせるようにエルで流しながら再び斬りつけるが大した傷を与えられない。


「アキト、忘れてないと思うけど魔力瓶が空で水刃が使えないの。この手ごたえだと他の武器使っても1年くらい寝ずに戦って倒せるくらいかな」


 デーモンの激しいラッシュをアキトが捌きながら、何度も斬りつける。傷つけたところも再生しており、アキトは呼吸を整えるために一度後ろに下がった。下がったところに丁度ラナンが隣り合うように立って構えている。


「何故、街の地下にあのような化け物が───」


「あのデーモンの名はハーゲンティ、かつて人族や魔族によって創り出された72体の内の1体ですよ」


「ハーゲンティ・・・?」


 ラナンが赤いエルを構え、炎の矢のようなものを複数出しデーモンに向かって放つ。爆炎を上げてデーモンの動きが若干鈍ったところで二人で距離を詰めて左右別れて腕に切り込む。ラナンの与える剣の傷はアキトの持つエルよりも深く、まるで灼熱のように傷口を焼きデーモンの再生を止めている。ラナンは鋭い追撃をかけるが、攻撃することに偏り過ぎており負っていた怪我もありデーモンの攻撃を受け損ねそうになった。すかさずアキトがデーモンの腕を弾いて防御する。


「すまない、アキト殿。恩に着る」


「エル、ラナンの攻撃力を合わせたとしてどのくらいかかる?」


「1月くらい続ければ・・・」


 デーモンの攻撃を受けながらアキトはラナンに下がるように伝える、何度かデーモンの攻撃からラナンを守るためにアキトが防御したからか足手まといだと感じたラナンは素直に下がった。


 アキトは左手にハルバードを出して右手のエルと組み合わせ、斬りや突きでデーモンに攻撃をしかけるが効果を感じ取れない。


「無理だな、聖水使うか」

エルの言葉を聞いてアキトはオリビアの聖水を使うことを決断した。


「うう・・・仕方ない」


「ある物は使わないと、頼めばまた作ってくれるでしょ?」


「アキトは聖水作る場面を見てなかったから言えるんだよ!オリビアがまたしてくれるかな・・・」


 下がったラナンの元にエフェメラルが駆け寄り、回復の魔法で傷を癒しているようだ。メイはその後方で巻き込まれないように待機している。アキトは聖水瓶の装填の時間をどうにか作る必要性を感じていた。だが、激しいラッシュと距離を取ろうとすると放ってくるデーモンの赤黒い槍のような魔法が邪魔をして瓶の交換が出来ないでいた。


「アキト、エフェメラルに手伝ってもらったら?少しなら隙を作れると思うよ」


 エルにこう言われて僕は心の中でやりずらさを感じていた。エフェメラルには自身の身を守ることしか望んでいないと言葉を吐いたばかりに戦闘面で彼女を頼るのは若干気まずいのだ。10分くらいかければ何処かで隙が生まれて瓶交換くらいは済ませられそうだが、ラナンの怪我の治療が終わったら再びラナンが戦闘に参加する。ラナンは筋が悪くはないが、いままで一撃で倒せるような相手ばかりだったのだろう。防御面が甘い彼女が戦闘に参加した場合、彼女のお守りをしないといけない。そうなると空き瓶交換の隙がまたなくなる可能性がある。別に一発位殴られたり魔法を食らっても死なないかもしれないが嫌なのだ。


「ううーん」


「何?アキト、もしかしてエフェメラルに頼みずらいの?なんか酷い事でも言った?」


「エルすごいな、エスパーか君は」


「エフェメラルはアキトの頼みを絶対に断らないよ、むしろ喜んで受けてくれる。

あとで反省会に付き合ってあげるから、さっさと倒そう」


アキトは覚悟を決めて助力を頼むことにした。

「エフェメラル、ちょっとの間でいいからデーモンの動きを止めてくれないか!」


「はい!!」

アキトがエフェメラルに声をかけると風圧のようなものがアキトの髪を撫でてデーモンが大きく押し込まれた。


「うわ闇の大妖精凄い!今だよアキト!!」


 もたつかないようにエルから空き瓶を取り外して聖水瓶を装填する。勢いよく聖水瓶の中身がエルに飲まれていき消えていく。


「水刃!」


 いつもより数倍青白い光を放ち、エルの光の刃が研ぎ澄まされている。デーモンを押し込んでいた力が緩んだのを見て、アキトは妖精が離れたのだと思い。光り輝くエルを両手で構えて真っすぐ斬り込む。縦に振り下ろした一撃をデーモンが防御しようと翼と腕を使って防御したが、いともたやすく斬り飛ばしてそのまま追撃でアキトは横に一閃する。デーモンの胴体が真っ二つに切断されてその場に崩れ落ちた。


「威力がありすぎる・・・・・・エル?」


「ああああきもちぃいい」


 瓶を確認するとたった二撃で中身が空になっていた。エルは我慢出来ずに使い切ってしまったのだ。水刃が消えた後も余韻が残っているのかエルは呆けたように無反応になった。聖水に興奮しているエルに話しかけるのをやめて鞘に戻し、みんなの元へ戻った。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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