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坑道の奥、つまらない奴


 木製の大きな扉が重い音をたてながら開く、中には武装した男達が集まっておりアキトに武器を向けている。


アキトが疲れたような声で一言吐き出す。

「・・・ドワーフか」


 ドワーフは手先が器用で鉱石や土を扱う魔法にたけている種族だ。耳が少し長く、全体的に恰幅がよい種族で肌の色は灰色気味だ。魔族ではなく人族側の分類をされている。後ろ手に持っていた右手のウォーピックを手元から消し、声を出す。


「僕は貴方達と争いに来たわけではありません。普段利用している坑道が毒ガス騒ぎで使えなくなったので道を探していたところ、この坑道を見つけて山脈の反対側に抜けられるか見に来ただけです」


「貴様一人か?」


 武器を持っていない年老いたドワーフが武装したドワーフ達の中から声をかけてくる。


「いえ、連れがあと一人います」


 少し思案した様子の年老いたドワーフが武装した若いドワーフ達に道を開けるように伝える。


「もう一人も連れてこい、旅人だろうがここに来る前に寄ったであろう鉱山街の話が聞きたい」


 アキトはメイを連れてくるか迷った。ドワーフ達はクロスボウを殺すための改良を加えていたのだ。情報を持ち帰る可能性がある相手を生かしておくかもわからない、ここにメイを連れてきた瞬間に二人に向かって牙をむく可能性もあるからだ。


「反対側に抜けるまで身の安全を保障してくれませんか?僕は道中のゴーレムを全て破壊してきました。今なら仲間は走って逃げることも出来ますが、ここに入ろうとした瞬間に一網打尽にされては堪りません」


「わかったいいだろう、山脈の向こう側に抜けるまで手を出さないことを誓う」


 メイを呼ぼうと思ったら、自ら僕の元まで来ていた。ただメイは特に怯える様子もなく僕を見ている。


「儂の名はミット、この山のドワーフの族長をやっている」


 年老いたドワーフがミットと名乗り、ついてくるように手を動かし誘導した。武装していたドワーフ達は下がり族長ミットに案内されるがまま中に入っていく。後ろに三名ほど武装した若いドワーフがついてきた。


 坑道の中にあったドワーフの集落は内部を切り出し、大きな空間を確保していた。壁をくり貫いて部屋のようなものがつくられておりそこに生活空間があるようだ。魔力を通すと光る魔石が居住空間にそれぞれ備え付けられており、そこから光が漏れ出している。集落内部は薄暗くもしっかりと照らされていた。


 案内されたのは族長ミットの居住空間で他の場所より広く確保されているようだ。石を切り出した椅子や机、鍛冶道具と木工用の作業台などが目につく。ミットが椅子に腰をかけて僕達にも座るように命ずる、同様に後ろからついてきたドワーフ兵がミットの横まで歩き立って待機した。


(ドワーフはエルフと同じで代謝が少なく人より老いないと聞く、食事もあまり必要ないようだ)


「さて、貴様たちはここに来る前に鉱山街に寄っているはずだ。詳しく話せ全部だ」


 族長ミットにそう言われ、鉱山街の人々が坑道の閉鎖により職で困っていること新坑道としてここが見つかり調査をすることにしたこと、犠牲者が出たことで街での対応を諦めて国に助力を求めたことを説明した。


「なるほどな、次は王国から騎士が来るわけだ」


思案しながら族長ミットが自分の顎髭を撫でている。


「鉱山街の人達と話し合うことを勧めます。争う必要はないのでは?」


「・・・いや、戦う。貴様は知らんのだろうが、我々ドワーフ族は王国の連中に追われてこの地に居ついたのだ。奴らは我々を奴隷にし、自分達の便利なように使おうとした。故に奴隷にされなかった者達がここに逃げ込みもう200年はここに住んどる。話合うというがな、また同じ事の繰り返しよ。我々が元居た土地を奪っておいて今更歩み寄るのも心情的に無理なのだ。」


 横にいたドワーフ兵たちが怒りを顔ににじませている。アキトは黙って話を聞いていた。


「危険な場所だとわからせれば、何度か繰り返せば追い返せるだろう。元々鉱山の閉鎖が原因のようだしの・・・そういえば貴様はゴーレムを破壊してここまで来たと言っていたな。どうやった?鉱山街の連中が新たな鎧でも作ったか?クックックあれは見事な鎧だった。サンプルがほしかったがな、逃げられたものだから貫く為により強い武器を作るしかなかった。今の武器を上回る鎧を用意されているならこちらも新しい対策を立てねばならん」


「貴方達がいることなど知らずに探索を行った兵が死んでいます。せめて不可侵の交渉の話合いくらいしてはどうですか?」


「何を馬鹿な、武装して不法侵入してきた相手に交渉など。これは我らにとっては種の存続のための戦争なのだ」


「鉱山街の人達はそうは思っていません」


「・・・わざわざ情報を渡すマヌケがいるか?大体旅人の貴様に何の関係がある、鉱山街の連中は食い扶持を守るために真剣で取り組み死んだ。我らにとっては戦争であって、それに比べて貴様が首を突っ込むのは遊びのようなものだろう?如何にも自分は正しい道を示してやっているみたいな面でよく吠えるわ、一番つまらんのは貴様よ」



「・・・ここに住んでいるのはドワーフだけですか?」


「当り前よ、他の種族など信用できるか」


「わかりました。もう知っていることは全て話しましたし、僕も用事がありません。山脈を抜ける通路を教えてください」


 アキトが立ち上がり、メイもそれに応じて席を立つ。族長のミットが二人の若いドワーフ兵に声をかけて道案内をさせる。ついてこいと言って怒り顔のドワーフの男が前を先導し、もう一人のドワーフ兵がアキトとメイの後ろにつく


 地理的に確かに山脈を抜けるルートに案内されているのがわかり黙ってついていく。メイは出口からの風を感じているのか、正しい道だとわかっているようだ。


 しばらく歩くと広い空間に出た。通路の穴から出ると真横に二股に別れた道があり、その先に階段がある。空間は下に3mほど掘られた広場になっており階段を使わないと行き来できないようになっているのだ。


(ここは山脈の反対側につながっている坑道から敵が来た時に迎撃するポイントになっているのだろうな)


そう思いアキトは周囲を見渡す。


「おい、ここから先は一本道だから階段を下りて自分達で出るんだな」


 怒り顔の兵士がそういってその場で止まる。後ろからついてきていた兵も降りる気はないようだ。


 アキトとメイは言われるがまま、階段を下りて広場の先の通路に行こうとするともめている声が聞こえた。怒り顔の兵士がもう一人のドワーフ兵にやめろと言っている。



「いいじゃねえか、旅人なんてよ情報を持って帰らせるほうがマヌケだろ。女のほうだけ残して殺しちまえば、獣人の女を手に入れて好き放題出来るんだ。族長だって説得できる」


「族長の誓いを破る気か!獣と同じに成り下がるぞ」


 ガコンと音がして、広場の壁からクロスボウガンを持った複数のゴーレムが現れた。下の広場に10体、出口の通路を塞ぐように2体。そして階段の上の通路に左右それぞれ4体が現れる。


「うるせな、王国の連中だってそうだろこれは戦争なんだよ」

そういってドワーフ兵は怒り顔の兵士を殴りつけてその場に倒した。


「・・・メイ、広場の端っこに盾持って避難してて」

メイは頷いてすぐに広場の端に向かい盾で身を護る。


「そうそう、女に傷がつかないようにしてくれた助かるわ、それじゃ死んでくれ」


そういってドワーフ兵が命令を下すと、ゴーレム達が一斉にアキトを攻撃し始めた。


 アキトは全力で地面を蹴って矢を全て躱す。狭い通路ならともかく、広い空間で自由に動き回れる今ならアキトにとって攻撃予測がしやすいゴーレムのクロスボウなど取るに足らなかった。一気に間合いを詰めてスレッジハンマーを手元に出して叩き壊す。


 アキトが武器を出したのを見て、何体かのゴーレムは石の剣のようなものを出し迫ってくる。どうやらクロスボウのリロードの時間稼ぎに前衛と後衛がわかれているようだった。左手に両手で扱う大鉈を出して体をひねりながらリロード中のゴーレムに投げつける。全力で投擲した大鉈はゴーレムを強く砕き、壁に縫い付ける。そのまま間合いを詰めてきた石剣ゴーレムの攻撃を避けて、体重を乗せた横ぶりで右手のスレッジハンマーを降りぬいて粉々にする。


(広い空間ならいくらでも得意武器を振り回せる・・・全員がこいつみたいなクズだったら・・・何の感情もなく殺せるんだけどな)


 次々に破壊されていくゴーレムにドワーフ兵が声を荒げる


「何やってんだ!さっさと殺せよ!!」


 矢も当たらず、剣の攻撃も容易くはねのけ破壊されていく何処から武器を出しているのかもわからないドワーフ兵は混乱気味に叫ぶだけだった。


ほとんどのゴーレムが機能停止に追い込まれて立ち尽くすドワーフ兵の口から言葉が漏れる。

「なんだってんだ・・・一体」


惨状を前に気絶から復活した怒り顔のドワーフ兵が目を疑っている。


「・・・族長は僕につまらん奴と言いましたが、そのつまらん奴程度に破壊されるようなおもちゃで戦争とか言ってるほうが馬鹿だと思いませんか?何が戦争だよ、お前たちなんてさっさと死ぬか逃げればいいんだよ」


 アキトが両手の武器を全部しまって道中拾ったクロスボウを右手に持つ。狙いは若いドワーフ兵の頭だった。逃げようとする間もなく若いドワーフ兵は頭をクロスボウで撃ち抜かれてその場に倒れる。


「・・・下らな」


 手に持ったクロスボウをその場に投げ捨て、自らの武器だけを回収しメイの手を引いて出口に向かって歩いた。



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