第七話 クマちゃん死す
剛太郎のパワーの秘密が明らかに。
第七話 クマちゃん死す
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
対抗試合のあとから、祥子は剛太郎に起きる不思議な力に気づき始めた。
祥子「あの声は何?あの光は?剛太郎君が怒ると意識なくなっちゃうのは何故?」
独り言を言いながらに校門に立つ祥子
そこへ剛太郎が到着。
剛太郎「夏目さん、遅くなった。ゴメン。明日からの合宿の打ち合わせが長引いた。」
祥子「今日、剛太郎君家にお邪魔しても良いかな。」
剛太郎「うん、いいよ。」
祥子「家には誰か居る?」
剛太郎「えっと、今日は、今日子の部活の迎えで、母さん居ないかな。父さんが一人でいるはずだよ。代休とか言ってた。」
祥子「そう。」
剛太郎「どうしたの、急に。」
祥子「うん。ちょっと気になることがあって。ついでに、明日から2日、剛太郎君居ないんでしょ。剛太郎君のかわりの話し相手に、クマちゃん一匹もらっていこうかなって思って。」
剛太郎「気になること?何かある?あ、クマちゃんはいいよ。一匹選ぼう。」
岩田家に到着。
剛太郎「ただいま。」
父達夫「おかえり。」
祥子「お邪魔します。」
父達夫「ああ、夏目さん、いらっしゃい。」
リビングに座る3人。
祥子「おとうさん、単刀直入に聞きます。剛太郎君の不思議な力は、何ですか?」
クマちゃんコップで飲んでるジュースにむせる剛太郎。
剛太郎「ゴホゴホッ、夏目さん、どうしたの急に。」
焦る剛太郎、ちょっと考え込み口を開く父達夫。
父達夫「そうですか、気づいてしまったんですね。分かりました、お答えします。」
剛太郎「いいの?父さん。」
父達夫「いずれ分かることだ。」
祥子「やっぱり、何かあるんですね。」
父達夫「はい、代々、岩田家の男子には、不思議な力が宿ってきます。能力は様々です。宿らない人もいます。わたしの場合は、相手の心を読む能力です。剛太郎は、まだ成熟してませんが、おそらく物に魂を宿らせる能力です。その物からのパワーをもらうことで怪力が出せるそういった能力だと思っています。剛太郎はクマちゃんにパワーを預けることで、クマちゃんにパワーを増幅してもらい、そのパワーを自分に取り込むことが出来るのです。わたしの分析では、そんなところだと思います。物によって増幅の幅が違います。」
祥子「やっぱり。」
剛太郎「そうなんだ、クマちゃん集めているのも、物によってパワーをためる力が違うし、パワーをうまく返してくれない時もあるし、相性じゃないのかな。」
祥子「この間も、お守りから声が聞こえて、剛太郎君がパワーアップしまたし。」
父達夫「お守りですか、しかも、祥子さんが買ってくれた。それは、多分マックス5くらいでたんじゃないですか。簡単に言うと、握力80kgの剛太郎がマックス5で、握力400kgになります。」
剛太郎「うん。世界Jrチャンピオン投げ飛ばすくらいだから。」
父達夫「剛太郎は、今は、パワーを貯めることは出来ても、自分からもらう事が出来ていないようです。クマちゃんからの叫び、祈りによって、発動しているようです。」
祥子「何故そこまでわたしに話してくれるのですか?」
父達夫「私は心が読めます。失礼とは思いましたが、夏目さん、あなたの心も読ませていただきました。それで、信用できると思ったから、話しています。」
祥子「分かりました。このことは、」
父達夫「内密に、です。」
祥子「はい。」
二階に上がった剛太郎と祥子。
祥子「どーして、最初からいわないの。」
剛太郎「だって、絶対変な人って思われるもん。」
壁紙「そうそう。変人扱いされるもんね。」
机「多分ね。」
時計「しょうがないよ。」
祥子「えっ、みんなしゃべれるの?」
タンス「みんなじゃないよ。」
腕時計「剛太郎との相性かな。」
クッション「こないだ、必死でくしゃみ我慢したもん。」
スタンドライト「剛太郎がいないとしゃべれないんだけどね。」
コップ「しゃべるの我慢するの辛かったな。」
笑顔になる祥子。
祥子「すごーい、ほんとの不思議の国じゃない。」
剛太郎「あ、持ってクマちゃんだけど、夏目さんからもらったキーホルダーぬいぐるみにしよう。こいつが一番おしゃべりだから。」
キーホルダーぬいぐるみ「そうだよ、だって、剛太郎のパワーの入れ方が、半端ないんだもん。僕ならパワー6いけるんじゃない?あ、クマリンって呼んでね。鈴ついてるから。」
祥子「クマリンは剛太郎がいなくてもしゃべれるの?」
クマリン「うん。剛太郎にパワーもらっておけば、2日は大丈夫かな。」
祥子「どうやって、パワーもらうの。」
クマリン「もう知ってるでしょ。」
祥子「あ、お守りの時と一緒か。手で触って、祈ってもらう。」
クマリン「そうそう、体が触れてれば大丈夫、祈ってもらうことで、急速充電。」
祥子「スマホみたい。」
壁時計「もう、6時半だよー。」
剛太郎「帰らないと、だね。」
祥子「みんな、また来るねー。」
クマちゃんグッズ達「またねー。」
玄関で見送る父達夫。
父達夫「夏目さん、あなたの剛太郎に対する気持ちは分かっています。どうか、剛太郎の力になってください。」
祥子「分かりました。お父さんには、嘘つけませんね。」
父達夫「はい、今日子の点数、答案用紙見なくても分かりますから。」
笑い出す二人。
剛太郎「行こう、送っていく。」
祥子「お願いします。」
クマリン「レッツゴー。」
剛太郎「あんまり、大きい声出すなよ。見つかるぞ。」
小声のクマリン「ラジャー。」
夏目家に戻った祥子。
祥子「クマリンの記憶はどこからあるの?」
クマリン「祥子にUFOキャッチャーで取ってもらったときからだよ。」
祥子「えー、じゃあ、中学3年の時からじゃん。」
クマリン「そうそう、だから、祥子の体がどんどん大人になっていくのも・・・」
祥子「えっ、見てたの?」
クマリン「見てたのって言うか、祥子が見せてたって言うか・・・。」
祥子「もうー最悪。」
クマリン「まあ、気にしないでください。」
祥子「だって、クマリンは剛太郎の分身なわけでしょ。」
クマリン「まあ、そういうことになるかな。」
祥子「剛太郎に、裸見られてるってことに・・・、いやー・・・。」
クマリン「意識は繋がってないから。」
祥子「クマリンはクマリンなわけね。」
クマリン「そゆこと。」
祥子母律子「祥子、お風呂入っていいわよ。」
祥子「はーい。」
祥子「クマリンは、ここに居てね。」
クマリン「えー連れてかないの。」
祥子「待ってなさい。」
クマリン「ラジャー。」
翌々日、今日は合宿から剛太郎が帰ってくる日。
日曜日、剛太郎を駅まで出迎えに行く祥子。
祥子「クマリン、何時のだっけ?」
クマリン「12時の電車だよ。」
祥子「今、11時か、早すぎたな。ちょっと駅前のショップにクマちゃん見に行くかな。」
クマリン「祥子ちゃん、あと、30分くらいしか充電持たないから、そのおつもりで。」
祥子「そうなの?」
クマリン「うん、でも、12時に剛太郎に触ってもらったら、また復活するから。」
祥子「じゃ、ショップに行こう。」
祥子ショップに移動、11時半をまわる。
祥子「あ、いかなきゃ。クマリン、クマリン。」
クマリン「もう・・切れる・・よ。」
祥子「急ごう。」
ショップの出口で、不良二人にぶつかってしまう祥子。
祥子「すみません。」
不良1「おい、ぶつかっといて、そりゃないだろ。」
不良2「お、べっぴんさんだね、お兄さん達とドライブいかない。」
祥子「放して、放してください。」
周りの人々も見て見ぬふり。
不良1「いいじゃん。行こうよ。」
不良2「車回してくるか。」
祥子「クマリン、助けて。」
不良1「クマリン?なんじゃそら。おい、早く車取ってこい。」
不良2「おう、わかった。」
不良2が車を取りに行く。
不良1「ちょっとまってろ。」
祥子「クマリーーーーン。」
クマリン「・・しょ・う・こ。わ・かっ・・た・・。ラ・ス・ト・ボーーーーム。」
クマリンが閃光に包まれる。
不良1「なんだ、今の光は。」
12時、駅に剛太郎到着。
剛太郎「ふあ。着いた、着いた。」
クマリンからのラストボムが届く。
クマリン「祥子、危険、すぐ来い。助けろ。ラスト・・・・ボム。」
仁王剛太郎降臨。クマリンからパワー6発動。
覚醒剛太郎「あっちか。」
不良2「車持ってきたぜ。」
不良1「おい、乗れ。」
車の後部座席に投げられる祥子。
その光景を見て、周りの人々も、110番する。
不良1は、助手席に乗り込む。
不良1「急げ、出せ。」
不良2「おう。」
アクセルをふかす不良2。
不良1「全然進まねえじゃねえか。」
不良2「おかしい。」
運転席から、降りる不良2。
そこには、車の後輪を手で持ち上げている剛太郎。
不良2「何だ、お前。」
殴りかかろうとするが、ショルダータックルで吹っ飛ばされる。
不良1が降りてくる。
「てめー。」
殴りかかるが、胸ぐら掴まれ持ち上げられる。
剛太郎「失せろ。」
車のボンネットにワンハンドチョークスラム(のど輪落とし)。
そこへ、警察登場。無事、不良二人逮捕される。
車から降り、泣きながら剛太郎に抱きつく祥子。
祥子「怖かったー、えーん。」
剛太郎「大丈夫。」
事情聴取も、目撃者多数のため、すぐに終わり解放される二人。
剛太郎「クマリンが呼んでくれた。」
祥子「あ、。クマリン、クマリン。」
クマリン「剛太郎に触れたんで、話せるよ。」
祥子「良かった。」
クマリン「でも、さっき、ラストボム使ったから、お別れだね。」
祥子「えっ、ラストボムって・・・。」
下を向く剛太郎。
クマリン「最後の力を振り絞っても、剛太郎にテレパス届きそうになかったから、ラストボム使った。ラストボム使って、自分の命を削れば、剛太郎にテレパスできそうだったから。」
祥子「え、クマリン、クマリン死んじゃうの?」
泣き出す祥子。
クマリン「うん。ちょっとの間お別れだよ。もっと、話したかったな。せっかく、祥子とおしゃべり出来るようになったのに。中学校の時に出会って、ずっと祥子の成長をみてきた。はじめの頃は、お出かけの時は、いつも一緒だったね。南ちゃんとずっと遊んでたよね。ストラップが切れたとき、お母さんに直してもらったよね。鈴が壊れたときもお母さんに頼んで、お店で鈴取り替えてもらったりしてくれたね。高校に入って、一緒のお出かけは、少なくなったけど、いつも机の上に置いてくれたね。ありがとう。一緒にお勉強してるみたいで楽しかったよ。汚れてきたら、お風呂や洗面所で洗って綺麗にしてくれてありがとう。剛太郎にあえて、しゃべれるようになって、剛太郎から祥子、祥子から剛太郎の話を聞くのがとっても楽しかったよ。」
祥子「クマリン、クマリン。死んじゃやだ。」
クマリン「そろそろ、お別れだね。ありがとう。あー、とっても楽しかった・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バイバイ・・・。」
祥子「クマリン、クマリン、クマリーーーーーーーーーン。」
クマリンを抱きしめ、泣き続ける祥子。
剛太郎「・・・行こうか。」
祥子「・・・うん。ありがとう。クマリン、剛太郎のところに預けてていい?」
剛太郎「いいの?」
祥子「うん、また、返してもらうと思うけど、見てると辛くなるから。」
剛太郎「わかった。」
それぞれの家に帰っていく二人。
祥子の悲しみは一晩消えなかった。
翌朝、元気のない祥子。
後ろから剛太郎が挨拶。
剛太郎「お早う。夏目さん。」
祥子「剛太郎君、お早う。」
剛太郎「元気ないね、大丈夫?」
祥子「大丈夫なわけ無いじゃない。昨日のこと忘れたの?」
剛太郎「えっ、ライン見てないの?」
祥子「ライン?」
スマホを取り出し、ラインを見る祥子。
ラインの言葉「夏目さん、クマリン、剛太郎パワー再注入したら、復活できたよ。明日、学校に持って行くね。」
剛太郎「今既読だね。」
祥子「えっ、じゃあ。」
クマリン「ばぁ!」
祥子「クマリン!えっ復活できたの?じゃ何だったの。あのラスト何とかって。」
クマリン「ラストボムだよ。いやー、ラストボムなんて初めて使ったから、どうなるか分かんなくて。使ったクマが今までいないし、剛太郎も使われたことないって言うし、クマちゃん界の噂で、使ったら死ぬって言われてたし、でも、復活できたみたい。ニコッ。」
祥子「ニコッて、どんだけあたしが昨日悲しんだと思ってんのよ。噂って何?剛太郎君もそんな重大なことは、ラインじゃなくて電話して、デンワ!」
クマリン「剛太郎、祥子かなり怒ってるね。」
剛太郎「うん。あんまり、波風立てない方が良さそうだ。」
祥子「でも、死を覚悟して、剛太郎を呼んでくれたことには変わりないし、クマリン、ありがとう。
クマリン「うん。お礼は一緒にお風呂で良いぞ。」
祥子「それは、駄目。」
クマリン「剛太郎も一緒に入りたいよね?」
赤くなる剛太郎。
剛太郎「えっ、こっちに振るなよ。」
祥子「何か、言った?」
クマリン・剛太郎「いえ、何も。」
祥子「とりあえず、おかえり、クマリン。」
クマリン「ただいま。」
第八話に続く。
第八話に続く。第八話は、祥子の父登場です。第八話も書きます。評価をお願いクマリン。