第六十七話 剛太郎の大相撲
剛太郎相撲部屋へ行き、相撲を取る。相撲の神様、マモリン・リキリンのいたずらの結果・・・。
第六十七話 剛太郎の大相撲
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
祥子の家、一郎をある男が尋ねて来ていた。
男「体格は?」
一郎「184の135だ。」
男「もう幕下か?」
一郎「いや、もう十両だ。」
男「確かに。」
一郎の元を尋ねて来ていたのは、一郎の高校時代の同級生、ある相撲部屋の後援会長の内田。食品会社の社長をしていた。デカイ男が好きな社長。オリンピック強化選手も社員登用する程の、スポーツ好きな男。
内田「部屋に一度連れて来いよ。」
一郎「ああ、声をかけてみるよ。ただ、本人は警察官志望だからな、入らないと思うぞ。」
内田「ああ、最初から入る気のヤツは少ないから大丈夫だ、俺自体が彼に興味があるしな。祥子ちゃんの同級生か、彼氏か?」
一郎「ほぼ、彼氏かな。」
そこへ話を割って入る祥子。
祥子「ちょっと、ちょっと、内田のおじさん、剛太郎君は彼氏じゃないからね、クラスメート。」
一郎「まだ、クラスメート。」
内田「ほう、もう少ししたら彼氏。」
一郎「いや、そこを飛ばして結婚。」
内田「そこまで考えているのか?」
一郎「剛太郎君と毎日相撲が取れる。」
内田「強いのか?」
一郎「学生横綱の和馬を覚えているか?」
内田「ああ、学生横綱取って亡くなった、一郎の大学の同級生だろ。」
一郎「生き写しだ。」
内田「ますます会いたいな。」
一方、剛太郎宅
剛太郎「ハックション!」
マモリン「体の割に可愛いくしゃみの剛太郎。」
リキリン「だな。」
剛太郎「誰か噂してるな。」
マモリン「祥子ちゃんだな。」
リキリン「加奈子ちゃんかも。」
顔が赤い剛太郎「えっ。」
マモリン「剛太郎は正直だ。」
リキリン「ウブだな。」
剛太郎「祥子ちゃんのような気がする。」
マモリン「お、テレパスか?」
リキリン「いや、予感だろう。」
ピキーン!
テレパスクマリン「コチラ、クマリン、コチラクマリン。」
マモリン「やっぱり。」
クマリン「今度、剛太郎は相撲部屋に連れて行かれるらしいぞ。マモリン、リキリン、相撲部屋、良かったね。テレパス終了。」
ピキーン!
マモリン「何ーーーー!」
リキリン「相撲部屋!」
剛太郎「相撲部屋?また何で?」
マモリン「剛太郎、いつ、いつ?」
リキリン「マモリン、剛太郎に聞いても分からないよ、クマリンにショートテレパス!ふんふんふん、今週の土曜日、ふんふんふん。」
マモリン「部屋は?どこ?」
リキリン「方田川部屋!」
マモリン「こないだ優勝した玉ノ海の部屋じゃん!」
リキリン、マモリン「うおーーー!」
剛太郎「2人とも凄い興奮してるな。まあ、マモリンは建御雷、リキリンは天手力男、2人とも相撲の神様だからね。」
マモリン「気合い入れていこう。」
リキリン「ふんふんふん!」
剛太郎「あらあら。」
そして、土曜日当日、方田川部屋の稽古場を訪れた、剛太郎一行。内田、一郎、祥子、そして剛太郎の4人である。
方田川親方、玉ノ海が、内田の元へ挨拶に来る。
方田川「内田会長、先日は応援ありがとうございます。」
内田「いやいや、先場所の玉ノ海の初優勝、これほど嬉しいことはないよ。」
方田川「はい、ありがとうございます。」
玉ノ海「ごっつぁんです。」
方田川「さて、今日は見学ですか?」
一郎「初めまして、県議会議員の夏目一郎です。本日は見学にまいりました。娘と将来の息子を連れて来ました。」
祥子「将来の息子!」
剛太郎の顔がポッ!
祥子「ちょっと、ちょっと、お父さん!」
一郎「娘と娘の同級生です。」
祥子「失礼します。」
剛太郎「見学させて頂きます。」
方田川親方の目が光る。
方田川「剛太郎君、大きいな、身長体重は?相撲に興味はある?」
内田「いきなりだな。」
方田川「すみません、ただ、既に体格が十両いや、幕内と言っても良いくらい、うちの玉ノ海とほぼ同体格ですよ。その耳は、柔道か。」
剛太郎「はい、一高の柔道部です。」
方田川「一高!文武両道だな。ますます楽しみ。」
内田「だから、連れて来た。」
方田川「稽古が終わって、今からちゃんこです、皆さんも食べて行ってください。」
祥子「はい、お相撲部屋のちゃんこ鍋楽しみです。」
一郎「本場、本物の味。」
方田川「その前に、ちょっと、剛太郎君、良ければ一番取ってみないか?相手はそうだな、三段目の玉ノ波と取ってみようか。」
玉ノ波「はい!」
剛太郎「土俵に上がっていいんですか?」
方田川「ああ、君もそのつもりだったんじゃないか?」
剛太郎「ええ、やってみたい気持ちはあります。」
内田「お、楽しみだ。」
一郎「剛太郎君、胸を借りなさい。」
剛太郎「はい!」
方田川「じゃ、剛太郎君、向こうでマワシを締めようか。波、用意して。」
準備が終わり、土俵に入ってくる剛太郎。
方田川「ソップ型、既に出来上がってるな。」
内田「オーラすら感じる。」
一郎「様になっている。」
祥子「頑張ってねー。」
祥子の元に駆け寄ってくる剛太郎。
剛太郎「あ、マモリンとリキリンを祥子ちゃんお願い。」
祥子「OK。」
お守りを2つ(マモリンとリキリン)渡す剛太郎。
方田川「準備運動はいいかな、さあ、一番取ってみよう。」
さて、剛太郎と三段目玉ノ波との一番。
本場所さながらに塩を振り土俵に入る2人。
行司は玉ノ海。
玉ノ海「さあ、見合って、ハッキヨイ、ノコッタ!」
勢いよくぶつかる剛太郎、食い止めた玉ノ波。
剛太郎「ぉぉおおお!」
剛太郎ハズ押し、左刺し、右からのおっつけ。
玉ノ波、右上手、左をなんとかこじ入れようと必死。
さぁさぁさぁさぁ、一歩も譲らない2人。
玉ノ波「おりゃー!」
玉ノ波が右からの上手投げを打つ。
剛太郎「うぐっ!」
必死です堪える剛太郎。
逆に切り返し、足を中に入れ、柔道の内股で跳ねあげる剛太郎。
剛太郎「おるぁーーー!」
玉ノ波「く、ぐおおーー!」
どどーーーん!
堪えきれず、投げられてしまう玉ノ波。
興奮して、既に立ち上がっている、観客席の内田と一郎。
剛太郎が玉ノ波に手を差し伸べる。
苦笑いしながらも手を取る玉ノ波。
剛太郎「柔道で投げてしまいました、すみません。」
玉ノ波「いえ、あれは相撲では掛投げというれっきとした技です、強いですね。」
方田川「勝負は時の運、2人ともよく頑張った。ちなみに2人は同い年だ。」
剛太郎「そうなんですね。胸を貸して頂きありがとうございます。」
玉ノ波「いえ、こちらこそ、こんなところでくすぶってはいられないと火が着いた感じです。こちらこそありがとうございます。」
一方の観客席。
内田「いい感じだ。」
一郎「彼のために呼んだのか?」
内田「それもあるな、それにしても剛太郎君は凄いな。」
方田川「ちょっと、私と組んでくれないか?」
剛太郎「えっ、は、はい。」
ガップリ組んでみる方田川親方。
方田川「なるほど、このかいな力、確かに、強い訳だ。」
組み解く方田川親方。
方田川「玉ノ海、一番取るか?」
玉ノ海「多分、言われると思っていました。」
祥子「え?大相撲優勝力士と?」
内田「さすがに力が違うだろ、剛太郎君ぜひ関取の胸を借りなさい。」
一郎「またとない機会だぞ、全力で当たっていきなさい。」
剛太郎「いいんですか?」
方田川「君にはなにか、不思議な力を感じるね。守られている。そんな感じだが。ぜひ、記念に玉ノ海と一番取ってみようか。かなわないと思うが、ぶつかってみろ。」
剛太郎「はい、ご配慮ありがとうございます。」
さて、祥子の手の中。
マモリン「リキリン大丈夫?」
リキリン「ヤバい。」
マモリン「やっぱり!」
リキリン「もう、駄目、出そう。」
マモリン「出よう!」
リキリン「おう!」
祥子の手の中で青白く光るお守り2つ。
祥子「あ、マモリン、リキリン、大人しくしてて。」
マモリン、リキリン「むーーりー〜!」
ちゅどーーーーん!
マモリン「建御雷降臨!」リキリン「天手力男降臨!」
祥子「2人とも、どうしたの?」
マモリン「戦いの衝動か、抑えらない、剛太郎へ飛ばして!」
リキリン「加奈子ちゃんじゃなくても祥子ちゃんでも飛ばせるはずだから、飛ばして!」
祥子「ええ、ええ、何で?」
マモリン「相撲の神様は相撲が好きなの。」
リキリン「取りたくなるの!」
祥子「分かったわ、じゃ飛ばすね、えーーーい!」
マモリン、リキリン「よっしゃー!!!」
さぁ、土俵上、既に見合っている剛太郎と玉の海。
方田川「さぁ、ハッキヨイ、ノコッタ!」
さぁ、立ち会い、胸を貸す玉ノ海、ハズ押し、右から絞りあげる剛太郎、さすがにビクともしない。
玉ノ海「さぁ、剛太郎君、思い切り来なさい!」
剛太郎「はい!」
そこへ祥子の祈りが到着。
マモリン「さあ、一番取ろう!クマパワー5!」
リキリン「いくぞーーー!クマパワー5!」
剛太郎「はううーー!」
玉ノ海「ん?どうした、剛太郎君。」
剛太郎の目の色が変わる
剛太郎「ぉぉおおおーー!」
剛太郎の一気の電車道!
さて、観客席。
内田「おいおい、嘘だろ。」
一郎「何だ、あの力は!」
祥子「剛太郎君、頑張ってー!」
さて、土俵上。
玉ノ海が徳俵に足がかかる。
玉ノ海たまらず、右からの上手投げ。
玉ノ海「おりゃりゃーー!」
ビクともしない剛太郎。
それでも上手く体を入れ替えた玉ノ海。
今度は、剛太郎を一気の電車道で押し出す。
ズルズル滑る剛太郎、俵に足がかかる。
観客席。
内田「堪えろーー!」
土俵上。
咄嗟に右からの出し投げを打つ剛太郎。
剛太郎「ぉぉおおお!」
たまらず右を刺し返す、玉ノ海。
そこから体を浴びせていく玉ノ海。
観客席。
一郎「今だ、うっちゃれーー!」
土俵上。
剛太郎「おおお、おりゃーーー!」
玉ノ海「ぐおおぉぉおおお!」
どどーん!土俵上、立っているのは、なんと、剛太郎!
剛太郎「あれ?あれ?また、やらかした?」
方田川「剛太郎ーーー!」
剛太郎の勝ち名乗りをあげる方田川親方。
一同唖然、なんと、大相撲力士、しかも、優勝力士を投げ飛ばしてしまった剛太郎。
内田と一郎が拍手で、先ほどの相撲の一番をたたえる。
内田「やっぱり、生で見る大相撲は良い!」
一郎「凄い、力の入る一番だった。二人の力士の健闘に拍手。」
祥子「あのー、剛太郎君、高校生ですけど。」
内田・一郎「そうだった!」
第68話に続く。
数年ぶりに復活させました。書きたい気持ちが湧き出る時に書きます。長々と休止しておりました。