第六十六話 「友情パワー発動!」
アニマルパワーを移動?友情パワーとは?
第六十六話 「友情パワー発動!」
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
一高のグラウンド。野球部が練習していた。そこへ、柔道の練習を終えた剛太郎がグラウンドへ立ち寄った。剛太郎が、野球部の一人に声をかけた。
剛太郎「よう、仲!」
仲「ああ、剛太郎か。何か用か?」
剛太郎「さっき、校門のところで、勇二君居たよ。待っているみたいだったよ。」
仲「え?勇二が?分かった、なんだろ。」
剛太郎「急用じゃないのかな?早く行ってやった方がいいよ。」
仲「ああ、もう片付け終わるから、すぐに行くよ。」
剛太郎「僕が、先に行っとくよ。僕も気になるから。」
仲「ああ、すまないな。」
剛太郎は、仲と別れ、校門へと向かった。
校門に一人、うなだれている勇二が居た。勇二は小学校6年生の男の子。
そこへ、剛太郎が駆け寄ってくる。
剛太郎「勇二君!」
勇二「あ、剛太郎兄ちゃん。」
剛太郎と仲は、父親同士も同級生、家族ぐるみの関係だった。
剛太郎「勇二君、どうしたの?お兄ちゃんに、急用?」
勇二「急用、、、じゃないけど。。。」
下を向く勇二に、ピンときた剛太郎。
剛太郎「何か、困ったこと出来た?」
ハッとする勇二。
勇二「お兄ちゃんは?」
剛太郎「うん、もうすぐ来るよ。」
勇二「うん、じゃあ、待ってる。」
気になる剛太郎が、声をかける。
剛太郎「僕が聞いたら駄目?」
勇二「えっ、剛太郎兄ちゃんに?」
剛太郎「うん、僕にとっても、勇二君は弟みたいなもんだからね。」
勇二「・・・。」
剛太郎「ほら、うちは、妹だから。男兄弟ほしかったからね。」
勇二「剛太郎兄ちゃん・・・。」
剛太郎「好きな女の子でも出来たかな?」
勇二「そんなんじゃないよ!」
剛太郎「じゃあ、どうしたの?」
勇二「健一兄ちゃんには、絶対言わないでね。」
剛太郎「うん、大丈夫。」
勇二「じゃあ、話すね。健一兄ちゃん、野球部でしょ。」
剛太郎「ああ、そうだよ。練習頑張っているよ。」
勇二「でも、レギュラーじゃないよね、3年生なのに。」
剛太郎「レギュラーじゃないけど、頑張っているよ。」
勇二「代打でしか見たことない。」
剛太郎「健一は、自分で守備があんまり上手くないって言っていたな。」
勇二「じゃあ、絶対レギュラーになれないじゃん。」
剛太郎「でも、ここぞって時の代打の切り札らしいぞ。」
勇二「代打の切り札?」
剛太郎「そう、チャンスの時に一発を期待されているよ。」
勇二「でも、レギュラーじゃない。」
剛太郎「スポーツには、役割があるんだよ。特に球技はね。」
勇二「役割?」
剛太郎「うん、野球やサッカーは特に。」
勇二「ピッチャーとかフォワードとかが良い。」
剛太郎「そこは、花形だね。でも、ゴールキーパーが下手だったら?」
勇二「点取られるね。」
剛太郎「バッター打てなかったら?」
勇二「勝てないね。」
剛太郎「そう。だから、役割がある。投げる人、打つ人、守る人。」
勇二「じゃあ、健一兄ちゃんは、打つ人?」
剛太郎「そう。チャンスの時に、どうしても打ってほしいからベンチに居る人。」
勇二「秘密兵器!」
剛太郎「お!まさにそうだよ。秘密兵器!」
勇二の表情に明るさが戻っていた。そこへ、健一が走ってきた。
健一「勇二、どうした?」
勇二「ううん、近くで遊んでいたから。兄ちゃんと帰ろうと思って、待ってた。」
健一「そうか、ビックリしたぞ。剛太郎が呼びに来るから。剛太郎、ありがとうな。」
剛太郎「いやいや、勇二君と久しぶりに話せて、僕も楽しかったよ。」
健一「そうか。」
剛太郎「うちは、妹だから。男の話が出来て良かったよ。」
剛太郎が、勇二にアイコンタクトしていた。
健一「男の話?」
勇二「うん。男の話。秘密兵器!」
健一「何か、おもちゃか?ゲームの話か?」
剛太郎「秘密兵器は、凄いって話。」
勇二「うん、凄いから、秘密なの。」
健一「まあ、よく分からんが、帰るか。」
剛太郎「うん、僕も途中まで一緒に帰るよ。」
三人は、仲良く、帰路についた。
翌週、野球部の練習試合が組まれていた。相手は強豪の青葉学園。甲子園常連校である。野球部でのミーティングが終わり、監督に呼ばれる健一。
監督「仲、スタメンは、2年の千葉を使う。でも、いつでもいける用意はしておけよ。」
仲「はい、分かりました。」
仲は監督に一礼し、部室へ向かった。
部室の前で、2年生の千葉に声をかけられる健一。
千葉「仲先輩!」
健一「どうした、千葉。」
千葉「すみません。」
健一「どうして謝るんだ?レギュラーの事か?気にするな、おまえの方が守備上手いからな。俺が監督でも、お前を使うぞ。」
千葉「でも、打撃は仲先輩の方が断然上です。」
健一「だから、俺は代打に回されているんだよ。ここぞって時の代打。」
千葉「確かに、春の大会のサヨナラヒットは、見事でしたね。」
健一「だろ。だから、気にするな。そんなこと気にする暇があったら、打力でも俺を超えろよ。」
千葉「先輩・・・。」
健一「先輩の役割は、後輩の能力を伸ばすのも一つ。そして、自分も追い越されないようにするのも必要。だから、全然気にしなくていいぞ。」
千葉「仲先輩、有り難うございます。」
健一「千葉、エラーしたら、交代くるぞ。ゆっくり、ゆっくり、丁寧にいけよ。」
千葉「はい、アドバイス、有り難うございます。」
そう話すと、健一は、千葉と肩を組み部室へ入っていった。
練習を終えて、健一は部室に一人残っていた。涙ぐんでいた。そこへ、剛太郎が野球部室へ入ってきた。
剛太郎「仲、キャプテンは?」
健一「ああ、剛太郎か。高山なら帰ったぞ。」
剛太郎「そうか。」
健一「高山に用事か?」
剛太郎「次の部活会議の日程を知らせにな。うん?仲?どうかしたのか?」
涙の後が見える健一を見て、話しかける剛太郎。
健一「いや、何でもない。」
剛太郎「悩み事か?」
健一「剛太郎、剛太郎だから、話すな。」
剛太郎「ああ、何でも言ってくれ。」
健一「来週、青葉との練習試合あるだろ。」
剛太郎「ああ、あの強豪校の。」
健一「今回は、レギュラーだと思っていたら、レギュラー外された。」
剛太郎「そうか。それで・・・。」
健一「いや、レギュラー外されて泣いていたんじゃないんだ。」
剛太郎「じゃあ、何故?」
健一「勇二に・・・、合わす顔がない・・・。」
剛太郎「勇二君に?」
健一「勇二に、今度はレギュラーで出るって、啖呵切った。」
剛太郎「でも、ベンチ入りはするんだろ。」
健一「ああ、代打だな。」
剛太郎「それで、いいんじゃないか。」
健一「それが、、、勇二にレギュラー間違いないって言っていて、学校の友達も青葉を見に来るらしい。」
剛太郎「でも、見に来るのは、青葉だろ。」
健一「勇二、がっかりしないかと。」
剛太郎「多分、そこは、大丈夫。」
健一「大丈夫って・・・。」
剛太郎「逆に期待するかも。」
健一「期待?どういう事だ?」
剛太郎「さあ、帰ろう。」
野球部室を後にし、下校する二人であった。
途中、健一と別れた剛太郎。そこで、マモリンが話し出す。
マモリン「健一、素質あるかも。」
剛太郎「素質?」
リキリン「あるね。でも、マモリンの方が強く感じていたね。」
マモリン「うん。」
剛太郎「え、仲もアニマルパワー持てるって事?」
マモリン「多分。でも、引き出せるって訳じゃなくて、持てるって意味。」
剛太郎「というと?」
リキリン「剛太郎や祥子ちゃん、加奈子ちゃんは、僕らを引き出せる。」
剛太郎「だよね。」
マモリン「健一は、引き出すは出来ないけど、ナイトとプリンセスが出した力を持てるって事。」
剛太郎「なるほど。」
リキリン「元々、アニマルパワーは自分の為に使わない人が持てるんだ。」
マモリン「そう、誰かのためにって気持ちが、僕らのパワーを引き出す。」
剛太郎「仲はパワーどれくらい?」
マモリン「5だね。」
リキリン「うん、5だね。」
剛太郎「じゃあ、僕がマモリンとリキリン、2.5ずつパワー引き出せれば良いの?」
マモリン「そうもいかない。」
リキリン「プリンセスがいるんだ。ナイト、プリンセス、クマちゃんの想いが一つになったときに発動するパワー。」
剛太郎「パワー、渡せる?」
マモリン「そう、友情パワー!」
リキリン「条件が揃わないと出ないけどね。多分、剛太郎、マモリン、祥子ちゃんならいける。マモリンパワー出そうだったもんね。」
剛太郎「そうなの?マモリン。」
マモリン「うん、出せる。野球に興味があるのか、兄弟愛に反応したのか。」
リキリン「僕より、マモリンの方が共鳴する。」
剛太郎「祥子ちゃんは?」
マモリン「彼女なら大丈夫。」
リキリン「母性の塊だからね。」
剛太郎「じゃあ、練習試合、見に行こう。」
マモリン「祥子ちゃんも誘ってね。」
リキリン「クマリンが、僕がやるって言いそう。愛の神様だもん。でも今回は、マモリンの方が適任みたいね。状況知っているし。」
剛太郎「じゃあ、明日、祥子ちゃん家に行って作戦会議だ!」
マモリン・リキリン「おおーーー!」
気合いが入った。剛太郎、マモリン、リキリンであった。
祥子との側線会議を終え、青葉との練習試合に訪れた、剛太郎、祥子、クマリン、マモリン、リキリン。
剛太郎「間に合った。」
クマリン「9回裏だね。」
マモリン「健一は、ベンチか。」
リキリン「まだ、出てないみたい。」
祥子「野球って、何回まであるの?」
マモリン「9回まで。」
祥子「じゃあ、この回で終わり?」
クマリン「そうなるね。」
リキリン「ツーアウト、1、2塁。」
剛太郎「バッターは、2年の千葉君か。」
祥子「あ、ボール身体に当たったよ、あれどうなるの?」
マモリン「デッドボール、満塁だね。」
剛太郎「ツーアウト満塁、点差は9対4か。」
バックネット裏には、勇二とその友達も来ていた。
勇二の友達①「お前の兄ちゃん出ないじゃんか。」
勇二の友達②「ずっとベンチじゃん。」
勇二の友達③「レギュラーって言ってなかった?」
勇二「兄ちゃんは、秘密兵器なんだ、代打の切り札なんだ。きっとここで出てくる。」
心配そうに見守る勇二。
一方、一高ベンチでは。
監督「満塁か、次は・・・。」
そこへ、健一が監督に詰め寄る。
健一「僕を、僕を出して下さい!」
その気合いに圧倒される監督。
「ああ、分かった。代打!仲!」
監督が審判に、代打を告げた。
バックネット裏。
勇二「兄ちゃんだ!やっぱり出てきた!にいちゃーーーん!ホームランだーーーー!」
その声は、球場に響いた。
一方、剛太郎陣。
マモリン「もう、パワーがあふれ出そうだよ。」
リキリン「やっぱり。」
クマリン「マモリン、感じやすいのね。」
剛太郎「どうすればいい?」
マモリン「祥子ちゃん、祈って。剛太郎に。そして一旦、剛太郎に入ったパワーを剛太郎が健一に飛ばす。飛ばすとき、僕と剛太郎と祥子ちゃんが、健一の事を祈れば大丈夫!」
祥子「分かった。どうか、剛太郎君に力を!」
祥子が祈る。
マモリン「キター!!!エゾヒグマパワー5建御雷!」
剛太郎へパワー移動。
剛太郎「さあ、マモリン、祥子ちゃん、健一へ祈ろう!」
マモリン「いくぞー!」
祥子「健一へ、届いて!」
光のパワーが、健一へと注がれる!
バッターボックスへ向かう健一。
健一「ここで、打ちたい。力が、欲しい。」
マモリン「力を授ける!!!」
健一「な、なんだ!」
健一に光のパワーが注がれる。
マモリン「エゾヒグマパワー5発動!」
健一「こ、この力は?」
マモリン「健一!打て!」
健一「え、はい!」
バッターボックスに入る健一。ピッチャーが投げる。
マモリン「来たボールを打て!」
健一「はい!!!」
健一が打つ!カキーーーン!ボールは、場外へ消えた。満塁ホームラン。
しかしその後、9対8で一高は負けた。
バックネット裏に、健一と勇二の姿があった。
健一「負けちゃったよ。ごめんな。」
勇二「ううん、お兄ちゃんは、ちゃんと役割果たしたじゃない。」
健一「役割?」
勇二「そう、秘密兵器の役割。」
健一「秘密兵器って、こないだ話していたのは、俺のことだったのか?」
勇二「そう、一振りにかける男。レギュラーよりもそっちの方がカッコいいや。」
健一「勇二・・・。ありがとうな。」
そこへ勇二の友達が駆け寄ってくる。
勇二の友達①「お前の兄ちゃんスゲーな。」
勇二の友達②「青葉相手に満塁ホームラン。」
勇二の友達③「まさに、代打の切り札。カッコイイ。」
勇二「だろー。レギュラーよりカッコいいだろー!」
健一は、ベンチ横にいる剛太郎に気付いた。そして、何も言わず、右手の親指を上げた。それを見た剛太郎も、親指を上げた。心で語りあう、剛太郎と健一であった。
第六十七話に続く。
第六十七話に続く。第六十七話も書きます。




