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男!岩田剛太郎の秘密  作者: やのへい
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第六十四話 剛太郎のリーダーシップ

祥子のお悩みを剛太郎が解決。

第六十四話 剛太郎のリーダーシップ


その男の名は、岩田剛太郎。

高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。

見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。

頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。

ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。


 キーンコーンカーンコーン、一高、3年1組の古文の授業終わりである。古文担当は、古江先生である。

古江「今日の授業は、ここまで、みんなさっきのところは、中間に出すから、しっかり復習しておくように。以上。」

1組生徒全員「はーい。」

そこへ、剛太郎が古江先生に声を掛ける。

剛太郎「古江先生!」

古江「ん、どうした、剛太郎。」

剛太郎「さっきの徒然草の文面で、分からないところがあるので、質問いいですか?」

古江「ああ、じゃあ、職員室に行くか?」

剛太郎「はい、お願いします。」

そこへ、お邪魔虫、祥子が駆け寄ってくる。

祥子「先生、私もいいですか?」

古江「おお、夏目もいいぞ。」

三人で、職員室へと移動する。


職員室に移動した三人。古江先生の机の前で、話している。

古江「ふむふむ、そう解釈したんだな。でもな、この文法は・・・。」

古江先生が、事細かに、剛太郎の質問に回答していた。

剛太郎「先生、理解出来ました。そう解釈するんですね。」

祥子「私も古文苦手だけど、しっかり説明聞くと頭に入るね。」

古江「おいおい、僕が授業で手抜きしているみたいじゃないか。」

そこへ、現代文担当の三月先生が声を掛けてきた。

三月「まあまあ、古江君の授業でしょ。眠くならないなら、いいんじゃない?」

古江「三月先生、そりゃないでしょ。」

剛太郎「ははっ、古江先生の授業は楽しいですよ、時々、コマーシャル入りますから。」

三月「コマーシャル?」

祥子「確かに、授業の最中に、お笑いのネタがチョイチョイ入りますよね。」

古江「古文の発音や、話のやりとりでお笑いにマッチする時に、チョイチョイね。」

三月「ほうほう、なかなか、工夫しているのね。」

剛太郎「それはそうと、徒然草って凄いですね。」

古江「ほう、どの辺が凄いって思ったんだ?」

剛太郎「その道の達人になるには、上手くなってから人に見せるのではく、下手なうちから人に見せて、失敗を笑われて、いつの間にか、達人となる。」

祥子「深いね!」

古江「ああ、そのくだりね。それがどうかしたか?」

三月「そんな昔にってことね。」

剛太郎「吉田兼好って、1300年頃ですよね。今から、700年も前に・・・、凄いですよね。」

古江「まあ、確かに。でもな、孔子、キリスト、釈迦は、もっと昔だよ。」

三月「悟りの境地・・・。」

剛太郎「三月先生も凄いですよね。」

三月「私が?どうして?」

剛太郎「三月先生は、現代文ですよね。」

祥子「ふむふむ。」

三月「それが、どうかしたの?」

剛太郎「日本語の先生ですよね。」

古江「当たり前じゃないか。」

剛太郎「ええ、日本語の平仮名は、あいうえおで、始まって、わをんで終わりますよね。」

祥子「ふむふむ。」

剛太郎「つまり、あいで始まって、をんで終わる言語ですよね。」

古江「あい・・・、をん・・・。」

祥子「ああーーー、そうかーーー。」

三月「愛?恩?ってこと?」

剛太郎「愛で始まって、恩つまり、感謝で終わる言葉・・・、それが日本語ですよね、三月先生。人も同じですよね。父母の愛で生まれ、誰かの恩を感じながら亡くなっていく。その素晴らしい日本語を教えているんですよね。」

三月「剛太郎君・・・、ありがとう。」

古江「剛太郎、こ、古文は、どうなんだ?」

祥子「古江先生、張り合わなくても・・・。」

剛太郎「古文は、さっき言ったみたいに、過去の偉人の言葉や格言を教えていますもんね。素晴らしいですよ。」

古江「そ、そう?」

照れる古江先生。そこへ、ぞくぞくと先生が押し寄せる。

堀江「剛太郎、英語は、どうなんだ?」

三宅「社会は?」

山田「生物は?」

祥子「もー、剛太郎君、モテモテ。」

押し寄せる先生に達に、次々と素晴らしい言葉をプレゼントする、剛太郎であった。


 教室に戻った、剛太郎と祥子。

祥子「凄いね。剛太郎君、あんな言葉が出てくるんだもん。」

剛太郎「まあ、努力の賜物かな。」

祥子「努力?」

剛太郎「ああ、また、詳しく教えるね。」

祥子「秘密の特訓とか?」

剛太郎「近いね。」

祥子「じゃあ、帰ろっか。」

教室をあとにする二人であった。


校門を出て下校する、剛太郎と祥子。

祥子「剛太郎君、今日部活はないの?」

剛太郎「うん。今日は石橋先生が出張なんだ。」

祥子「そうなんだ。あ、ちょっと、剛太郎君に聞こうと思ってたんだけど、いい?」

剛太郎「何でしょう?」

祥子「今度、私、クラス委員でしょ。剛太郎君、柔道部主将でしょ。どうやって、みんなをまとめてるのかなって、気になっていたの。」

剛太郎「リーダーシップだね。」

祥子「そう、そう、そう。」

剛太郎「話が長くなるから、祥子ちゃんの家で話そうか。」

祥子「うん。お願い。」

急ぎ、夏目家を目指す、剛太郎と祥子であった。


 夏目家に到着。お約束の、剛太郎のただいまの挨拶も済ませ、祥子の部屋で話をする二人。

祥子「では、師匠、お願いします。」

剛太郎「師匠って、そんな、難しいことじゃないよ。じゃあ、いくね。先ず、リーダーシップに大切なもの、それは、3つある。」

祥子「一つ目は?」

剛太郎「一つ目は、聞く力。相手の言うことに口を挟まない、答えを途中で言わない。聞くときは、全力で相づち、体全体で聞く。メモを取る。」

祥子「聞く姿勢をみせるって事ね。あ、メモメモ。」

剛太郎「二つ目は、洞察力。観察じゃなく、洞察。観察は見ているだけ、洞察は相手が何を考えているかを考えながら見ること。」

祥子「想像するってこと?」

剛太郎「そう、漫画の吹き出しって分かるよね。あんな風に、後輩の後ろ姿を見て、漫画の吹き出しをつけて、心の声を想像する。」

祥子「先輩には、本音は言わないから?」

剛太郎「そういうこと。あと、練習終わりの後ろ姿や表情から、声にならない声を聞く。」

祥子「難しくない?」

剛太郎「まあ、ここまでは、僕も達していないよ。」

祥子「三つ目は?」

剛太郎「三つ目は、承認。」

祥子「認めるって事?褒めるじゃないの?」

剛太郎「褒めるも承認の一部だよ。結果承認になるね。承認には、5つあるよ。結果、プロセス、行動、意識、存在。」

祥子「存在って?」

剛太郎「今日も練習に来てくれて、ありがとう。また明日も、頑張ろうとか。」

祥子「辞めたいって人には必要かもね。」

剛太郎「そう、結果承認だけだと、承認の回数が稼げない。だから、行動承認を主にやっているよ。今のフェイントよかったよとか、今の技の入り方いいぞとか。」

祥子「見ているぞってことだね。」

剛太郎「そう。後輩の信頼は、自分を見てくれているっていう意識を持って貰う事なんだ。その為に、日々承認していくんだ。承認のコミュニケーションがとれていれば、叱ったとしてもちゃんと聞いてくれる。承認がしっかりしていないと、さーせんって感じになるね。」

祥子「なるほど、なるほど。」

剛太郎「あと、聞く力にも通じるんだけど、振り子の原理って知ってる?」

祥子「振り子って、あのぶらんぶらんの振り子のこと?」

剛太郎「そう、聞く耳持たずに、やれっていっても、聞いてくれない。自分が相手の事を1しか聞かないで10伝えたとしても、相手は10のうち1しか聞いてくれない、自分の都合のいいことしか聞かない。」

祥子「確かに。」

剛太郎「いつも見てくれてない人から褒められても、結果出したときだけだなと取られてしまう。見てくれていない人に叱られても、相手は理解していない。」

祥子「聞く力と承認、洞察力ね。分かった。」

剛太郎「よろしくお願いします。クラス委員さん。」

祥子「あ、そういえば、秘密の特訓ってこれのことなの?」

剛太郎「うん。リーダーシップもだけど、本当はこれ。」

剛太郎が、一冊の本を取り出す。話し方が上手くなる本であった。

祥子「それが、虎の巻って事ね。」

剛太郎「この話し方の本の中に、リーダーシップの取り方が書いてあったんだ。それを実践しているだけなんだ。」

祥子「話し方って、剛太郎君、話し方上手じゃない。」

剛太郎「公式を覚えて、毎日努力しているからね。」

祥子「努力って、話すのに公式なんかあるの?」

剛太郎「それが、あるんだ。コンテンツとデリバリーとマインド。」

祥子「こんて・・・って何なの?」

剛太郎「コンテンツは言葉、デリバリーは表現、マインドは考え方。考え方であるマインドを、コンテンツである言葉にして、デリバリーつまり、表現するってこと。」

祥子「まだ、よく分からない。」

剛太郎「マインド、考え方が大事なんだ。このマインドを磨く、感性を磨く。話す相手の心を振るわせる言葉を、日常で考える。」

祥子「例えば?」

剛太郎「今、コンビニの店員さん、外国人が多いよね。」

祥子「増えたよね。」

剛太郎「こないだ、ネパール人の店員さんがいてね、レジで会計終わりに、ダンニャバードって言ったの。」

祥子「だんやばーど?」

剛太郎「ははっ、ダンニャバードだよ。サンスクリット語でありがとうって意味だよ。」

祥子「店員さん、ビックリしたでしょ。」

剛太郎「うん、最高の笑顔で、こちらこそ、ダンニャバードって言われた。」

祥子「相手の心を振るわせるか・・・。」

剛太郎「祖国を離れ、こんな遠い国に来て、不安でいっぱいな時、母国語でありがとうって言われたら嬉しいでしょ。日常で毎日練習しているんだ。これ言われたら、相手の心が震えるかなって。」

祥子「それで、三月先生に、愛と恩の話をしたのね。」

剛太郎「そういうこと。」

祥子「まだあるの?」

剛太郎「あとはね、窓ふきの仕事のおじさんに、窓を拭くと空が綺麗に見えますね、窓だけじゃなくて心も綺麗にしてくれるんですね。」

祥子「ほう。」

剛太郎「ゴミ収集の仕事のおじさんに、おじさんが居ないと街が汚れていきますね。この街を綺麗にしているんですね。」

祥子「ほうほう。」

剛太郎「タクシーの運転手さんに、毎日、急いでいる人を助けているんですね。凄いですね。」

祥子「ほう、ほう、ほう!」

剛太郎「交通整理のおじさんに、おじさんが居ないと車ぶつかっちゃいますよね。車に気をつけてくださいね。」

祥子「ほうほう、ほうほう!」

剛太郎「祥子ちゃん・・・、泣いてる?」

祥子「うんうん、私の心が、揺らされたみたい。」

剛太郎「これも、話し方の本のお陰だけどね。」

祥子「どうして、その本を買おうと思ったの?」

剛太郎「それは・・・。」

クマリン「えっへん。僕が紹介したの。」

祥子「クマリンなの?」

クマエル「コミュニケーションの神様だからね。」

クマリン「剛太郎に、本屋に連れて行って貰って、祥子と話すにはどうしたらいいって聞かれたんで、本でも読めば良いって、その本を勧めたの。その本が一番本質を語っていたから。」

剛太郎「そう、だから、祥子ちゃんの師匠の師匠は、クマリンだね。」

祥子「そうだったんだ。ありがと、クマリン。」

クマリン「じゃあ、お礼は一緒にお風呂だね。」

祥子「それは、駄目―。」

クマリン「なんでーーー。」


第六十五話に続く。


第六十五話に続く。第六十五話も書きます。投稿が遅れてすみません。

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