第六十二話 剛太郎の進路
加奈子の退院は?学校で職業適性テストがあった模様、その結果は?
第六十二話 剛太郎の進路
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
いつもの放課後、一高の校門前。剛太郎と祥子が下校である。加奈子の入院から丁度、一週間が経過していた。
祥子「加奈子さん、そろそろ、退院かな?」
剛太郎「そうだね。そろそろじゃないかな。」
クマリン「充電あるから、今日も行くんでしょ。」
マモリン「早く行こう。」
リキリン「行こう、行こう。」
祥子「クマリンはクマウル、クマラルに会えるもんね。」
クマリン「うん。あ、そういえば、今日の職業適性テストは、剛太郎どうだったの?」
祥子「警察官だった?」
剛太郎「いや、それが・・・。」
祥子「違うの?私は小学校の先生って出たよ。自分の道は間違ってないって確信したよ。」
クマリン「もしかして、プロレスラーとか?」
マモリン「違うよ、お医者さんだったよ。」
剛太郎「そう、医者だった。」
祥子「剛太郎君、生物得意だもんね。」
剛太郎「僕、文系なんですけど・・・。」
祥子「まあ、適性検査だから、そこまで深く受け止めなくてもいいじゃない?」
クマリン「剛太郎先生に、お薬飲みなさいって言われたら、断れないね。」
マモリン「患者さんを、威圧しそう。」
リキリン「逆らえないね。」
祥子「それは、あるね。」
剛太郎「医者にはなりませんから。」
他愛もない話をしながら、加奈子の入院している総合病院を目指す、二人と三匹であった。
加奈子の病室。加奈子母文恵と加奈子が話していた。
加奈子「痛みはなくなってきたけど、退院はいつ頃になるのかな?」
加奈子母文恵「あと、1~2日らしいわよ。あとは、おならが出ればOKじゃないの?」
加奈子「おお、おならなのか、完治の記念に豪快な一発を出すかな。」
加奈子母文恵「もう、可愛いのにしときなさい。」
加奈子「そうか?剛太郎は、女性の豪快なおならが好きなんだぞ。」
加奈子母文恵「そうなの?ちょっと変わっているのね。」
そこへ、祥子と剛太郎が病室に入って来た。
加奈子「噂をすれば、だな。」
祥子「こんにちは。失礼します。」
剛太郎「失礼します。」
加奈子母文恵「お二人とも、わざわざ、お見舞いありがとうね。」
祥子「加奈子さん、退院は?」
加奈子「まだなんだ。豪快な一発が必要らしい。」
加奈子母文恵「盲腸手術だったでしょ。豪快じゃなくてもいいんだけど、おならが出ればいいみたいなの。」
剛太郎「豪快な一発・・・。」
加奈子「剛太郎、期待してくれ、そろそろ、出そうなんだ。」
そこへ、担当医がやってくる。
担当医「加奈子ちゃん、もうおならは出たかな?」
加奈子「おう、先生、今出るところだ、いくぞ!」
加奈子のおなら「ぷうっ♥」
祥子・剛太郎・加奈子母文恵・担当医「おおっ。」
加奈子「可愛いのが出たな。やっぱり、豪快にはリハビリが必要だな。」
祥子「おならのリハビリ?」
剛太郎「これで、退院出来るね。」
担当医「よかった、よかった。多分、明日の午前中の診察が終わったら、退院だよ。」
加奈子母文恵「先生、ありがとうございました。」
担当医「血液内の抗体反応もみておきたいからね。」
剛太郎「抗原抗体反応ですね。」
担当医「薬に体が正常に反応するか、みておきたいんだ。アレルギー反応起こしたりするかもしれないんでね。」
加奈子母文恵「大丈夫なんですか?」
剛太郎「心配ないと思います。抗原ではないものを抗原と見なし、体が反応しないかどうかの検査ですよ。花粉症と同じです。」
担当医「そうなんだ、君、詳しいね。医者志望なの?」
加奈子「いや、彼は警察官志望だぞ。」
祥子「生物が好きなんです。職業適正ではお医者さんだったみたいですけど。」
加奈子「そうなのか?」
剛太郎「あくまで、適正だからね、なりたいのは警察官だよ。」
担当医「君みたいなお医者さんだったら、患者さんも言う事聞きそうだな。」
加奈子「薬飲みなさい!だけで良さそうだな。」
担当医「今の日本は、何処も抗菌、抗菌って、ばい菌が無くなっているからね。」
祥子「ばい菌がなくなるのは、良いことじゃないんですか?」
担当医「無くなりすぎるって事も、逆に駄目なんだよ。」
剛太郎「ばい菌という抗原が無くなりすぎて、人間の体内では、ばい菌じゃないものを抗原と誤認して、アレルギー反応を起こしているんだよ。例えば、花粉症という病気は、花粉を抗原と見なし、それを洗い流そうとして涙や鼻水が大量に出される。本来、人間は抗原に対し自分で抗体を作り出し、病気に対抗するんだ。」
加奈子「ばい菌が勝ったらどうするんだ?」
剛太郎「その時は、抗生物質がある。ペニシリンやストレプトマイシンとか聞いたことない?」
祥子「ペニシリンって、青カビから作った物よね。」
剛太郎「イギリスのアレキサンダー・フレミング博士が、ブドウ球菌の培養中にカビの胞子がペトリ皿に落ちて、カビの周囲のブドウ球菌が溶解しているのに気づいたのが、ペニシリンの発見らしい。」
担当医「そこまで知っているの?君、耳鼻咽頭科の医師を目指したら?」
加奈子「さすが、歩く広辞苑、剛太郎だな。わたしの祝福のおならが忘れられたな。」
剛太郎「ゴメン、ゴメン。可愛いおなら、ありがとう。」
加奈子「ありがとうって、ただ出ただけだぞ。」
担当医「じゃ、明日の退院の準備を進めるかな。失礼するよ。」
担当医が、加奈子の病室を出て行く。
祥子「明日が、退院ね。退院したら、ラインしてね。」
剛太郎「僕らも、そろそろ失礼しようか。」
加奈子母文恵「お見舞いありがとうね。」
加奈子「今度は、豪快な一発にするからな。」
笑顔で病室を後にする、剛太郎と祥子であった。
岩田家。剛太郎が病院から帰宅していた。剛太郎、剛太郎父達夫、剛太郎母幸子がリビングで話していた。
剛太郎父達夫「今日は、PTAの講演を聞いてきたぞ。」
剛太郎「どんな話だったの?」
剛太郎父達夫「うむ。大人が変われば、子供が変わるというものだった。」
剛太郎母幸子「凄いテーマね。」
剛太郎「ほうほう。」
剛太郎父達夫「夢の実現に一番必要なものは、何だと思う?」
剛太郎「目標を立てる、それに向けて努力するじゃないの。」
剛太郎父達夫「予祝だ。」
剛太郎母幸子「よしゅく?」
剛太郎父達夫「前もって、成功を祝うことだ。」
剛太郎「花見や盆踊りのこと?」
剛太郎達夫「おお、剛太郎、よく知っているな。予祝とは、秋の五穀豊穣を願い、花見や盆踊りで前もって祝う事だ。」
剛太郎母幸子「それが、PTAと関係があるの?」
剛太郎父達夫「中学校に当てはめてみれば、受験で志望校に合格、部活で県大会出場等を、先に喜ぶ。その喜びを誰に感謝するのか。試合前や受験前に、生徒に作文を書かせるそうだ。大体が、親への感謝の気持ちが綴られるそうだ。自分のためではなく、誰かのために努力するという意識が芽生えるそうだ。今日は、その作文の宿題が出ているらしい。」
剛太郎「それでか、今日子が勉強しているのは。」
剛太郎父達夫「あとは、モチベーションの向上。インフルエンザより人に伝染する3つ。あくび、不機嫌、笑顔。子供の可能性を伸ばす方法は、家庭の空気。中でも、母親の笑顔が一番。お母さんのイライラの原因は、半分は子供、あと半分はお父さん。お父さんの最大の役割は、奥様の笑顔を増やすこと。」
剛太郎母幸子が、大拍手をしている。
剛太郎父達夫「子供が夢や希望を持たない最大の理由は、お父さんの背中。帰宅して、疲れた、疲れたと言っているお父さんの姿を見て、大人は疲れるんだ、なりたくないなと感じてしまう。お母さんは、子供に、お父さんはお母さんに慰めて貰いたいから疲れた、疲れたって言っているのよ、本当は疲れてないの、と言ってあげましょうとのことだった。」
剛太郎母幸子「あなたも、そうなんですか?」
剛太郎父達夫「無いとは言えないかもな。」
剛太郎「そういえば、この間、そんな作文書かされたな。5枚の紙に、あ・り・が・と・うって書いたな。」
剛太郎母幸子「あの時は、それだけって思ったけど。」
剛太郎「いや、あれが、真意だよ。」
剛太郎父達夫「まあ、剛太郎らしいと感じたよ。あれは、枠に収まりきれない感謝の気持ちと受け取ったぞ。」
剛太郎「さすがは、父さん。」
剛太郎母幸子「そういう意味だったの?面倒くさいからじゃなかったのね。」
剛太郎父達夫「明るいエネルギー、明るい空気が、子供の可能性を伸ばす。機嫌を良くすることを心がける。ただ、悪いことをしたときは、怒るのではなく、しっかり叱るという講演だったよ。」
剛太郎「凄いね。」
剛太郎母幸子「お母さん達は、大絶賛じゃなかったですか?」
剛太郎父達夫「確かに、お母さん方は拍手喝采、お父さん達はしゅんとしていたな。」
剛太郎「PTAって大変そうだね。」
剛太郎父達夫「でだ、そのPTA会長に、私が選任された。」
剛太郎母幸子「あら、そうなんですか。」
剛太郎父達夫「断る理由もなかったからね。」
剛太郎「会長、おめでとうございます。」
そこへ、剛太郎妹今日子が二階から降りてきた。
剛太郎妹今日子「はー、終わったー。」
剛太郎母幸子「お疲れ様。作文は終わったの?」
剛太郎妹今日子「えっ、お母さん、宿題が作文って何で知っているの?まあ、今度の授業参観で発表だから、ま、いいか。」
剛太郎「どんな作文なんだ?」
剛太郎妹今日子「それは、ヒ・ミ・ツ。」
剛太郎父達夫「授業参観まで、楽しみとしよう。」
その後、それぞれ寝室へ向かう四人であった。
剛太郎の部屋、クマちゃんルーム。
剛太郎「明日、加奈子さん退院だね。」
リキリン「行くの?」
マモリン「間に合わないでしょ。」
剛太郎「退院したってライン来たら、おめでとうって返すかな。」
リキリン「お出かけは?」
マモリン「靴を贈った責任だね。」
剛太郎「そんな深い意味は無かったんだけど・・・。」
リキリン「まあ、通学には、革靴よりスニーカーの方が楽だって贈ったんだろう。」
マモリン「でも、入院中の女性に靴を贈るって事は、暗にデートのお誘いってことだよ。」
剛太郎「そうなの?」
リキリン「さすが、無意識剛太郎。」
マモリン「加奈子も期待しているよ。」
剛太郎「分かった。今度の休みは、加奈子さんと、ミリタリーショップだ。」
リキリン「おお、それは良いな。」
マモリン「豪快な一発のお礼があるかもね。」
剛太郎「それは・・・嬉しいかも・・・。」
リキリン・マモリン「ヘンターーーーイ。」
加奈子とのデートに期待が膨らむ、変態剛太郎であった。
第六十三話につづく。
第六十三話につづく。第六十三話も書きます。




