第六十一話 加奈子の入院
加奈子が入院。その病気とは?お見舞いの品に加奈子が・・・。
第六十一話 加奈子の入院
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
いつもの放課後、剛太郎と祥子が下校中である。二人のスマホのラインが同時に鳴った。
剛太郎「着信だね。」
祥子「私のも、鳴ったよね。」
二人がスマホを取り出し、ラインを確認し、驚愕する。
剛太郎「えっ、加奈子さん・・・。」
祥子「・・・入院・・・。」
加奈子のライン原文「今日から、総合病院に入院することになった。手術は明日。よかったら、見舞いに来てくれ。以上。」
剛太郎「しゅ、手術って・・・。」
祥子「総合病院ね。剛太郎君、行きましょう。」
剛太郎「行こう。」
急ぎ、総合病院を目指す二人であった。
総合病院へ到着した、剛太郎と祥子。祥子が受付で病室を聞いていた。
祥子「502号室ですね。分かりました、ありがとうございます。」
剛太郎の元へ戻ってきた祥子。
祥子「502号室だって、急ぎましょう。」
剛太郎「うん、5階って事は、外科だね。何の病気だろう、怪我かな?」
祥子「先ずは、行ってみましょ。」
エレベーターで5階へと移動する二人。
502号室の様子。加奈子がベッドに横になっていた。加奈子母文恵が付き添っていた。
加奈子母文恵「急に入院だなんて、ビックリしたわ。」
加奈子「胃薬飲んだら、良くなると思ったんだけど。」
加奈子母文恵「剛太郎君には、知らせたの?」
加奈子「うん、さっきラインしておいた。」
そこへ、コンコンとノックし、扉を開け、剛太郎と祥子が病室に入ってきた。
加奈子「よう。もう来たのか。」
祥子「加奈子さん、大丈夫?」
剛太郎「加奈子さん、体は大丈夫?・・・元気そうだけど・・・。」
加奈子母文恵「加奈子、病名は伝えたの?」
加奈子「あ、打ち忘れた。」
祥子「何の病気なんですか?」
加奈子「盲腸だ。」
剛太郎「盲腸・・・。よかった。」
加奈子「良くはないぞ、朝からめちゃくちゃお腹痛かったぞ。」
加奈子母文恵「胃薬飲めば直るって言って、学校行ったのは誰ですか。」
祥子「加奈子さんらしい。」
剛太郎「盲腸でよかった。事故か難病だったらって、心配したよ。」
祥子「あ、自己紹介が遅れました。お母さん、私、夏目祥子です。初めまして。」
加奈子母文恵「ええ、知っていますよ。加奈子から写真は見せて貰っていましたから。」
加奈子「学校行って、保健室で胃薬貰って、それでも、痛みが治まらないから、とりあえず、病院行って、検査結果が出て、そのまま緊急入院。明日手術して、一週間くらいで退院らしい。」
剛太郎「大変だったね。」
祥子「手術って、お腹切るの?」
剛太郎「内視鏡で手術じゃないかな。」
加奈子「おお、剛太郎、よく知っているな。」
加奈子母文恵「そうなんです。今はお腹を切らずに、おへそから内視鏡を入れて、盲腸を切除出来るみたいなの。」
祥子「剛太郎君、なんで知っているの?」
剛太郎「僕のおじさんが先日、盲腸の手術をしてね。今は腹を切らずに手術するから、すぐ退院出来たって話していたから。」
加奈子「さすが、剛太郎、何でも知っているな。」
祥子「歩く広辞苑剛太郎、知らないことないんじゃない?」
剛太郎「そんなことないよ。この間だって、今日子のお料理修業を手伝わされて、料理本を読まされたんだけど、出汁をでじるって読んで大笑いされた。」
加奈子「はっはっは、でじるは、凄いな。」
加奈子母文恵「クスッ、加奈子、剛太郎君に悪いわよ、フフッ。」
祥子「まあ、でるにしるだけど、剛太郎君らしいね。」
女性3人に笑われる剛太郎。
剛太郎「料理とか、アレしか作れないしね。」
祥子「あ、アレね。」
加奈子「剛太郎、料理できるのか?」
祥子「アレは、料理と呼べるのか・・・。」
剛太郎「いやいや、僕にはれっきとした料理です。」
加奈子「じゃあ、退院したら、そのアレ食べさせてくれ。」
剛太郎「うん、分かった。用意しとくよ。」
そこへ、看護師が病室に入ってくる。
看護師「すみません、入院の手続きがありますので、お母様、一階の受付までよろしいですか?」
加奈子母文恵「分かりました。すぐ伺います。加奈子、ちょっと行ってくるからね。剛太郎君、祥子さん、ゆっくりしていてね。」
加奈子「分かった。」
祥子「私たちもすぐ、帰りますので。」
剛太郎「手ぶらで来てしまって、すみません。明日、出直します。」
加奈子母文恵「あらあら、わざわざいいのよ。加奈子が病名も伝えずに、いきなり入院しますって送ったから、急いで来てくれたんでしょ。」
加奈子「その通りだ。」
加奈子母文恵「じゃあ、ちょっと行ってくるわね。」
そう言って、病室を後にする加奈子母文恵であった。
クマリン「加奈子ちゃん大丈夫―?」
マモリン「入院っていうから、ぼくも心配したよ。」
リキリン「まあ、何かあれば、クマラルかクマウルがテレパス飛ばすよ。」
クマウル「飛ばそうと思ったら、みんな来ちゃったもん。」
加奈子「確かにな。あ、クマラル持って来てって、母さんに頼まなきゃ。」
剛太郎「充電があるからね。明日、また来るから。」
祥子「さあ、加奈子さんも元気だって分かったし、帰ろうか。」
剛太郎「そうだね。明日出直しだね。」
加奈子「二人とも、心配かけてすまない。」
クマリン「僕も心配したぞー。」
マモリン「ぼくも。」
リキリン「ボクも。」
加奈子「うん、分かっているぞ。」
剛太郎「加奈子さん、秀英って、革靴指定なの?」
加奈子「ああ、靴はローファーの革靴か、黒か白のスニーカーだぞ。」
祥子「へえ、そうなんだ。」
加奈子「何でだ?」
剛太郎「いや、この革靴、加奈子さんのでしょ。学校から即入院したって言っていたから、革靴が指定なのかなって思ったんだ。」
加奈子「革靴の方が汚れないから、雨の日でも濡れないからな。」
そこへ、加奈子母文恵が戻ってきた。
加奈子母文恵「手続き終わったわよ、手術は明日のお昼からだそうよ。」
祥子「では、お母さん、失礼します。」
剛太郎「また、明日、夕方来ます。」
加奈子母文恵「夕方には、麻酔も覚めているから、大丈夫よ。」
加奈子「母さん、麻酔って、局部麻酔じゃないのか?」
加奈子母文恵「全身麻酔だそうよ。」
剛太郎「その方が、やりやすいんじゃないかな。」
加奈子「まあ、寝ているだけだ。じゃ、また明日な。」
病室を後にする、剛太郎と祥子であった。
病院から自宅へ帰る、剛太郎と祥子。
祥子「ビックリしたね。まあ、大事じゃなくてよかった。」
剛太郎「うん、明日、部活前にお見舞い行こう。」
祥子「あ、部活あるもんね。」
剛太郎「部活にはちょっと遅れるけど、お見舞いの方が大事だからね。」
祥子「じゃあ、また明日ね。」
剛太郎「うん、また明日。」
分かれ道で、別れる二人であった。
翌日の放課後、一高の校門前、祥子が剛太郎を待っていた。剛太郎が走ってきた。
剛太郎「祥子ちゃん、お待たせ。」
祥子「うん、剛太郎君、部活は大丈夫なの?」
剛太郎「ああ、石橋先生に、友人のお見舞いですって言ってきた。」
祥子「また、戻るの?」
剛太郎「県大会が近いからね。打ち込み、寝技のあとの、乱取りには戻りますって言ってきた。」
祥子「そう、じゃあ、急ぎましょう。」
急ぎ、総合病院を目指す二人であった。
病院に到着し、502号室を訪ねる、剛太郎と祥子。
祥子「失礼します。」
剛太郎「お邪魔します。」
そこには、加奈子父真一、加奈子母文恵、そして、手術を終え、麻酔から覚めた加奈子がいた。
加奈子「おお、二人とも、昨日ぶりだな。」
祥子「・・・大丈夫そうね・・・。」
剛太郎「加奈子さん、大丈夫だった?」
加奈子「見ての通りだ、動けん。」
加奈子父真一「剛太郎君、祥子さん、ありがとう。秀英の友達も今、帰ってところだよ。」
加奈子母文恵「手術は成功、もう、こっちがハラハラして、損しちゃった感じよ。」
加奈子父真一「まあ、盲腸だからな。病気のうちに入らんよ。」
加奈子「動くと、痛いぞ。」
剛太郎「内視鏡手術とはいえ、切っているからね。」
祥子「加奈子さん、これお見舞いね。」
そう言って、花束を渡す、祥子。
加奈子母文恵「祥子ちゃん、ありがとうね。」
加奈子父真一「うん?造花かな。」
加奈子「父さん、知らないのか?生花は、病院には向かないぞ。花粉とかあるからな。それに、鉢植えは根が張るから、病気の回復が遅れるという意味でNGだぞ。」
加奈子父真一「そうなのか。」
剛太郎「僕は、これを。」
加奈子「ありがとう、剛太郎。」
剛太郎「加奈子さんの元気な顔が見られて、安心しました。部活があるので、僕はこれで失礼します。」
加奈子父真一「もう行くのか。」
剛太郎「ええ、県大会が近いので。」
加奈子「退院したら、応援に行くぞ。」
剛太郎「うん。じゃあ、失礼します。」
剛太郎は、病室を足早に去って行った。
加奈子「父さん、開けてみてくれ。」
加奈子父真一「いいのか、開けるぞ。」
加奈子「祥子は、中身知っているのか?」
祥子「ううん、知らない。昨日の帰りに買ったんじゃないかな。」
加奈子父真一が、包装を剥ぐ。
加奈子父真一「どれどれ・・・。」
加奈子母文恵「まあ、これは・・・。」
加奈子「何だ、見せてくれ。」
加奈子父真一「これだよ。」
そう言って、寝ている加奈子に中身を見せる加奈子父真一。
加奈子「靴?スニーカーだな、黒の。」
加奈子父真一「加奈子、履いてみるか?」
加奈子「体が動かないから、履けるわけがないだろ。」
加奈子父真一「ははっ、そうだな。どれ、サイズは合うか、父さんが履かせてやろう。」
そう言うと、加奈子父真一は、加奈子に靴を片方履かせてみる。
加奈子父真一「加奈子、どうだ。」
加奈子「うん、ピッタリだ。」
祥子「昨日、剛太郎君が加奈子さんの靴をマジマジと見ていたのは、そういう理由だったのね。」
加奈子母文恵「学校へも履いていけるんじゃない。革靴より楽でしょ。」
祥子「それで、昨日、加奈子さんに秀英の靴の規定を聞いていたんだ。」
加奈子父真一「靴・・・か、凄い感性だな。」
加奈子母文恵「ええ、素敵ですね。」
加奈子「ステキ?」
加奈子父真一「加奈子、分からないか?病気の女性に靴を送るということは、早くよくなってどこかへ行こうという意味だよ。」
祥子「加奈子さん、羨ましいな。」
加奈子「父さん、靴脱がせてくれ。」
加奈子父真一「ああ、分かった。」
加奈子の靴を脱がし、靴を枕元に置く、加奈子父真一。靴をマジマジと見つる加奈子。
祥子「私も、失礼します。」
加奈子「うん、祥子さん、お花、ありがとうね。」
祥子「祥子さん?いつも通り、祥子でいいよ。」
加奈子「いや、これからは、祥子さんってよぶから、私も加奈子さんって呼ばれていてるし。」
祥子「分かった。じゃあ、加奈子さんまたね。」
祥子も病室を去って行った。
加奈子「お父さん、お母さん、ちょっと寝るね。」
加奈子父真一「ああ、じゃあ母さん、コーヒー買いに下へ降りるか。」
加奈子母文恵「そうですね。降りましょう。」
加奈子父真一と加奈子母文恵も、病室を出て行く。
加奈子父真一「母さん、おが付いたぞ。」
加奈子母文恵「そうですね。」
加奈子父真一「・・・成長かな・・・。」
加奈子の成長を喜ぶ夫婦であった。
病室の加奈子は、一人、送られた靴を見つめ、涙ぐんでいた。
加奈子「剛太郎・・・くん・・・、ありがとうございます。」
退院して、剛太郎がくれた靴を履き、一緒に歩く姿を夢見る加奈子であった。
第六十二話に続く。
第六十二話に続く。第六十二話も書きます。




