第五十七話 祥子父一郎の熱弁
スープ&パンパーティーの前に、祥子父一郎に相撲の歴史を聞く剛太郎。祥子父一郎の熱弁が始まる。
第五十七話 祥子父一郎の熱弁
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
スーパーから買い出しを終え、剛太郎と祥子が夏目家に戻ってきた。
祥子「ただいま。」
剛太郎「ただいま、戻りました。」
ダイニングへと移動する二人。祥子母律子が出迎える。
祥子母律子「お帰りなさい。また、たくさん買ってきたわね。」
祥子「だって、剛太郎君、ファミレスのスープ、ワンタンク飲むんだよ。これくらい大丈夫よ。」
祥子母律子「そんなに飲むの?よし、作りがいがありそうね。」
祥子「私も手伝うから。」
剛太郎「僕も手伝います。」
祥子母律子「いいの、いいの。一人で大丈夫だから。祥子には手伝って欲しいときに声かけるから。」
祥子「お母さん、いいの?」
祥子母律子「伊達に料理教室開いてませんよ。ささ、私よりもっと、待ちくたびれている人が居るから。」
祥子「あ、お父さん・・・。」
祥子母律子「お父さんに聞きたいことあるんでしょ。二人とも、リビングに行ってらっしゃい。」
祥子「分かった。手がいる時は、言ってね。」
剛太郎「何から何まで、ありがとうございます。」
剛太郎と祥子がリビングへ移動する。
祥子「お父さん、ただいま。」
剛太郎「ただいま戻りました。」
祥子父一郎「おお、二人とも、待ちくたびれたぞ。ささ、座って座って。」
生き生きとしだした祥子父一郎である。
祥子父一郎「さて、相撲の歴史とのことだが、どこから説明すれば良いか、逆に剛太郎君が何処まで知っているのか聞かせて欲しいな。」
剛太郎「はい、野見宿禰と当麻蹴速の戦いが、相撲の起源と伺っています。」
祥子父一郎「ほう、よく知ってるな。じゃ、その前は?」
祥子「知ってるよ。建御雷神と建御名方の力比べでしょ。」
祥子父一郎「おお、祥子、よく知ってるな。」
祥子「古事記の神話でしょ。」
祥子父一郎「うむ、そうだ。じゃあ、そこから話していくかな。」
剛太郎「お願いします。」
祥子父一郎「神話の時代、天照大神から派遣された建御雷神と、大国主神の息子の建御名方が国を賭け戦ったのが、相撲の起源とされている。実際の人が戦ったのは、剛太郎君が言った、野見宿禰と当麻蹴速の戦いが、相撲の始まりとされている。そこから現在の相撲は、宿禰相撲と呼ばれるようになった。まあ、その頃は、今の相撲とは違い、蹴り技主体だったらしい。」
祥子「蹴り技?反則じゃないの?」
祥子父一郎「奈良時代に、突く、殴る、蹴るの3つが禁じ手とされたんだ。平安時代には、相撲節会という相撲大会が開かれるようになった。鎌倉時代になると、源頼朝が上覧相撲という大会を開いていたそうだ。
祥子「いい国作ろうの人ね。歴史の授業には出てこなかったわよ。」
剛太郎「確かに、相撲の歴史は、江戸時代くらいからしか載ってこないもんね。」
祥子父一郎「どんどんいくぞ。戦国時代には、ある人物が相撲を発展させたと言われている。誰か分かるかな?」
祥子「戦国時代・・・、秀吉?」
祥子父一郎「祥子、惜しいな。」
剛太郎「織田信長ですか?」
祥子父一郎「おお、剛太郎君、正解だ。知っていたのか?」
剛太郎「いえ、秀吉が惜しいと言われたので。」
祥子父一郎「うむ。信長は上覧相撲をしばしば開催し、優勝者を召し抱えたり、褒美に衣服や刀を贈ったと言われるくらい相撲好きだったらしい。あと、この頃まで土俵はなかったらしい。」
祥子「どこで相撲するの?」
祥子父一郎「神社などで行われた。土俵ではなく、人方屋といって、人が取り囲んでその中で行うものだった。」
剛太郎「ストリートファイトですね。」
祥子父一郎「そうだな。土俵が出来たのは、江戸の初期らしい。神社仏閣を建立するための資金源として、勧進相撲が開催されるようになった。今の大相撲の原型だよ。相撲人気が上がるにつれて、職業相撲団も形成され運営していたようだ。」
剛太郎「職業力士の誕生と言うことですね。」
祥子父一郎「力士はチカラビトと呼ばれ神事に従事していたんだが、この頃から力士が職業になっていった。明治時代には、相撲存続の危機もあったんだぞ。」
祥子「お相撲の危機?」
祥子父一郎「文明開化で裸禁止、相撲禁止があったらしい。」
剛太郎「それは、ひどいですね。」
祥子父一郎「その時、明治天皇と伊藤博文が、その危機を救ったらしい。」
祥子「昔の千円札の人ね。」
剛太郎「初代総理大臣だよ。」
祥子父一郎「大正時代に、年4場所、戦後になって年6場所開催というのが、現在の大相撲だよ。」
祥子「へえ。お相撲にも凄い歴史があったのね。」
剛太郎「お父さん、ご説明ありがとうございました。」
祥子「お父さん、何でそんなに詳しいの?」
祥子父一郎「ははっ、相撲の歴史は、大学時代、わしの卒業論文のテーマだったからな。」
祥子「それでか。」
そこへ、祥子母律子がリビングへ入ってくる。
祥子母律子「熱弁は終了ですか?選挙の時より力が入ってたんじゃありません?」
祥子父一郎「そうかもしれんな。」
祥子母律子「あら、よかったですね。祥子、ちょっと手伝ってくれる?」
祥子「うん、いいわよ。」
剛太郎「僕も手伝いましょうか?」
祥子母律子「剛太郎君は大丈夫よ。お父さんが、離しそうにないでしょうから。」
剛太郎「すみません。」
祥子父一郎「他に聞きたいことはないのか?
祥子「じゃ、私はお手伝いしてくるから。」
そういって、祥子が席を立ち、ダイニングへ移動する。
剛太郎「では、お言葉に甘えて、お父さん、世界の相撲の歴史はご存じですか?」
祥子父一郎「世界か・・・。少しなら、知っているよ。」
剛太郎「今度、僕の自由研究のテーマが、相撲と日ユ同祖論ですので。」
祥子父一郎「大きなテーマだね。まあ、わしの知っている範囲で話そう。」
剛太郎「お願いします。」
祥子父一郎「ヤコブと天使の相撲の話は知っているかね。」
剛太郎「ええ、ヤコブと大天使カブリエルの相撲の話ですよね。」
祥子父一郎「おお、天使は、ガブリエルだったのか。わしより詳しいんじゃないか?」
剛太郎「いえ、それしか知らないので。」
祥子父一郎「そうか。じゃ、続けよう。旧約聖書にヤコブと天使が相撲したことが、世界の相撲の起源とされている。その戦いに勝利したヤコブは、天使からイスラエルという名前を授けられる。そのヤコブの子孫がイスラエルという国を建国する。そして、イスラエルからシルクロードを経由して、相撲も日本に伝わったとされている。」
剛太郎「やはり、そうですか。」
祥子父一郎「トルコのヤールギレッシュ、ウズベキスタンのクラッシュ、アフガニスタンのコシティ、インドのクシュティ、モンゴルブフ、韓国のシルムだな。 シルクロードに沿って相撲と形の似た格技が、アジア各地に存在するよ。」
剛太郎「ユダヤの言葉と日本の言葉も似ていますよね。」
祥子父一郎「確かに、ヘブライ語と日本語は、よく似ているぞ。カタカナもよく似ている。」
剛太郎「ヘブライ語で、アタはあなた、ハカルは計る、ヤケドは火傷ですよね。」
祥子父一郎「お、よく知っているな。まだあるぞ。ミカドルは帝、シャムライは侍、アリ・ガドはありがとう、ニホヒは匂い、ハケシュは拍手、ダベルはしゃべる、コマルは困る、ヌシは主、タメは駄目、ホレブは滅ぶ、ハデカシェムは辱める、ツモルは積もる、スワルは座る、アキナフは商う、ナマルは訛る、カクは書く、トルは取る、スムは住む、ふう、たくさんあるぞ。」
剛太郎「お父さん、凄いですね。」
祥子父一郎「いや、大学時代、イスラエルの留学生の友人がいてね、色々話していたんだ。それに、大学の授業でキリスト教とユダヤ教の授業があってね。それを履行したんだ。」
剛太郎「それにしても、驚きですね。」
祥子父一郎「剛太郎君、君が代は知ってるだろ。あれをヘブライ語に訳すととんでもない訳になるぞ。」
剛太郎「そうなんですか?」
祥子父一郎「立ち上がれ、シオンの民。神に選ばれし者、喜べ、人類を救う民として。神の預言が成就する。全地で語り鳴り響け。となるんだよ。」
剛太郎「それは・・・、すごい・・・。」
祥子父一郎「話がそれてしまったな。相撲にもヘブライ語はあるぞ。相撲はシュモー、ハッケは投げよ、ヨイはやっつけよ。ノコッタノコッタは投げたぞやったぞ、ドスコイは異教徒を踏み落とせという意味があるらしい。」
剛太郎「やはり、相撲はイスラエルから・・・。」
祥子父一郎「山伏は知っているかい?」
剛太郎「はい、あのホラ貝吹いている人ですよね。」
祥子父一郎「うむ、あの山伏の衣装はユダヤの民族衣装にそっくりなんだ。ショーファーと呼ばれる羊の角の楽器は、ホラ貝そっくりだぞ。あと、山伏が頭に付けている兜巾は、ユダヤ人が祈りの時に、頭に付けるヒラクリティーにそっくりだ、中には旧約聖書の言葉が入っている。13歳の成人式には、ヘブライ語で書かれた旧約聖書が渡される。トーラーの巻物と言われるものだ。」
剛太郎「トーラー?・・・虎の巻・・・じゃないですか。」
祥子父一郎「ユダヤのシオン祭りは7月17日、京都の祇園祭りも7月17日だよ。旧約聖書で7月17日は、ノアの大洪水が終わった日だよ。祇園の山車は・・・。」
剛太郎「箱船!」
祥子父一郎「年越し行事も、似たものがあるぞ。ユダヤではペサハ(過越祭)と呼ばれている。日本では餅を食べる、ユダヤではマッツォという種なしのパンを食べる。ユダヤでは、丸い平べったい種なしのパンを祭壇の両脇に重ねて供える。」
剛太郎「鏡餅・・・ですね。」
祥子父一郎「大晦日、ユダヤも寝ないで年を越す。剛太郎君、日本の正月もユダヤのペサハも同じ7日間なんだよ。」
剛太郎「日ユ同祖論ですね。鳥肌立ってきました。」
祥子父一郎「剛太郎君とは、本当に気が合うようだ。まさか、同じ疑問で語り合えるとは驚きだよ。」
そこへ、食事の準備を終えた祥子母律子と祥子が入ってくる。
祥子母律子「出来ましたよ。さあ、ご飯にしましょう。」
祥子「剛太郎君、お父さんの話、為になった?」
剛太郎が興奮気味に、祥子の手をしっかり握る。
祥子「ちょ、剛太郎君、どうしたの?」
ちょっと焦る祥子。
剛太郎「祥子ちゃん、ありがとう。」
更に、ビックリの祥子。
祥子「えっ、うん、どういたしまして。」
剛太郎は、祥子の手を放し、祥子父一郎に深々と一礼する。
剛太郎「お父さん、貴重なお話を本当にありがとうございました。」
祥子父一郎「いや、こちらこそありがとう。まさか、同じ疑問を、剛太郎君が持っているとは、わしも驚いたよ。」
祥子母律子「さ、さ、ご飯にしましょう。せっかくのパンとスープが冷めちゃいますよ。」
祥子父一郎「おお、そうだった。剛太郎君、続きは食後としよう。」
剛太郎「はい。」
祥子「・・・お父さんの話、そんなによかったのかな?」
祥子母律子「剛太郎君が、祥子の手を握ったとき、プロポーズかと思ったわ。」
祥子「ちょ、ちょっと、お母さん・・・。」
祥子母律子「期待しちゃった?」
祥子「お母さん・・・もう・・・。」
さて、スープ&パンパーティーの始まりである。
第五十八話に続く。
第五十八話に続く。第五十八話も書きます。




