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男!岩田剛太郎の秘密  作者: やのへい
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第五十三話 生徒会の大問題

職場体験、ポンプ操法の続きである。翌日、生徒会で問題発生。

第五十三話 生徒会の大問題


その男の名は、岩田剛太郎。

高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。

見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。

頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。

ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。


 翌日、職場体験最終日である。訓練を一通り終え、最後にポンプ操法である。記録更新を目指し、剛太郎、田沢、野村、高山の4人がスタンバイする。職場体験担当の石井隊員も指揮者の位置につく。

石井「さあ、訓練の集大成だ。記録、期待しているからね。」

剛太郎・田沢・野村・高山「はい、頑張ります。」

石井「さあ、いこう。一高分団、ポンプ操法開始。水利は後方防火水槽、手びろめによる二重巻きホース、一線延長、始め!」

剛太郎・高山・野村・田沢「はい!」

皆、持ち場に別れる。田沢は、手順に無駄の無いよう、ポンプ車のエンジン始動、高圧装置起動と、素早く行う。1番手、剛太郎が放水銃を背負い、一気にダッシュで、放水位置まで走る。2番手、高山がホースを担ぎ、連結地点まで走る。ストライドを小さくし、足の回転を速く走る、3番手、野村もホースを担ぎ、高山とは逆に、ストライドを大きく一気に走っていく。野村が剛太郎の元へ到着、放水銃とホースを繋ぐ。2番手高山もホースを連結、放水準備完了の手を上げる。4番手田沢が、それを確認し、送水開始の発声とともに、送水とボタンを押す。ホースに水が送り込まれる。剛太郎の元まで、送水される。放水開始のかけ声とともに、剛太郎が、標的に放水する。標的が倒れる。そこで、石井がストップウォッチと止める。

石井「はい、そこまで。おおーーー、君たち・・・、ほんとに凄いな。素晴らしいよ。」

田沢「何秒でました?」

そこへ、他の3人もダッシュで戻ってくる。

野村「何秒ですか?」

高山「走り方変えてみました、良いタイム出たでしょ。」

剛太郎「石井さん、何秒ですか?」

石井「41秒!やったね。目標タイムを達成できたね。」

野村「ヨッシャー、41秒だー。」

剛太郎「41秒って、やっぱり凄いんですか?」

田沢「階段上りの甲斐があったね。」

高山「ホース担いでだから、ストライド走法からピッチ走法に変えてみたよ。」

石井「うんうん、皆の創意工夫が、この41秒という結果だと思うよ。」

剛太郎達4人が、輪になって喜んでいた。そこへ、消防隊員4人がやってくる。

消防隊員1「石井さん、呼ばれました?」

消防隊員2「ポンプ操法ですか?」

消防隊員3「僕たちもやるんですか?」

消防隊員4「石井、赴任していきなり、ポンプ操法か?」

消防隊員4は、剛太郎と間違われた、レンジャーの石田隊員である。

石井「じゃあ、お手本を披露するか。」

石田「みんなは、何秒出たんだ?」

石井「41秒だよ。」

石田「はあーーー?41秒?そのストップウォッチ壊れてないか?」

石井「いや、この子達、本物だよ。」

石田「そうか、石井が言うなら間違いないな。じゃあ、やろうか。俺は1走でいいか?」

石井「ああ、そのつもりだ。2走、4番手、指揮者は、いつも通り。僕は3走やるね。野村君、計ってくれるかな、陸上部なら得意だよね。」

野村「はい、きっちり計ります。」

さあ、現役消防隊員の模範演技が始まる。

消防隊員1「ポンプ操法開始。水利は後方防火水槽、手びろめによる二重巻きホース、一線延長、始め!」

石田・消防隊員2・石井・消防隊員3「はい!」

皆、持ち場に別れる。消防隊員3は、素早くポンプ車のエンジン始動、高圧装置起動を行う。1番手、石田が放水銃を背負い、一気にダッシュ、放水位置まで走る。2番手、消防隊員2がホースを担ぎ、連結地点まで走る。3番手、石井もホースを担ぎ、一気に走っていく。石井が石田の元へ到着、放水銃とホースを繋ぐ。2番手もホースを連結、放水準備完了の手を上げる。消防隊員3が、それを確認し、送水開始の発声とともに、送水とボタンを押す。ホースに水が送り込まれる。石田の元まで、送水される。放水開始のかけ声とともに、石田が、標的に放水する。標的が倒れる。そこで、野村がストップウォッチと止める。

野村「はい、時計止めました。」

全員が、野村の元に集まってくる。

石井「どうだった。」

石田「何秒だ?」

野村「・・・41秒です。皆さん、凄いです。やっぱり、本職ですね。」

石井「まあまあかな。」

石田「おいおい、高校生に負けられんと、必死で走っていたのはどちらさんかな。」

剛太郎「流石ですね。」

野村「僕らとは、規律が全然違いますね。一つ一つの動きの正確性が凄いです。」

高山「確かに、キビキビとした動きは、僕らは出来ていない。」

田沢「消防隊員は、凄いですね。」

石井「僕たち本職と、ほとんど同タイムの君たちが凄いんだよ。」

石田「特に3走の野村君は凄いな。消防士志望なんだろ。来年度、うちの3走は空けとくからね。」

石井「僕は2走にまわりますね。」

石田「指揮者じゃないのか?」

石井「おいおいおい、2走でいかせてくれよ。」

和んだ雰囲気で終了となった、剛太郎達の消防署職場体験であった。帰りにこっそり、感謝状を貰う剛太郎であった。


 翌日の一高。職員室で火災現場の一部始終を説明した剛太郎、先生達より、あまり暴走しないよう注意を受けた。職員室から出てくる剛太郎。

剛太郎「今回は、ちょっとやり過ぎたかな。」

独り言を呟く剛太郎。職員室の横の生徒会室を通りすぎようとしたとき、生徒会室からの気になる話声を聞いてしまう。

生徒会委員1「今度はいった、森山君駄目だね、使えないね。」

生徒会委員2「そうですか?彼なりに一生懸命やっていますよ。」

その話し声に耳を傾ける剛太郎。窓の際に立ち、その話に聞き耳を立てている。

生徒会委員1「田口君は、まだ、一緒に活動していないからだよ。」

田口「堺先輩は、一緒に活動したんですか?」

堺「ああ、こないだの生徒総会の議事録を頼んだんだけど、全然駄目だったよ。」

田口「えっ、議事録って、堺先輩の仕事じゃなかったですか?」

堺「いや、森山君が、是非やらしてくれってことで、やらせてみたんだけどね。」

田口「書き方とか、教えたんですか?」

堺「まあ、議題と決定事項を中心に書けば良いと言っておいたんだけどね。」

田口「議事録あります?」

堺「これだよ。」

田口「・・・まあ、ちょっと・・・ですね。作文になっていますね。」

堺「だろ、森山君、使えないよな。」

田口「まあ、初回ですから、次は大丈夫じゃないですか?」

堺「森山君・・・、辞めればいいのに・・・。」

田口「えっ、それは、あんまりじゃ・・・。」

堺「どうせ、使えないんじゃ、居てもしょうがないだろ。」

田口「彼、一年生ですし、教え込んでいけば、大丈夫じゃないですか?」

堺「どうかな、頭の回転も鈍そうだし、僕としては、辞めて欲しいな。」


 生徒会室で、2年生田口と3年生堺の話を聞いてしまった剛太郎。足早に教室を目指す。1組の教室に戻る途中、5組の教室に入る剛太郎。5組には柔道部の久保山がいる。

久保山「おお、剛太郎、どうした?何か連絡か?」

剛太郎「いや、田中君居るか?」

久保山「ああ、田中君?居るよ、おーい、田中君。」

久保山に呼ばれた田中、田中は生徒会長である。また、剛太郎とは中学の時、同じ塾に通っていた生徒である。

田中「あ、剛太郎君、どうしたの?」

剛太郎「田中君、ちょっといいかな。」

久保山「深刻な話か?僕は席を外そう。」

剛太郎「久保山、悪いな。」

久保山が、席を外す。

田中「剛太郎君、話って何?」

剛太郎「田中君、1年に森山君って生徒会委員いる?」

田中「ああ、森山君いるよ。生徒会の仕事を一生懸命やってくれているよ。」

剛太郎「堺が、その森山君のことを話しているのを聞いてしまってね・・・。」

田中「・・・辞めればいいのに・・・かい?」

剛太郎「知ってるの?」

田中「ああ、生徒会長だからね。生徒会のことは、全て把握しているよ。」

剛太郎「森山君って、そんなにひどいの?」

田中「いや、問題は、堺の方だよ。出来ない仕事を、無理矢理押しつけて、アドバイスもしない。仕事の結果が悪いと、全て人のせい。」

剛太郎「やっぱり、そうか。」

田中「やっぱりって?」

剛太郎「いや、こないだ、堺が4組の生徒と胸ぐら掴んで喧嘩になりそうだった。喧嘩するなら僕とやろうか、柔道場で待ってるぞって言って止めたよ。」

田中「そんなことが・・・、剛太郎君、ありがとう。」

剛太郎「見逃せないな。」

田中「だな。堺の方が問題児だよ。今日の放課後、生徒会の役員会にかけてみるか。」

剛太郎「それがいいかもな。」

田中「剛太郎君も、出席してくれない。実際の話を聞いた証人として。」

剛太郎「僕は構わないよ。」

田中「じゃあ、決まりだね。堺の査問委員会だ。」


 放課後、生徒会室で役員会が行われる。3年生の役員と、2年生の田口、1年生の森山、3年生の堺も出席、尚、剛太郎も出席である。さあ、査問委員会開始である。

田中「今日の議題は、生徒会内の問題について議論していく。このメンバーについて、気になることはないかい?堺君。」

堺「別に、何もないけど。」

田中「そう、じゃあ、問題提議しよう。堺君、今回は、君の査問委員会だ。」

堺「査問委員会?何か、僕に問題でも?」

田中「ふう、自分から言って欲しかったけど・・・。じゃあ、堺君、森山君を辞めさせたいのは、本当かい?」

堺「えっ、なんで、それを・・・、田口、言いつけたな。」

田口「いえ、僕は、何も・・・。」

剛太郎「僕だよ。」

堺「剛太郎が・・・、何で?」

剛太郎「田口君と話しているのを、聞いてしまってね。それで、生徒会長へ問題提議した。」

堺「生徒会の問題だ。部外者は、口を出さないで欲しいな。」

あまりの堺の態度に、怒りを押し殺し、話し出す生徒会長田中。

田中「堺君、その態度はないだろ。それに、僕も、知っていたよ。丁度いい機会だから、証人として、剛太郎君にも僕から出席をお願いしたんだ。」

堺「言葉のあやだよ。森山君にもっと頑張って欲しいと思ってね。」

剛太郎「言葉のあや・・・、最低だな。」

堺「森山君が、仕事出来ないの、みんな知ってるだろ。もっとしっかりしてくれってことだよ。」

森山「僕のことで、皆さんに迷惑をおかけしています。本当にすみません。」

堺「ほら見ろ、森山君もこう言ってるじゃないか。」

堺の態度に業を煮やした剛太郎が立ち上がろうとする。それを制し、田中が先に立ち上がる。

田中「堺君・・・、本心か・・・・?」

堺「何か悪いことした?」

一段と冷静になる田中。

田中「分かった。じゃあ、先日の生徒会の議事録、何故、森山君に?」

堺「訓練だよ、訓練。」

田中「訓練と言うからには、その責任は任命した指揮監督者にあるということだね。任命は堺君だよね。」

堺「それは・・・、でも、僕の言う通りにやらなかった森山君の責任だろ。」

田中「僕の言う通り・・・、森山君、堺君からアドバイスは?」

森山「アドバイスは・・・、議題と決定事項書いといてと、一言だけ・・・。」

堺「アドバイスは、しているぞ。」

田中「それが・・・、アドバイス?」

剛太郎「堺、言葉が違うな。それは、丸投げと言うんだよ。」

田中「うん。丸投げだね。もし、訓練というなら、つきっきりで一緒になって、議事録を完成させるのが、セ・ン・パ・イだよ。」

堺「・・・、・・・。」

観念した様子の堺。

田中「では、ここに居る役員で、採決を採ります。堺君についてです。異議のある人は?」

一人、挙手している。森山君である。

森山「異議あります。」

田中「森山君、どうぞ。」

森山「元はと言えば、僕の実力不足です。堺先輩は、僕にチャンスをくれただけなんです。堺先輩の態度にも問題はあるかもしれませんが、僕は、堺先輩に辞めて欲しくありません。」

堺「森山君・・・。」

剛太郎「堺、人の上に立つものは、相手の苦しみ、悲しみ、喜びを自分のものとして、共有出来る者でなければならないということだよ。」

田中「堺君、森山君に言うことないか?」

堺「森山君、・・・申し訳ない。こんな僕でも、先輩と思ってくれていたなんて・・・。僕は恥ずかしい、森山君、本当にごめん。」

森山「堺先輩・・・。」

田中「では、改めて、採決を取ります。」

森山「採決取るんですか?」

田中「ええ。あ、採決の内容を言ってませんでしたね。採決の内容は、堺君を指導部長にしたいのですが、いかがでしょうか。」

剛太郎「そういうことか。」

田中「賛成の方は、挙手をお願いします。」

参加者全員が、挙手している。

田中「剛太郎君、君は、部外者だから。採決には関係ないよ。」

剛太郎「あ、そうだね。思わず手を上げちゃったよ。」

堺「生徒会のみんな、剛太郎、すまない。僕もこれからは、態度を改めるよ。」

田中「指導部長だからね。部下の責任は、全て、指導部長の責任になるからね。」

堺「ああ、望むところだ。」

森山「堺先輩、これからもよろしくお願いします。」

堺「こちらこそ。今まで本当にごめんね。」

剛太郎「雨降って地固まるか。やるな、生徒会長。」

田中「僕は生徒会長ですから。」

険悪ムードから、一気に結束力を高めた生徒会となったのであった。


第五十四話に続く


第五十四話に続く。第五十四話も書きます。

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