第五十話 ソフトバレートーナメント
いよいよ、クラスマッチも大詰めを迎える。1組優勝なるか。
第五十話 ソフトバレートーナメント
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
クラスマッチ準決勝である。相手は9組である。9組には、柔道部の坪井がいる。坪井が剛太郎に、話しかけてくる。
坪井「剛太郎、Bチームか?」
剛太郎「いや、僕はCチームだ。」
坪井「井上君は?」
剛太郎「井上は、Aチーム。」
坪井「じゃ、Bチームは勝てるな。」
近くに居た、1組Bチームの高山が、話に加わってくる。
高山「どうせ、1組Bチームは、弱いですよーだ。」
坪井「まあ、その分、AチームとCチームは、強そうだな。まあ、お互い、正々堂々がんばろう。」
剛太郎「ああ、望むところだ。」
さあ、準決勝開始である。井上Aチーム圧勝、高山Bチーム惨敗。またしても、剛太郎Cチームに決勝進出がかかってくる。
剛太郎「さあ、みんな、いくぞ。」
本田・森本・野村・江上「おおー。」
Cチームの試合開始である。一進一退の攻防が続く。後衛の森本、野村、村上が必死でボールをレシーブし、本田がトスと回し、江上と剛太郎が、スパイクを決めていった。残り1分、ワンプレーである。森本のサーブである。
本田「剛太郎君、江上君、ブロック意識してね。」
江上・剛太郎「おう。」
9組が、サーブをレシーブし、トス、スパイクする。江上がブロックに飛ぶが、部録したボールが大きく自陣コート外にはじかれる。
江上「しまった・・・。」
本田「ブロックアウトを狙われた!」
野村「任せろーーー。」
俊足の野村がボールに追いつきレシーブする、セッター本田のところまでは、届かず、ボールは、村上のところへ。慌てず、落ち着き、オーバーハンドで、江上にトスを上げる。
江上「村上君、ナイストーーース。」
二段トスとなったが、それに合わせ、江上が豪快にスパイクを決める。
江上「アターーーク。」
ズドドン!江上の豪快なスパイクが決まる。
審判「ピピーーー。試合終了。1組の勝利。」
1組全員「やったーーー。決勝進出だー。」
Cチームメンバーが、村上の元に駆け寄る。
剛太郎「村上君、やったね。ナイストスだったよ。」
村上「本田君に、オーバーハンドパスのコツを教わってたんだ。爪を立てて、受け皿みたいにして、腕を使わず、膝の屈伸でトスを上げるのが一番簡単だって。」
本田「うんうん。村上君、完璧だったよ。」
野村「オーバーハンドは、僕より上手いんじゃない?」
森本「野村君の、ダッシュレシーブも凄かったよ。」
江上「ブロックアウト覚悟したもんな。」
剛太郎「さすが、学校一のスプリンターだね。」
野村「いや、それ程でも・・・。」
決勝進出に、ざわめき立つ1組であった。
さあ、いよいよ、決勝である。やはり、バレー部リベロ近藤率いる4組との試合となった。1組女子は、2階応援席から応援である。4組近藤が、江上に話しかけてくる。
近藤「やはり、1組、来たね。」
江上「僕のスパイク止められるかな。」
近藤「ソフトバレーだからな。バレーと違って、スピード無いから、止められるよ。」
江上「止められないように、角度付けていくからな。」
近藤「あとは試合で。まあ、村上狙えば、勝てるからな。」
剛太郎「そうかな。」
近藤「3日練習したくらいで、上手くなるわけないだろ。」
剛太郎「男子、3日すれば、刮目して見よ。」
本田「村上君を穴と見ない方が良いよ。」
近藤「試合で分かることだ。」
審判「さあ、決勝戦を始めます。1組対4組です。全員整列。礼。」
試合開始である。井上Aチームはからくも勝利。高山Bチームは惜敗。Cチームに勝敗が託された。
剛太郎「さあ、僕たちが勝てば、優勝だ。いくぞ。」
江上「本田君、とりあえず、僕メインでトス上げてね。僕にブロックが集中したら、剛太郎くんのAクイックでいこう。」
本田「分かった。」
森本「僕ら後衛は、レシーブ上げまくるね。」
野村「村上君、必殺回転レシーブを近藤君に見せてやれ。」
村上「自分の出来ることを、頑張るよ。」
江上「行こう。」
剛太郎・本田・野村・森本・村上「おおーーー。」
1組野村のサーブで試合が始まる。4組がレシーブ、トス、スパイクの流れ。やはり、村上が狙われる。村上の左にスパイクが打ち込まれる。村上が左手でレシーブ、そのまま回転する。村上の回転レシーブに驚きを隠せない4組近藤。
近藤「マジか・・・。」
本田にボールがかえり、江上へトスを上げる。江上が、えぐい角度でスパイクを決める。
江上「アターーーク。」
スパイクが決まる。
江上「オッシャー。」
2階女子の声援「1組いいぞー、頑張ってー。」
近藤「回転レシーブだと・・・、まぐれだろ、もう一回、村上狙いだ。」
野村のサーブが続く。4組がレシーブ、トス、スパイクの流れ、村上狙いである。村上が必死で右手一本でレシーブ、そのまま回転する。本田にボールがかえってくる。江上へトス。再び、えぐいスパイクを決める。
近藤「やばいな。ブロック、江上に3人ついて止めろ。」
三度、野村のサーブである。4組がレシーブ、トス、スパイク。今度は、森本君狙い。運動神経のいい森本、軽くレシーブ、本田にボールをかえす。江上に3人ブロックがつくのを確認した本田。
本田「剛太郎君、いくよ。」
剛太郎「おう。」
江上がおとりとなりジャンプ。そこにつられる4組前衛3人。そこに、本田がジャンプトス。剛太郎もジャンプ。剛太郎がスパイク。
剛太郎「おるあーーー。」
ズドーーーン。二人の必殺Aクイック炸裂である。
近藤「Aクイック・・・、中学の時も本田のAクイックにやられたんだった・・・。」
試合は進み、結果、なんと、Cチーム、8-0で剛太郎Cチームの勝利となった。
剛太郎「ヨッシャーーー。優勝だーーー。」
江上「パーフェクト。」
森本「チームワークの勝利。」
野村「サーブ練習しこたまやって良かった。」
村上「僕も役に立てたかな。」
近藤「こんなはずじゃ・・・。」
江上「近藤、うちのチームを舐めすぎだ。ライトアタッカーの僕のスパイク、センター剛太郎のAクイック、本田君のトスワーク、野村君の安定サーブ、森本君のカバーリング、村上君の回転レシーブ、チームとして、結構、完璧だぞ。」
近藤「確かに、村上がここまでやるとは思っていなかった。」
村上「回転レシーブ、オーバーハンドパスだけ、必死で練習したからね。」
剛太郎「適材適所、自分の役割を理解し、しっかりそれを全うしようとする意識。」
本田「バレーチームとしても、完璧なチームと思うよ。」
近藤「役割と意識か。バレー部の僕が村上に教えられたよ。」
村上「近藤君のレシーブは凄いね。さすが、リベロだね。」
近藤「まあ、アタッカーがスパイク打つ瞬間、体の向きや腕の角度で、コースを予測するんだ。」
江上「近藤は、予測が上手いからな。だから、リベロなんだよ。」
村上「予測か、僕には無理だね。」
近藤「村上には、回転レシーブがあるじゃないか。逆に教えて貰いたいな。」
本田「柔道場の隅で、練習だよ。」
江上「剛太郎、今度、うちの後衛に受け身を教えてくれ。」
近藤「僕からも頼む。」
剛太郎「じゃあ、副主将の背負い投げを体験して貰うかな。」
近藤「副主将って、内田?」
江上「あ、近藤と柔道部の内田も同じ中学じゃなかったっけ?」
近藤「中学の体育で、柔道があったんだけど、内田におもいっきり背負い投げ掛けられた・・・。」
剛太郎「内田の背負い、半端なく痛いだろ。」
近藤「内田の背負い投げは・・・、やだーーーー。」
剛太郎「僕もやだー。」
近くを歩いていた、2組の内田が寄ってくる。
内田「何、何?僕の話?」
剛太郎・近藤「何でもない。」
クラスマッチは、1組の優勝で幕を閉じた。
放課後、剛太郎と祥子が、一緒に下校である。
祥子「剛太郎君、クラスマッチ優勝おめでとう。」
剛太郎「みんなのチームワークの勝利だよ。団体競技はいいね。みんなで一つになれるから。」
祥子「柔道も団体戦あるじゃない。」
剛太郎「でも、基本的には個人戦だもん。みんなで一つのボールをってわけにはいかないよ。」
祥子「みんなで一人を投げる。」
剛太郎「それは、ないな。まあ、立ち稽古っていって、一人に何人も向かっていく稽古はあるけどね。」
祥子「球技は、チームワークが一番なのね。」
剛太郎「あと、祥子ちゃんのハチマキのお陰かな。」
祥子「気持ち入れて、縫いましたから。」
剛太郎「ありがとうございました。」
祥子「あ、明日から、職場体験だよね。剛太郎君は、何処に行くの?」
剛太郎「消防署だよ。」
祥子「消防士さんか。」
剛太郎「そう、ポンプ操法とか、訓練みたい。祥子ちゃんは?」
祥子「私は、小学校。」
剛太郎「ちょっと早い、教育実習だね。」
祥子「本当は、中学や高校が良かったんだけど、小学校しかなくてね。」
剛太郎「僕も、警察が良かったんだけど、さすがに警察署はなくて、それで消防署。」
祥子「まあ、警察官と消防士、命掛けの仕事に変わりはないもんね。」
剛太郎「高校なら、一高に職場体験させてくださいって、先生に言ってみたら良かったのに。」
祥子「それは、先生たちが嫌がるし、困るでしょ。」
剛太郎「確かに、先生たちのプライベートや、職員室でのやりとりもやりにくいだろうからね。」
マモリン「消防車乗れるの?」
リキリン「はしご車あるかな?」
クマリン「格好いい車に乗れていいな、二人とも。」
祥子「小学校には、小さい子いっぱいだから、クマリン人気者になるわよ。」
クマリン「人気者・・・、うん、楽しみだ。」
剛太郎「まあ、消防署では、訓練中心みたいだから、トレーニングと思って頑張るよ。」
祥子「ポンプ操法って?」
剛太郎「ポンプ車から、実際に水を放水する訓練らしい。」
祥子「まあ、お互い、頑張りましょ。」
剛太郎「頑張ろう。」
祥子「あ、忘れてた。」
祥子がバックから、パインアメを取り出す。
祥子「はい、優勝賞品、パインアメ。」
剛太郎「賞状よりこっちの方が嬉しいや。」
剛太郎と祥子、二人仲良く、家路を目指すのであった。
第五十一話に続く。
第五十一話に続く。第五十一話も書きます。