第五話 遊園地でついにパワー炸裂
遊園地に来た、剛太郎と祥子。そこへ邪魔が入り、剛太郎のパワーが炸裂する。
第五話 遊園地でついにパワー炸裂
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
岩田家、朝6時半。
朝ご飯中の剛太郎と母幸子。
剛太郎「ごちそうさま。」
母幸子「お茶碗そのままでいいから。」
剛太郎「父さんと今日子は?」
母幸子「まだ、寝てるみたいよ。昨日遅くまで、話してたみたいだから。」
剛太郎「ふーん、じゃ行ってきます。」
母幸子「行ってらっしゃい。帰りは夕方?」
剛太郎「うん、遅くなるときは、電話するよ。」
クマちゃんスマホで合図する剛太郎。
玄関で見送る母幸子。
一方、夏目家、6時半。
お化粧中の祥子。
祥子母律子「祥子、もう、6時半よ。」
祥子「うん、分かってる。」
祥子母律子「バッチリね。我が子ながらとっても美人、お母さんの若い頃を思い出すわ。」
祥子弟蒼太「随分、めかし込んだね。」
祥子「普通よ、フツー。」
祥子弟蒼太「昨日すれ違ったの剛太郎さんかな。聞いていた体格と同じだから、多分あの人だと思うけど、柔道部の主将だよね。見るからに強そうだったな。」
祥子「多分そうだよ。」
祥子母律子「帰りは何時くらい?」
祥子「6時くらいかな、遅くなるときは、電話するからね。」
祥子弟蒼太「おれも後で、行こうかな。」
祥子「お邪魔虫は、来なくていいから。じゃあ、行ってきます。」
祥子母律子「行ってらっしゃい。」
駅の噴水前で、剛太郎が待っている。
時間は7時5分。
祥子が走ってくる。
祥子「剛太郎くーん、遅れてごめーん。」
剛太郎の前に立ち、息を整える祥子。
剛太郎「夏目さん、大丈夫だよ、僕も今来たところだから。」
ポリポリ頭をかく剛太郎。
深呼吸する祥子。
祥子「出がけに色々聞かれちゃって、遅れちゃった。ゴメンね。」
微笑む剛太郎。
剛太郎「うちもだよ。」
祥子「じゃ、行きますか。」
歩き出す二人。
剛太郎の格好を見て、ちょっとびっくりの祥子。
祥子「それ、外出用なの?」
剛太郎の服装は、迷彩のシャツに、迷彩のズボン、編み上げブーツに、黒のベルト、バックはクマちゃんボディバック。
剛太郎「うん、外出用の服は、全部迷彩だから。ファッション興味ないし、悩まなくていいから。通常迷彩、デザートタイプ、スノータイプもあるよ。」
祥子「バックのクマちゃんは、いいの?」
剛太郎「バックはワンポイントで、いいかなって。バックまで迷彩だと、自衛隊の人によく間違われたから。」
祥子「まあ、その体格だし、いきなり仲間と間違われて、連れてかれるかもね。」
剛太郎「うん。2回ぐらい、おい、いくぞってトラックに乗せられそうになった。」
祥子「あるんかーい。」
剛太郎「それで、ワンポイントで、クマちゃんボディバック。」
祥子「いや、ワンポイントってデカいでしょ。逆に、クマちゃん突っ込まれたりしないの?」
剛太郎「出がけに妹のバックと間違えたとか言って、何とかしのいでる。」
祥子「大変だね、でもそれカワイイよ。ボディバックは一つなの?」
剛太郎「薄手の夏用もあるよ。ポシェット系はさすがに手を出してない。」
祥子「その体でポシェットって、娘さんのですかって思われるね。」
剛太郎「その手があったか。」
祥子「いやいや、それはやめとこう、ボディバックは柄に見えるかもしれないけど、ポシェットはさすがに浮いて見えるよ。」
剛太郎「了解。」
切符を購入し、駅のホームを目指す二人
ホームに上がろうとエスカレーターに乗ろうとするが点検中。
祥子「階段で行こう。」
階段の下で、大きな荷物を持った、おばあちゃんを発見する祥子。
祥子「おばあちゃん、荷物持ちましょうか?」
と声を掛ける祥子。
おばあちゃん「ありがとうね。お願いできますかね。」
祥子「剛太郎君、荷物持ってあげて。」
剛太郎「了解。」
祥子とおばあちゃんの荷物を持った剛太郎の二人が、階段を上る。
おばあちゃんも一歩一歩、手すりにつかまりながら上がってくる。
剛太郎達が、階段の半分まできたときに、おばあちゃんはその半分。
剛太郎「夏目さん、荷物持てる?」
おばあちゃんの荷物を祥子に渡し、おばあちゃんの元に駆け下りる剛太郎。
おばあちゃんを抱きかかえる。
剛太郎「おばあちゃん、しっかりつかまってて。」
一気に階段を駆け上がる剛太郎。
おばあちゃん「ほえ~~~。」
祥子「ちょ、ちょっと待ってよ剛太郎君。」
祥子を追い抜き、階段上まで到着した剛太郎、ゆっくりおばあちゃんを降ろす。
荷物を抱え、階段を上がってきた祥子。
祥子「ふう、ふう、とーちゃーく。はい、おばあちゃんお待たせ。」
おばあちゃん「ありがとうね。お二人さん。やっぱり、自衛隊の人は強いね。」
祥子「やっぱり、勘違いされてる。けど、いいな~。」
剛太郎のお姫様だっこ、ちょっと羨ましい祥子であった。
電車に乗り、遊園地を目指す二人。
剛太郎「夏目さん、今日は、綺麗ですね。白のワンピースも似合ってますよ。」
祥子「あ、敬語が出てるぞ、それに、今日も、でしょ。」
剛太郎「メイクしてると、どっかのアイドルみたいだよ。」
祥子「カワイイ?」
剛太郎「可愛くなるために努力してる、夏目さんが可愛いよ。」
祥子「・・・剛太郎君・・・。」
顔が赤くなっていく祥子。話題を変える祥子。
祥子「ねえ、ねえ、剛太郎君、絶叫系マシンは好き?」
剛太郎「好きだけど、乗れるのが少ないもん。」
祥子「あ、そうか。大きすぎて、逆に駄目なのか。」
剛太郎「そう、この間も、ジェットコースターで安全バーが降りなくて、乗れなかったよ。1時間待ったのに乗れないなんて、並んでるときに言ってほしかった。」
祥子「ふーん。でも係員さんは、イケるって思ったんじゃない?」
剛太郎「そうかな。」
他愛もない話をしてるうちに、遊園地前の駅に到着。
遊園地に入ろうとする二人。剛太郎がフリーパス二枚購入。財布を取り出す祥子。
祥子「わたしの分、払うね。」
と、3000円を取り出し、剛太郎に渡そうとする。
剛太郎「要らないよ。」
祥子「えっ、違うよ。こないだの罰は、わたしを遊園地に連れて行くってだけで、おごってって意味じゃないから。」
剛太郎「うん。分かってる。」
祥子「じゃ、なんで?」
剛太郎「父さんに言われたんだ。男が女に金を出させるもんじゃないって。」
祥子「はー、武士だね。」
剛太郎「うん。武士だ。じゃ行こう。」
剛太郎の後ろをついていく祥子。
祥子「三歩下がって、影踏まずってやつか。」
剛太郎「何?」
祥子「ううん、何でも無い。」
遊園地で一通り遊んだ二人。
祥子「あー疲れた。剛太郎君、ソフトクリーム食べよっか。」
剛太郎「ああ、いいよ。買ってくるね。」
財布を取り出そうとする祥子。首を横に振る剛太郎。
祥子「あ、武士か。」
剛太郎「そう、武士だ。じゃ買ってくるね。あ、クマちゃんバック持ってて。あ、あそこのベンチで待っててね。」
と指を指す剛太郎。
ベンチでクマちゃんバックを膝の上に置き、待つ祥子、そこへ人影が。
祥子「剛太郎君、早かっ・・・稔?」
そこに立っていたのは、秀英高の稔だった。友人と来ていた。
稔「ナンパしに来てみたら、大物が居たよ。」
稔友人「めっちゃ、可愛いじゃん、稔の知り合い、一人なの?」
祥子「二人だけど・・」
稔友人「じゃ、もう一人は、トイレかな?」
稔「いいじゃん、二人なら、丁度俺たちも二人だし、ダブルデートだな。」
祥子「稔、わたし彼氏居るって言ったよね。もう、わたしにつきまとわないで。」
稔「こんなところで会うのも運命だよ。あんな筋肉馬鹿より、俺の方がいいって。」
祥子「筋肉馬鹿?剛太郎君、頭も良いんだから。」
怒りだす祥子。強引に手を引っ張る稔。
祥子「放してよ。もう。」
クマちゃんバックで稔を叩く祥子。
稔「あいつにもらったバックか?」
バックを奪う稔。バックを取り返そうとする祥子を抑える稔友人。
稔「こんなバック、こうだ。」
バックを地面に叩きつけ、足で踏む。
バックから小さい声。
クマちゃんバック「・・・イタ・イ・・・タス・ケテ。」
ソフトクリームを買った剛太郎。
剛太郎「夏目さん、イチゴが好きって言ってたから、ストロベリーソフト。夏目さん待ってるだろうな。急ごう。」両手に、ストロベリーとブルーベリーのソフトクリームを持つ剛太郎。
次の瞬間、剛太郎に声が聞こえる。
・・・「イタイ・・・タスケテ・・・ゴウタロウ。」
剛太郎「えっ、クマちゃん?」
ベンチの方を見る剛太郎、クマちゃんバックが、稔に足蹴にされているのを見てしまう。
覚醒剛太郎「うううう、ううぉーーーーーーーーー。」
ぶち切れ仁王降臨。
近くにいた男の子に、ソフトクリームを渡す剛太郎。
剛太郎「ボウズ、コレ持ってろ。」
あまりの迫力に固まる、小学校低学年の男の子。
ボウズ「・・・はいっ!」
泣きそうになりながら、ソフトクリームを受け取る、男の子。
稔めがけ、一気に爆走。
暴走剛太郎「おいーーーーーーーー!」
稔が振り返る。
鬼の形相で爆走してくる剛太郎。
暴走剛太郎「お・ど・れ・らーーーーーーー!」
そのまま、ショルダータックルで、稔を吹っ飛ばす。
稔「ひやー、またーーー、カクッ。」
5m程吹き飛び気絶する稔。
振り返り、稔友人を睨む、剛太郎。
稔友人「ひいっ。」
祥子の手を放す稔友人。剛太郎の元に走り、後ろに隠れる祥子。
剛太郎「俺の大事なものに、手を出すな!」
稔友人に近寄り、その胸ぐらを掴み、片手で持ち上げる。
稔友人「ごめんなさい、ごめんなさい。」
祥子が、その腕にぶらさがり、止めに入る。剛太郎は、祥子ごと更に持ち上げる。
祥子「ちょ、ちょっと、剛太郎君、やめて、降ろして。おーーーい。」
剛太郎の頬を叩く祥子。はっと、我に返り、二人を降ろす剛太郎。
稔友人「ひいっ。」
尻餅をつく稔友人。
遊園地の警備員が、飛んでくる。
警備員「君たち、なにをしているんだ。」
祥子「何でもありませーん。高い高いしてもらってるだけでーす。」
警備員「高い高いって。」
気絶している稔を見て、近づく。
警備員「君、大丈夫か?」
目を覚ます稔。
稔「この男がいきなり襲ってきたんです。何とかしてください。」
警備員「それは、本当かね。」
剛太郎に詰め寄る警備員。
ボウズ「違うよ。」
ソフトクリームを2本持った、小学生が近づいてくる。
ボウズ「そのお兄ちゃん二人が、お姉ちゃんいじめてて、クマちゃん踏んづけてた。自衛隊のお兄ちゃんが、助けたんだ。」
稔と稔友人、剛太郎と祥子を順々に見る警備員。
警備員「それは、本当かね。」
小学生がトコトコ稔の前に立ち、稔に指を指す。
ボウズ「このお兄ちゃんが、悪い。」
立ち上がる稔と稔友人。
稔「おい、逃げるぞ。」
稔友人「待ってくれ。」
オロオロ逃げ帰る二人。
警備員「大丈夫ですか?」
剛太郎と祥子に声を掛ける。
祥子「お騒がせしました。申し訳ありません。」
頭を深々と下げる祥子。
剛太郎「すみませんでした。」
剛太郎も頭を下げる。
警備員「気をつけてくださいね。他のお客様の迷惑になりますから。」
注意を受ける二人。
ボウズ「この人達悪くないよ、あいつらが悪いんだぞ。」
二人をかばう小学生。
警備員「分かってるよ。」
そう答え、去って行く。
小学生に近づく祥子。
祥子「ぼく、ありがとうね。」
ボウズ「だって、ずっと見てたもん。美人のお姉さんがいるなって。」
祥子「美人?あら、ありがとう。」
剛太郎「ぼく、ありがとう、そのブルーベリーソフトあげるよ。」
ボウズ「いいの?」
剛太郎「うん、でもこっちはもらうね。」
ストロベリーソフトを受け取り、祥子に渡す剛太郎。
剛太郎「はい、夏目さん、お待たせ。」
にっこり微笑む祥子。
再び、小学生に話す祥子。
祥子「ぼく、お名前は?」
ボウズ「和夫、田中和夫。」
祥子「そう、和夫君、ほんと、ありがとね。」
和夫「うん、これありがとう。」
和夫がブルーベリーソフトを食べ出す。
和夫父「おーい、和夫。いくぞー。」
父親らしき男性が呼んでいる。
和夫「これもらっちゃった。」
和夫父「すみません。いいんですか。」
祥子「いえいえ、こちらこそ、助かりました。」
和夫「お兄ちゃん、お姉ちゃん、バイバーイ。」
剛太郎・祥子「バイバーイ」
祥子「ふう、大変だったね。」
剛太郎「そろそろ、帰ろうか。」
祥子「うん、帰ろ。」
遊園地を後にする二人。
祥子「剛太郎君、さっきのことなんだけど。おれの大事なものって何?」
剛太郎「えっ、僕そんなこと言ってた?」
祥子「覚えてないの?」
剛太郎「うん。夏目さん見つけた後、意識が飛んで、気がづいたら、あの男と夏目さんを持ち上げてた。」
祥子「でも、凄いパワーよね、剛太郎君。柔道やってるとあんなに力つくの?」
剛太郎「うん。つくよ。」
祥子「へえー。わたしも柔道やってみようかな。」
剛太郎「えっ。」
祥子「うそうそ、稔がちょっかい出してきたら、剛太郎君に守ってもらうから、わたしはか弱い女の子でいいの。」
剛太郎「か弱い?」
祥子「か弱いでしょ。」
仕方なくうなずく剛太郎、決して気が強いといえない剛太郎でした。
その後、この日は、二人それぞれ、何事もなく家路につきましたとさ。
第六話に続く。
第六話に続く。第六話も書きます。