第四十八話 ソフトバレーの特訓
ソフトバレーの練習開始である。課題はレシーブ。
第四十八話 ソフトバレーの特訓
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
放課後の体育館、1組男子20名が集まって、ソフトバレーの特訓である。クラスマッチは3セットマッチであり、3チームに別れる。6名、7名、7名である。ルールとして、1チームの試合が10分で行われ、3セットの内、2セット取った方の勝ちとなる。クラスは9クラスあり、3ブロックに別れ、リーグ戦を行い、トップ抜け3チームと、2位チームで総得点が多かったチームが、敗者復活1チームとなる。1組は、4組、8組と同じブロックである。
剛太郎「チーム分けしよう。」
井上「剛太郎と僕は別れよう。」
高山「とりあえず、背の順だな。」
野村「僕は、球技、全く駄目だからね。」
剛太郎「とりあえず、背の順。井上はAチーム、高山Bチーム、僕がCチームね。あと、背の順で並んでいってね。」
1組の男子が、A、B、Cチームに分かれる。Cチームは、剛太郎、本田、江上、野村、森本、村上の6名である。
本田「僕、Cチームだね。あ、僕、中学の時、バレー部だったから、セッターやるね。江上君はバレー部の本職だよね。」
江上「部と一緒で、ライトアタッカーでいいか?」
剛太郎「じゃ、前衛は、僕と本田君と江上君ね。後衛は、野村君、森本君、村上君ね。」
村上「僕、何にも出来ないから、お荷物だね。」
野村「僕も、自慢じゃないが、球技ものすごく下手だよ。」
森本「僕、野球馬鹿だから、バレーは、ほとんどやったことないな。」
江上「剛太郎、とりあえず、レシーブから練習してみるか。」
レシーブ練習をする6名。野球部の森本は、そこそこ、出来そうである。陸上部の野村君は、フットワークはさすがだが、ボールの扱いに慣れていない感じである。村上君は、吹奏楽部、運動自体が、苦手そうである。
江上「胸から上のボールは、オーバーハンドパス、胸から下のボールはアンダーハンドだよ。うーん、後衛センターが森本君、後衛ライトが野村君、後衛レフトが村上君だね。」
村上「ここが、一番ボールがこなさそうだね。」
江上「みんな、右利きだからな。ただ、左利きのアタッカーと、ライトからストレートに狙われたら、村上君のところにくるよ。」
剛太郎「江上君と本田君で、スパイク打ってみて。僕ら4人がレシーブ練習するよ。」
江上「剛太郎は、ブロックに飛んでくれないか?」
剛太郎「ああ、そうだね。僕はセンターだったね。じゃあ、ブロック飛ぶよ。」
セッター本田のボールを、江上がスパイクし、剛太郎がブロック、他3人がレシーブする。
江上「森本君、なかなかやるね。野村君、足早いから、ボールの下に入り込んで、腕の力を使わずに、足の屈伸で腰からボール上げるようにしてみて。村上君は、無理せず、自分のところに飛んできたら、とりあえず、アンダーで上げて。」
本田「剛太郎君、江上君、ちょっと代わって。Aクイックやってみない?」
剛太郎「Aクイック?」
江上「おお、剛太郎のAクイックなら、武器になるな。やってみよう。」
剛太郎と江上が交代する。
本田「剛太郎君、僕がトスを上げるのと同時に、ジャンプして打ってみて。」
剛太郎が本田にボールを投げ走り込む、走り込んでジャンプした高さに丁度合うように、本田がジャンプトス、剛太郎がスパイクする。
剛太郎「おらあっ。」
ズドン。江上のブロックが間に合わず、スパイクが決まる。
江上「ははっ、この速攻は、使えるね。多分、僕でも止められるか分からんな。」
森本「えぐいね。」
野村「真下にスパイクされたら、とれないね。」
和気あいあいと練習する6人。ただ、村上君だけ、元気がない。
剛太郎「村上君、どうした?」
村上「みんな、いいな、運動部だもんね。本田君も、今は違うけど、経験者だもんね。やっぱり、お荷物は、僕だね。」
剛太郎「村上君、お荷物なんかじゃないよ。だって、Cチームは6人きっかりしかいないから、村上君居ないと、相手が不戦勝になるよ。それに、練習すれば、上手くなるよ。」
野村「そうそう、練習だよ。僕、オーバーハンドパスすると、バックパスになっちゃうよ。ほら。」
森本「自分の役割をしっかりやればいいんだよ。」
井上「ルールでは、ローテーション無いから、ポジションは固定だよ。しっかり自分のポジションの役割を頑張ればいいんだよ。あと、声かけあっていこう。お見合いして、ボールを誰も打たなくて決められるのが、一番もったいない。」
森本「アウトのボールも声出していこう。球技はチームワークだよ。」
野村「いいな、個人競技は、自分との戦いだからな。」
本田「でも、他に迷惑掛けることはないもんね、個人競技なら。」
野村「それはあるね。」
江上「村上君は、吹奏楽で、楽器は何の担当?」
村上「トロンボーンだよ。」
剛太郎「じゃあ、肺活量あるね。」
村上「それは、自信あるかも。」
江上「ボールを指揮者と思って、目を離さないこと。あと、ライトアタッカーの動きを見ててね。」
村上「それが僕の役割だね。」
本田「そう、背伸びしたって仕方ないよ、自分の出来ることを精一杯やればいいんだよ。」
村上「みんな、ありがとう。」
江上「さあ、練習再開。井上のAチームと僕らCチームが勝てば、優勝も狙えるぞ。」
横のコートで練習していた、Bチームのサッカー部高山が気づく。
高山「Bチームも頑張るぞ、最悪、足でボール上げるからな、今はいいんだろ?」
江上「ああ、高山なら、足の方が良いかもしれんな。」
剛太郎「セパタクローだな。」
1組が和気あいあいと練習している。そこへ、3組も練習に来た。3組の一人が1組に声を掛ける。
近藤「優勝は、3組だよ。バレー部4人居るからな。」
バレー部の近藤が声を掛けてきた。それに反応する江上。
江上「近藤、3組のバレー部は、セッターとレシーバーだけだろ。アタッカーは、居ないよな。」
近藤「ソフトバレーだから、アタックスピードより、レシーブ力が強いチームが有利だぞ。」
江上「まあ、確かにな。」
近藤「お、村上は、江上と同じチームか。江上、こいつ運動音痴だから使えないぞ。同じ中学だったから、よくしってるんだ。」
江上「そうか、忠告ありがとう。ただ、試合ではどうか分からんぞ。」
近藤「まあ、頑張ってくれ、1組とあたるのが楽しみだ。」
そう言って、奥で練習を始めた3組であった。
村上「ゴメンね。僕のせいで。」
剛太郎「気にしない、気にしない。」
江上「あと、30分で切り上げよう。」
その日の練習を終えた、1組男子であった。
練習を終え、下校する剛太郎。校門で祥子が待っていた。そして、歩きながら話す二人。
祥子「剛太郎君、練習どうだった?」
剛太郎「うん。1組、チームワークは、良いと思うよ。」
祥子「あ、聞いたわよ。ラグビーの授業で、2組の筬島君たちに勝っちゃったって。」
剛太郎「ああ、あれは、作戦勝ちだよ。」
祥子「作戦?」
剛太郎「うん。フォワードで僕と長身のバスケ部井上が、スクラムで頑張る。」
祥子「二人とも、ゴツいもんね。」
剛太郎「キックで、サッカー部高山が、頑張る。」
祥子「エースストライカーだもん、キック力強いもんね。」
剛太郎「バックスで、陸上部野村が、走りで頑張る。」
祥子「走ったら、誰も追いつけないでしょ。」
剛太郎「うん。その個性を発揮してもらって、勝ったんだ。細かな戦略や、パス回しとか出来ないからね。パス回されたら、2組の方が断然強いよ。」
祥子「相手の長所を活かさず、自分たちの長所を活かしたわけね。」
剛太郎「そう、相手にパスを回させないようにして、こっちは、何とか野村にボールを渡すって作戦だった。」
祥子「ふーん。剛太郎君、凄いね。名監督だね。」
剛太郎「いや、みんなで考えて、それが一番だなって結論になっただけだよ。」
祥子「今度の、ソフトバレーは?」
剛太郎「高さは、僕と井上がいるから、その分はアドバンテージだね。」
祥子「江上君は、バレー部のライトアタッカーだよね。」
剛太郎「うん、彼がキーマンだよ。」
祥子「あとは、レシーブ力ね。」
剛太郎「そう、だから、練習は、レシーブ力強化がメインだよ。」
祥子「そういえば、今は放送部だけど、本田君上手じゃなかった?」
剛太郎「あ、本田君は、祥子ちゃんと同じ中学だったね。本田君、バレー部だったんだよね。」
祥子「そう、バレー部のセッターだったんだけど、中学校最後の試合で、ミスしちゃって、県大会いけなかったらしい。自分が、ホールディング取られて負けたって言ってた。」
剛太郎「それで、バレーやめたとか?」
祥子「ううん。高校では、放送部って決めてたみたいよ。だって、将来の夢は、アナウンサーなんだから。」
剛太郎「そうなんだ。」
祥子「中学の卒業文集に、将来の夢が書いてあったの。」
剛太郎「イケメンアナウンサーだね。」
祥子「誰かさんと違って、シュッとしてるもんね。」
剛太郎「ゴツくて、スミマセン。」
祥子「頑張って、優勝してください。」
剛太郎「了解。」
祥子「あ、この間、お母さんと日帰り温泉に行ってきたの。そのお土産渡したいから、家に寄ってける?」
剛太郎「お土産?そんな、いいのに。」
祥子「そんな、たいしたもんじゃないから。」
そうこう話しているうちに、夏目家に到着。
祥子「ちょっと待っててね。すぐ、もってくるから。」
そういうと、祥子は家に入っていった。
リキリン「こないだ、加奈子とデートの時だね。」
マモリン「そうだね。祥子は温泉だったのね。」
祥子が戻ってきた。
祥子「お待たせ。これとこれね。」
剛太郎「二つも?悪いな。」
祥子「一つは、ご家族に、もう一つは・・・。」
剛太郎「もしかして・・・。」
祥子が、小さい袋から、プレゼントを取り出す。
剛太郎「あ、それは・・・。」
リキリン「眉毛シリーズ。」
マモリン「だね。」
クマリン「これ、探したんだよー。」
クマエル「3軒回ったね。」
祥子「はい、クマちゃんペットボトルホルダー眉毛付き。」
剛太郎「よく、見つけたね。」
祥子「丁度、お店にあったの。でも、眉毛ありもあるって聞いたから、2件探しちゃった。」
クマリン「3件目は、結構歩いたもんね。」
クマエル「お陰で、一緒に温泉は入れなかった。」
マモリン「一緒にはいる予定だったの?」
リキリン「そうなの?」
祥子「そんなわけないでしょ、脱衣所で、お留守番。」
クマリン「まあ、お陰で、他の女性は見られたもんね。」
クマエル「うんうん、いい目の保養になった。」
祥子「まあ、そうだったの?じゃあ、今度から、そうすればいいのね。」
クマリン「えっ、怒られるかと・・・。」
クマエル「祥子、物わかりが良くなったかな。」
マモリン・リキリン「いいなー。」
祥子「マモリン、リキリンも、今度、一緒に行こうね。興味があるのは、仕方ないもんね。」
マモリン・リキリン「是非。」
剛太郎「祥子ちゃん、ありがとうね。大事にするね。」
祥子「じゃあ、また明日ね。」
夏目家をあとにする、剛太郎であった。
第四十九話に続く。
第四十九話に続く。第四十九話も書きます。




