第四十六話 加奈子の趣味
加奈子とデートの剛太郎。加奈子は、自分に足りないものを再認識する。
第四十六話 加奈子の趣味
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
モールに到着し、クマちゃんアイテムを捜索中の剛太郎と加奈子。二人、全身迷彩、クマちゃんバックのペアルックである。
加奈子「剛太郎、今日は何が欲しいんだ?」
剛太郎「うん。クッションが一つ欲しいんだ。」
加奈子「これなんかどうだ?眉毛あるぞ。」
剛太郎「おおっ、眉毛クマちゃんだ。凜々しいよね。」
加奈子「おお、凜々しいな。」
剛太郎と加奈子のバカップルぶりに呆れるカップルが、話している。
男「女の趣味かと思ったら、男の趣味かよ。馬鹿じゃねえの?」
女「ちょっと、ひくね。今時、ペアック、わたしは出来ないな。」
その言葉を聞いた、加奈子がカップルに突っかかる。
加奈子「それは、私たちのことか?じゃあ、逆に聞くが、お前たち、ペアルックする勇気はあるか?それくらい好きだということだ。あと、何が好きでも構わないだろ。本が好きなやつ、プラモデルが好きなやつ、ゲームが好きなやつ、いろいろ居るだろ。彼は、クマちゃんが好きなんだ。わたしも好きだ。どうだ、同じ趣味で羨ましいだろう。」
勝ち誇ったように話す、加奈子である。
男「ペ、ペアルックぐらい出来るぞ、ああ、今から、ペアルック買いに行くぞ。」
女「わたしは、ちょっと・・・。」
男「えっ、出来ないの?」
加奈子「女は、それ程、本気じゃないようだな。」
女「本気っていうか、恥ずかしくない?」
加奈子「恥ずかしくないぞ。一度、やってみたらどうだ?」
女「そうね。やってみるかな。」
男「おお、じゃあ、行こう。」
カップルは去って行った。
剛太郎「加奈子さん、凄いね。」
加奈子「何がだ?」
剛太郎「いや、あの二人に一歩も引かないんだもん。」
加奈子「わたしは、自分の気持ちをありのままに言っただけだぞ。」
剛太郎「それでも、凄いよ。」
加奈子「そうか?今日の収穫は、そのクッションだな。じゃあ、行くか。」
剛太郎と加奈子がモールをあとにする。出口で、さっきのカップルが、同じオーバーオールでペアルックしていた。二人も仲良く歩いていた。
加奈子「剛太郎、今度は、わたしの趣味に付き合ってくれ。」
剛太郎「何処行くの?」
加奈子「ミリタリーショップだ。」
剛太郎「へえ、行ってみよう。」
加奈子と剛太郎が、ミリタリーショップを目指す。
ミリタリーショップに到着した、剛太郎と加奈子。剛太郎は、迷彩グッズに興奮気味である。
剛太郎「こ、ここ、いいね。」
加奈子「だろ。剛太郎はわたしと似てるから、ここも気に入るかと思ったんだ。」
ミリタリーショップには、モデルガン、軍服など、軍関係のグッズが満載である。
剛太郎「この、迷彩カッコいいね。ドイツか?」
加奈子「ああ、イタリアもカッコいいぞ。」
剛太郎「アメリカもいいね。日本の陸上自衛隊の迷彩は赤がきついもんね。」
加奈子「そうなんだ、ドイツやアメリカの迷彩の方が良いよな。」
既に、マニアックな世界にどっぷりの二人であった。
剛太郎「エアガン、ガスガン、電動ガン、ナイフ系もあるね。」
加奈子「わたしは、ライフルがカッコいいと思う。」
剛太郎「自動小銃、めちゃカッコいい。」
ショップの店長が、加奈子に声を掛ける。
店長「珍しいな、加奈子ちゃん。今日は、もしかして、カ・レ・シと一緒?」
加奈子「店長、しばらく。剛太郎は、まだ、彼氏じゃないんだ。わたしが彼女候補No2なんだ。」
店長「彼女候補?まあ、いいや。彼もミリタリー好きなの?」
加奈子「彼は剛太郎、柔道部だ。」
剛太郎「初めまして、岩田剛太郎といいます。加奈子さんは大切な友達です。僕も迷彩が好きなんで、加奈子さんに誘われて来てみました。」
店長「剛太郎君か、強うそうな名前だね。見た通り、うちはミリタリーショップだ。何か気になるものはあった?」
剛太郎「ドイツの軍服、カッコいいですね。それに迷彩も一番カッコいいですね。」
店長「分かる?いやー、いいセンスしてるね。」
加奈子「そういや、店長もドイツ好きだったな。」
店長「でも、迷彩にそのクマちゃんは、驚きだな。」
加奈子「剛太郎は、クマちゃん好きなんだ。」
店長「そうか、じゃあ、これなんかどうだ?」
店長が、軍服を着たクマちゃんぬいぐるみを見せる。
剛太郎「あ、クマちゃん・・・、迷彩着てる・・・。」
剛太郎の目がキラキラしている。
店長「これは、非売品なんだけど、何か買ってくれたら、あげるよ。」
加奈子「店長、いいのか?」
店長「ああ、輸入した商品の中に紛れていたんだ。仕入れしたもんじゃないから。」
剛太郎「いくら分買えばいいですか?」
店長「いくらでもいいよ。また来てくれれば、それでいいよ。」
剛太郎が、迷彩ズボン、Tシャツを持ってくる。
剛太郎「じゃあ、これください。」
加奈子「わたしも選んでいいか?」
剛太郎「うん、加奈子さん、素敵なショップ教えてくれてありがとう。」
店長「素敵なショップ・・・、初めて言われたかな。ありがとう。」
加奈子は、剛太郎とお揃いのズボンとTシャツを選び、試着室である。試着室から加奈子が剛太郎に話しかける。
加奈子「剛太郎、わたしもこれにする、会計は済ませておいてくれ。」
剛太郎「分かった。」
そう言うと、剛太郎は自分のズボンとTシャツを持って、レジに向かった。店長がレジを打つ。
店長「ありがとうね。クマちゃん入れとくね。」
剛太郎「あ、すみません。加奈子さんの分も一緒に会計してもらっていいですか。」
店長「いいの?」
剛太郎「ええ、男が女性に金を出させるもんじゃないって父から言われてますから。」
店長「漢だな。」
剛太郎「じゃあ、外で待ってます。」
支払いを終え、外で待っている剛太郎。そこへニコニコして、戻ってくる加奈子。
加奈子「剛太郎、すまんな。金出して貰って。」
剛太郎「いいよ。素敵なショップを紹介して貰ったお礼だよ。じゃあ、行こうか。」
加奈子「じゃあ、うちへ来るか?」
剛太郎「加奈子さんの家?」
加奈子「駄目か?」
剛太郎「いいよ。行ってもいいの?」
加奈子「うん。大歓迎だぞ。」
如月家を目指す、剛太郎と加奈子であった。
如月家に到着した剛太郎と加奈子。玄関を開け中に入る。
加奈子「ただいま。」
加奈子母文恵「おかえり。あら、後ろの方は?」
剛太郎「初めまして、岩田剛太郎と申します。失礼します。」
加奈子母文恵「剛太郎君、いらっしゃい。ささ、上がって。」
剛太郎「お邪魔します。」
剛太郎がリビングへ入る。
加奈子父真一「おお、剛太郎君。良く来たね。ささ、座ってくれ。」
剛太郎「初めまして、岩田剛太郎です。」
加奈子父真一「実は、わしは、こないだの地区大会の個人戦見ていたんで、初めてじゃないんだ。」
剛太郎「そうでしたか。」
加奈子父真一「剛太郎君は、強いな。武道は、柔道と少林寺拳法か?」
剛太郎「柔道が主です。少林寺拳法は、見よう見まねです。」
加奈子父真一「そうか、じゃあ、他にも出来るのか?空手は?」
剛太郎「空手は全くです。今、興味があるのは骨法ですね。」
加奈子父真一「骨法か?」
剛太郎「はい、掌握といって、相手の動きを止める技に興味があります。」
剛太郎と加奈子父真一が話しているところへ、加奈子と加奈子母文恵が、お茶を持ってリビングへ入ってくる。
加奈子母文恵「何のお話?」
加奈子「父さん、何を話していたんだ?」
加奈子父真一「いや、剛太郎君が興味がある格闘技について、話していた。」
加奈子「空手か?」
加奈子父真一「いや、骨法らしい。」
剛太郎「本で読んで学んだ程度ですから、ただ、少林寺拳法と同じで実践向きなところが気になっています。」
加奈子父真一「ちょっと、軽くやってみるか?」
加奈子「やめとけ、怪我するぞ。」
加奈子父真一「軽くだ、軽く。剛太郎君立ってみてくれ。」
剛太郎「いいんですか?」
剛太郎と加奈子父真一が構える。
加奈子父真一「その、掌握というのをやってみてくれ。」
剛太郎「はい。じゃ、左構えで順突きをお願いします。」
加奈子父真一「こうか?」
剛太郎も左構えとなり、加奈子父真一の右順突きの腕に外側から、右刺し手を出し接触させる。その接触した相手の右腕を、左手で押さえる。そして、右手の刺し手をそのまま伸ばし、相手の首を押さえる。
加奈子父真一「おお、確かに、動けんな。足技はあるのか?」
二人離れ、剛太郎が加奈子父真一の右足を自分の右足で踏む。
剛太郎「足止めです。」
そのまま、右足のかかとを相手のかかとに付け、すねで踏み込み相手をよろけさせる。
剛太郎「足がらめです。」
よろけそうになった、加奈子父真一に手を貸す剛太郎。
加奈子父真一「おお、すまない。」
剛太郎「自分が知っているのは、これくらいです。」
二人、リビングのソファーに座り直し、お茶を飲む。
加奈子父真一「頼もしいな、剛太郎君。しかも、一高だろ。」
剛太郎「いえ、まだまだです。」
加奈子「文武両道がからな、剛太郎は。」
加奈子母文恵「剛太郎君、将来は何になるの?」
剛太郎「警察官を希望しています。」
加奈子父真一「それで、柔道か。」
加奈子母文恵「大学へは?」
剛太郎「大学へ進学後、警察官を目指します。」
加奈子父真一「剛太郎君は、漢だな。加奈子のこと、見守ってくれるか?」
剛太郎「加奈子さんとは、友達です。自分の中で、気持ちの整理が出来ていないので。」
加奈子「そうだぞ。祥子ちゃんがいるからな。」
加奈子父真一「祥子ちゃんか。確かに、あの子には母性を感じるからな。剛太郎君を見守ってくれている感じがするな。加奈子は、同類って感じだな。」
加奈子「同類って何だ?」
加奈子父真一「同じ考え、同じ趣味といったところだな。一緒に居て心地よい感じだろう。」
剛太郎「確かに、それはあります。」
加奈子父真一「剛太郎君、加奈子が足りないものをこれから克服していったら、考えてくれ。」
剛太郎「分かりました。」
加奈子「足りないものって、何だ?」
加奈子母文恵「そうね。包み込む優しさ、相手を思いやる心かな。」
加奈子「剛太郎のことは、想っているぞ。あと、包み込む優しさか・・・。祥子ちゃんには感じるな。分かった、それを努力すればいいんだな。」
何かを感じ取った加奈子であった。
剛太郎「今日は、いきなりお邪魔して申し訳ありません。そろそろ、お暇します。」
加奈子「わたしが誘ったんだぞ。」
加奈子父真一「剛太郎君、今度は、飯でも食いながら話そう。」
加奈子母文恵「そうね。加奈子の手料理を食べに来てね。」
加奈子「わたしの料理?分かった、努力しとく。」
剛太郎「それでは、失礼します。」
加奈子「玄関まで、送るぞ。」
玄関で剛太郎を見送る加奈子。
加奈子「じゃあ、また、明後日、充電に来るぞ。」
剛太郎「うん、放課後ね。」
クマラル「ペアルックのお二人さん、お似合いだよ。」
クマウル「パインアメ、また、買っておくからな。」
リキリン「剛太郎と加奈子は似たもの同士だな。」
マモリン「祥子も加奈子もいいプリンセスだよ。」
加奈子「剛太郎を追い抜いて、わたしが振り向くからな。」
剛太郎「うん。何の話?」
加奈子「ううん。こっちの話だ。」
剛太郎「じゃあ、またね。」
加奈子「またな。」
剛太郎が帰っていく。
加奈子「わたしに足りないものか・・・。」
クマウル「剛太郎を包み込む力か。」
クマラル「みんなで、頑張ろう。」
今日は、加奈子は、自分に足りないものを再確認できた、デートであった。
第四十七話に続く。
第四十七話に続く。第四十七話も書きます。




