第三十八話 クマちゃん大好き剛太郎
優勝して、プレゼントを貰う剛太郎。祥子からもプレゼントが・・・。
第三十八話 クマちゃん大好き剛太郎
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
一高の優勝で幕を閉じた地区大会、剛太郎を迎える、祥子、加奈子、留美の3人。
祥子「剛太郎君、やったね。優勝だよ、優勝。おめでとう。
留美「剛太郎君。おめでとう。あ、でもね、剛太郎君の趣味聞いて引いちゃったから、わたし、恋人レースから降りまーす。いろいろ、ごめんね。」
加奈子「すまん。剛太郎。わたしは、諦めがつかなくて、応援に来てしまった。」
剛太郎「みんな、応援ありがとう。お陰で優勝出来たよ。このあと、明日の個人戦のミーティングがあるから、終わったら着替えてくるね。」
祥子「うん、待ってるね。」
加奈子「わたしも、まってていいか?」
留美「わたしは、帰るね。邪魔してすみませんでした。」
剛太郎「二階堂さんには、もっといい人がいっぱいいるよ。僕なんか釣り合わないよ。」
留美「ありがと、じゃ、次の男探しに行くか。」
そう言って、留美は帰って行った。
剛太郎「祥子ちゃん、如月さん、ちょっと待っててね。」
剛太郎は、ミーティングの為、石橋先生の元へ走って行った。
加奈子「やっぱり、わたしは、剛太郎のことが好きなようだ。初めてだなこんな気持ち。祥子ちゃんは、どうなんだ?」
祥子「わたし?わたしは、剛太郎君の力になってやりたいという気持ちが強いのかな。好きかといわれれば、好きなんだろうけど。何だろう。剛太郎君の弱い部分を助けたい、その為にそばにいたいって感じかな。わたしもよく分からないね。」
加奈子「母性愛か・・・。でも剛太郎、あんなに強いぞ。わたしは、強いものへの憧れだな。ただ、その強さをひけらかさない謙虚さにも惹かれている。剛太郎の弱さってなんだ?」
祥子「うん。こないだね。小学生のいじめられっ子に、少林寺の技を教えてたの。逆十字固めって言うの?加奈子さんの方が詳しいと思うけど。」
加奈子「少林寺の柔法だ。相手を動けなくする技だな。」
祥子「その子に、一時間教えてたの。で、その子、翌日、相手のいじめっ子をやっつけたって。剛太郎君、自分のことのように喜んでたわ。」
加奈子「剛太郎はいじめられっ子だったみたいだな。そこから、強くなるために柔道か。」
祥子「うん。剛太郎君、小学校2年生までいじめられてたみたい。その弱いところをみたときに惹かれちゃうのかな。」
加奈子「剛太郎の弱さか。見てみたいな。そんな簡単には見れないだろ。」
祥子「弱さかどうか分からないけど、クマちゃんの前だとそんな感じがするよ。」
加奈子「じゃあ、このあと、モールのガールズハウスに行ってみないか?その剛太郎の弱さを、是非見てみたい。剛太郎には、優勝のプレゼントでクマちゃん選べって言ってみるかな。」
祥子「あ、それ、いいかも。剛太郎君喜ぶわよ。」
ミーティングを終え、着替えて戻ってくる剛太郎。
剛太郎「お待たせ。明日も朝8時半集合みたい。二人ともこのあとは?」
加奈子「モールに、優勝プレゼント買いに行くぞ。」
祥子「加奈子さんからのプレゼントだって。」
剛太郎「モール?クマちゃんとこ?」
祥子「そう、クマちゃんとこよ。」
目をキラキラさせる剛太郎。
加奈子「この純粋さか。確かに見た目からは想像できないギャップだな。」
剛太郎「じゃ、早く行こう。」
目の色が変わる剛太郎。走る準備万端である。
祥子「走らないわよ。歩いて行くの。」
剛太郎「ええーーー。先行ってちゃダメ?」
祥子「分かった。先行ってなさい。あとで、加奈子さんと来るからね。」
剛太郎「了解、では、如月さん先行ってるからね。」
加奈子「分かった。祥子ちゃんとゆっくり来るから。」
ダッシュ、ダッシュ、ダッシュでモールへ走る剛太郎。
加奈子「あのギャップ、わたしは好きだな。愛おしいぞ。」
祥子「でしょ。何か、ほっとけないって言うか、いじらしいよね。」
加奈子「剛太郎は、クマちゃん大好きなんだな。」
祥子「剛太郎君、クマちゃんのコップ割れたら、気絶するんだよ。あ、割ったのは稔ね。」
加奈子「稔、死ぬな。」
祥子「うん、止めないと危なかった。稔持ち上げて、ぶん投げちゃったの。」
加奈子「ネックハンギングツリーか?」
祥子「片手でね。」
加奈子「片手?ネックハンギングスローだな。」
歩き出す、祥子と加奈子。
祥子「そのあと、クマちゃんコップに、泣きそうになりながら、ごめんねって言ってたの。」
加奈子「かわいそうだな。コップも剛太郎も。」
祥子「そのとき、わたし、まだ、剛太郎君がクマちゃんマニアって知らなかったから、そのコップが誰かの贈り物って思って、送る相手にごめんねなのかと思ったら、クマちゃんにごめんねだったの。あと、稔が遊園地で剛太郎君のクマちゃんバックを足蹴にしたときは、凄かったわよ。」
加奈子「稔、死ぬな、確実に。」
祥子「怒りのタックルで、吹っ飛ばされて気絶してた。」
加奈子「そのあとは?」
祥子「友達と走って逃げたかな。」
加奈子「最低だな。あ、気になってたんだが、祥子ちゃんは名字で呼ばれないんだ。」
祥子「うん、祥子ちゃんて呼ぶように約束したから。」
加奈子「わたしは、如月さん、留美さんは、二階堂さんだったな。」
祥子「まあ、そこまでいくにもだいぶ苦労したんだよ。」
加奈子「だろうな。あの剛太郎だからな。」
祥子「ほんと、最初は、敬語だったのよ。クラスメートなのに。」
加奈子「そういえば、女子と話せるようになったのも、祥子ちゃんのお陰っていてたな。」
祥子「始めは、ひどかったよ。夏目さん、お早うございます、だった。」
加奈子「それは、ひどいな。」
祥子「で、後輩には、おうって言うの。」
加奈子「ほんとに、女子と話したことなかったんだな。」
祥子「でもね。クマちゃんと話すときが、一番の素の剛太郎君じゃないかな。」
加奈子「それが、今から見られるのか、楽しみだ。」
祥子と加奈子がモールに到着。ガールズハウスを目指す。
加奈子「ここ曲がったとこだな。」
祥子「ほーれ、あの後ろ姿、誰も近寄れないオーラ、剛太郎君だね。」
加奈子「あれが、素の剛太郎・・・。」
ガールズハウスの剛太郎。
剛太郎「おおっ、クマちゃん新聞だ。こんなのあるんだ。無料?二部貰っとこ。一部はパウチして保存しよ。お、自転車キーホルダー100円だ。これ買いだな。あと、あ、眉毛クマちゃん!ハムハムクマちゃん!がま口!新作がたくさん。パラダイスー。」
一人興奮状態の、剛太郎であった。その後ろでじっと観察している、祥子と加奈子であった。
祥子「ね。これが素の剛太郎君。」
加奈子「可愛いな。」
祥子「剛太郎君?クマちゃん?」
加奈子「両方だな。」
祥子「加奈子さんも変わってるかな。」
加奈子「自分では普通なんだが、ありのままで生きてるからな。」
祥子「さ、選びましょうか。剛太郎君、到着よ。もう、クマちゃん前にすると、周りが見えなくなるんだから。」
剛太郎「だって、クマちゃんいっぱいなんだもん。」
加奈子「強いのか、弱いのか。さっきの柔道場の豪快な払い腰の剛太郎が、クマちゃんを目の前にすると、可愛くなるんだな。」
祥子「このギャップにやられたの。」
加奈子「わたしも、このギャップは好きだな。ああ、プレゼント選ばないとな。うーん。剛太郎、いっぱい持ってるんだろ。時計とか、筆箱とか、キーホルダーとか。」
祥子「うん。大概あるね。」
剛太郎「え、柄は違うし、何でもいいよ。」
加奈子「うーん。じゃあ、わたしの好きなものでいこう。この湯飲みはどうだ。」
剛太郎「ゆ、湯飲み?湯飲みは持ってない。」
加奈子「ここにあるぞ。眉毛もあるぞ、このクマちゃん。。」
祥子「眉毛クマちゃん、それは、剛太郎君の大好物・・・。」
剛太郎「おおーー、きりっとクマちゃん。これいい、これがいい。」
加奈子「じゃあ、これにしよう。買ってくる。」
剛太郎「あ、僕も他のもの買うから一緒に会計しよう。」
会計に進む剛太郎と加奈子。いつものごとく、贈り物ですか?はい、そうです。のやりとりであった。
店の外で待っていた祥子。
祥子「じゃあ、いきましょうか。」
剛太郎「うん。」
加奈子「じゃあ、剛太郎、はい、プレゼント。」
剛太郎「ありがとう、加奈子さん。」
祥子「うん、か・な・こさん?」
加奈子「うん。かなこさんだぞ。」
剛太郎「あ、ごめん。如月さんの方が良かったかな。」
加奈子「ダメだ。加奈子さんだ。」
祥子「恐るべし、クマちゃんパワー。」
加奈子「クマちゃんパワーのお陰で、如月さんから加奈子さんにレベルアップだな。明日も応援に来るぞ。いいか?」
剛太郎「うん、いいよ。」
祥子「一緒に応援しましょ。」
加奈子「このあと、用事があるから、ここで失礼する。じゃ、また明日な。あ、剛太郎、祥子ちゃんすまん。ぶうっ。」
剛太郎「それもプレゼント?」
加奈子「いや、嬉しくて、腸の調子が良くなったようだ、すまん。」
祥子「相変わらずの豪快な・・・。」
加奈子「明日、個人戦優勝したら、また、プレゼントするからな。」
剛太郎「そんな、モールの中で何回もは、こっちも気が引けるよ。」
加奈子「いやいや、クマちゃんのプレゼントだ。おならは出るか分からん。」
祥子「そうね。明日も来ましょう。先ずは、明日の個人戦頑張ってね。」
加奈子「じゃあ、また明日。」
加奈子が嬉しそうに、手を振って走って行った。
剛太郎「じゃあ、僕たちも帰ろう。」
祥子「うん。帰りましょう。」
夏目家に祥子を送っていく剛太郎であった。
夏目家に到着。玄関前で別れの挨拶中。
剛太郎「明日も、頑張るね。」
祥子「優勝したら、加奈子さんから、クマちゃん貰えるよ。」
剛太郎「そうだね。」
クマリン「ウオッホン。」
クマエル「お約束、お約束。」
マモリン「優勝したもんね。」
剛太郎「あ、そうだった。」
祥子「うん。そうだった。じゃあ、剛太郎君座って。」
剛太郎が座り、目をつぶる。祥子が左ほっぺにキスをしようとする。その時、後ろから帰宅してきた祥子父一郎が、剛太郎達を見つける。剛太郎達に急ぎ近づき、勢いよく剛太郎の右肩を叩いてしまう。相撲大会と・・・同じである。
祥子父一郎「よお、剛太郎君、試合はどうだった?」
剛太郎「ああっと。」
ダブルクマパワーのあとの剛太郎。よろけて左を向く。ということは・・・。祥子の口と剛太郎の口がくっついてしまう。
剛太郎「んんっ。」
祥子「んーーー。」
やはり、肩すかしを食らい、すっころぶ祥子父一郎。
祥子父一郎「あたたた・・・。」
なかなかほっぺにチューが出来ない二人であった。
第三十九話に続く。
第三十九話に続く。第三十九話も書きます。