第三十六話 一高マドンナの告白
恋のライバルが、もう一人登場である。
第三十六話 一高マドンナの告白
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
合唱コンクール翌日の一高。昼休みに、剛太郎の隣のクラス、学校一の美女、二階堂留美が同じ2組の女子グループと話していた。
留美「剛太郎君、歌上手いのね。」
2組女子1「あの見た目で、あの歌、ギャップが凄いね。」
2組女子2「気は優しくて、力持ちタイプね。」
留美「決めた。わたし、剛太郎君に言ってくる。」
2組女子1「何を?」
留美「付き合ってやってもいいわよって。」
2組女子2「えっ、留美いいの?」
留美「ああいうのと一回付き合ってみるのも、いいでしょ。どうせ彼女いないんでしょ。」
留美は、いわゆるお嬢様である。容姿端麗で言い寄ってくる男は数知れず。彼女も告白して振られたことは一度もない。
留美「善は急げ、行ってくる。」
1組へと入っていく
一方の1組。剛太郎と祥子と真奈美が話していた。そこへ、留美が割って入ってきた。
留美「剛太郎君。」
留美に気づく3人。
剛太郎「あ、二階堂さん、どうしたの?」
留美「剛太郎君、今、彼女いるの?」
留美の言葉に、驚く祥子と真奈美。
剛太郎「いや、いないけど。」
留美「そう、じゃあ、わたしが付き合ってあげる、いいでしょ。」
いきなりの告白である。驚きを隠せない祥子。
祥子「えっ、留美さん。剛太郎君の事、好きなの?」
真奈美「昨日の歌で、やられたか。」
留美「今、彼女いないんでしょ。わたしじゃ不服?」
笑みを浮かべる剛太郎。
剛太郎「二階堂さん、いきなりだね。嬉しいけど、お断りします。」
剛太郎の返事に、ほっとする祥子。
祥子「そうよね。いきなり付き合ってくれは、不躾すぎるんじゃ。」
留美「わたしが告白してるのよ。何故断るの?理由は?」
不満たらたらの表情の留美である。
剛太郎「二階堂さんは、美女と思うよ。まあ、普通の男子なら、断る人は居ないだろうね。」
留美「じゃあ、何で?」
剛太郎「僕、普通じゃないから。」
留美「デブ専とか?」
一瞬、太ろうかと思う祥子。
剛太郎「いや、そんな容姿のことじゃないんだ。僕はその人の内側、内面を大事にしたいんだ。」
留美「性格って事?」
剛太郎「性格というか、相性というか、この人を守りたい、愛おしいという気持ちかな。」
留美「このわたしが、性格悪いって事?」
剛太郎「性格はどうか分からないけど、一つ、男を手玉に取ってる感は否めないかな。僕は相手と対等の関係でいたいんだ。」
留美「じゃあ、好きな人は居るって訳ね。」
ドキドキする祥子。
剛太郎「好きかどうかまだ分からないけど、その人を他に奪われたくないという気持ちと、他に僕よりふさわしい人がいるんじゃないかって気持ちで、まだ、揺れ動いてるんだけどね。」
留美「そう、でもまだ、好きには至っていないという訳ね。分かった。じゃあ、わたしも今日から、剛太郎君にアタックしていくから、そのつもりで。」
剛太郎「アタック?」
留美「とりあえず、放課後、一緒に帰りましょう。友達としてなら、いいでしょ。わたしの中身を知って欲しいから。」
剛太郎「今日は、部活ないからいいよ。明日の休みは、試合だしね。祥子ちゃんと川口さんも一緒だよ。」
留美「ええ、いいわよ。じゃ、放課後ね。」
そう言って、自分の教室に帰っていく留美であった。
祥子「留美さんが、剛太郎君の事を・・・。」
真奈美「剛太郎君、人生最大のモテ期到来ね。」
剛太郎「僕、二階堂さんのこと何にも知らないし、まあ、一緒に帰るだけだから。」
最大のライバル登場に、不安いっぱいの祥子であった。
放課後、校門で留美を待つ、剛太郎、祥子、真奈美の3人。そこへ、左足に包帯を巻いた
留美が足をかばい痛そうに歩いてきた。
真奈美「留美さん、足、どうしたの?」
留美「ごめんなさい、午後の体育で、足すりむいちゃって。さっき、保健室で手当てして貰ったの。」
祥子「歩くのは、大丈夫なの?」
留美「ちょっと、痛いかなってくらい。大丈夫よ。」
剛太郎「じゃあ、帰ろうか。」
4人が一緒に歩き出す。一人遅れ気味になる留美。立ち止まり、座る剛太郎。
祥子「どうしたの、剛太郎君。」
剛太郎「二階堂さん、僕、おんぶするから、背中に乗って。」
真奈美「アタック開始ってわけね。」
祥子「アタック・・・。」
留美「いいの?ありがとう。」
そう言うと、剛太郎の背中におんぶされる留美。胸を剛太郎の背中に押しつける留美。
剛太郎「二階堂さん、そんなに力入れなくても、落とさないから大丈夫だよ。」
そのまま、歩き続ける3人とおんぶされている留美。
留美のおんぶに気を取られていた祥子。祥子の横をすり抜けていった自転車が、祥子にあたってしまう。
祥子「きゃっ。」
思わず、転ぶ祥子。膝をすりむいてしまう。
真奈美「こらー、気をつけろー。」
真奈美が、自転車に向かって叫ぶ。おんぶしていた留美を降ろし、祥子の元へ行く剛太郎。
剛太郎「祥子ちゃん、ちょっと待ってね。」
そう言うと、バックから消毒液とテーピングで、祥子の膝を応急手当てする剛太郎。
剛太郎「部活の手当グッズが役に立ったね。」
祥子「ありがとう、剛太郎君。」
手当てされる祥子の表情をみて、何か気づいた留美。
留美「祥子さん、大丈夫?」
真奈美「歩ける?」
祥子「うん、ちょっと痛むけど大丈夫。」
剛太郎が動く。
剛太郎「川口さん、申し訳ないんだけど、バック4人分持てるかな、無理なら3つでも。」
真奈美「3つなら、大丈夫よ。」
剛太郎「じゃあ、僕のは、背中。祥子ちゃんと二階堂さんのバックをお願いね。」
真奈美「わたしゃ、荷物持ちかい。」
剛太郎「川口さん、ごめんね。祥子ちゃんは右側、二階堂さんは左側に来て。」
剛太郎の左右に立つ、祥子と留美。
剛太郎「二人とも、僕の首にて回して、いい?よいしょ。」
右手と左手を祥子と留美の膝裏に掛け、立ち上がる剛太郎。二人をだっこの状態である。
真奈美「剛太郎君、大丈夫?」
剛太郎「ああ、平気平気。練習で、90kgの内田や100kgの田中をだっこしてるから。それに明日は、柔道の地区予選だから、丁度いいトレーニングだよ。」
留美「地区予選?何処であるの?」
剛太郎「一高だよ。一高の道場は二面あるからね。地区予選はいつもうちだよ。」
祥子「応援行くね。」
そう言うと、普通に歩き出す剛太郎であった。
留美「ちょっとアタックするつもりだったけど、本気になりそう。頼りになる男って初めてかな。」
祥子「剛太郎君、ごめんね。ほんと、重くない?」
真奈美「わたしもだっこしてー。カバン重いよ-。」
剛太郎「ははっ、3人はさすがに無理だよ。」
分かれ道まで、だっこ状態で帰る4人であった。
さて、家に帰りついて、自分の部屋の祥子。
祥子「剛太郎君にだっこされた、嬉しかったな。」
クマリン「でも、恋のライバル出現だね。」
クマエル「あら、またライバル出現なの?」
祥子「留美さん、学校一の美人だもんね。」
クマリン「祥子も負けてないぞ。」
クマエル「祥子は美人だぞ。」
祥子「あら、クマリン、クマエル。ありがと。」
クマリン「明日の剛太郎の試合だけど、多分、留美さん来るね。」
クマエル「応援会場でも試合だね。」
祥子「留美さん、来るかな?」
クマリン「祥子の気持ちはどう?留美さんに取られたくないって気持ちある?」
祥子「取られたくない・・・な。」
クマエル「いいぞ、剛太郎に、留美さんに負けないよう、アタックだ。」
祥子「アタックって・・・何するの?」
クマリン「うーん。勝利のチューだな。」
クマエル「こないだは、左頬に接吻しようとして、口にしちゃったんでしょ。」
祥子「あれは、事故よ、事故。」
クマリン「優勝したら、チューって、ラインしたら?」
クマエル「出来ないなら、テレパスするよ。どっちが良い?」
祥子「ええー・・・。テレパスで・・・お願いします。」
クマリン「よーーーし、いっちょやるか。クマエル、パワー使うから、耳ハムハムお願い。」
クマエル「祥子、ボクの口をクマリンの耳元にお願い。」
祥子「分かった。」
祥子が、ゴールドクマちゃんのクマエルをクマリンに近づける。
クマエル「いい?耳ハムハム、耳ハムハム、パワー充電、どーーーーーん。」
クマリン「うほほーーー。テレパス、どーーーーーーん。」
こちら、岩田家剛太郎のクマちゃんルーム。剛太郎が日課の腕立て300回中である。
マモリン「明日、頑張ってねー。」
剛太郎「うん、目標は、優勝だよ。」
マモリン・剛太郎「あ、テレパス・・・。」
クマリンテレパス「ユウショウシタラ、ショウコガホッペニチュー。カクヤクズミ、ガンバレ。」
剛太郎「なにーー。」
マモリン「がんば、がんばろうね。剛太郎。」
剛太郎「ヨッシャー。腕立てあと100回追加だ。」
気合い入りまくりの剛太郎であった。
再び、夏目家祥子の部屋。
クマリン「送ったよ。」
祥子「剛太郎君、なんて?」
クマリン「腕立て300回のあと、100回追加してた。」
クマエル「さすが、恋のパワーだね。」
祥子「疲れないかな?」
クマリン「大丈夫、大丈夫。それくらいじゃ疲れないよ。」
クマエル「むしろ、パワーアップしてるよ。」
祥子「クマパワーは、使っても良いの?」
クマリン「それは、剛太郎が決めるよ。」
クマエル「まあ、パワーがあるのに使わないのは、相手に失礼だもんね。」
祥子「この間、秀英との交流戦で、マモリン使っちゃったもんね。」
クマリン「まあ、今の剛太郎の実力なら、使わなくても大丈夫でしょ。」
クマエル「使うとしたら、決勝かな。獅子欺かざるの力だよ。」
祥子「ライオンが、ウサギを捕まえるのにも、全力で行くってこと?」
クマリン「それも、能力の一つだからね。」
クマエル「卑怯とかじゃなくて、能力を最大限使わないと、逆に卑怯だからね。」
祥子「明日が、楽しみね。」
クマリン「剛太郎、今度は、チューよりも勇気の方が良かったかな?」
クマエル「そっちの方が良かったかも。」
クマリン「テレパス送り直すか?」
祥子「ちょ、ちょっと、お・な・らはしませんからね。」
クマリン「喜ぶと思うけどな。」
クマエル「まあ、今回は接吻で良いでしょう。この間出来なかったんだし。」
祥子「さあ、寝ましょう。」
クマリン「そうだね、明日に向けて、ファイトー。」
クマエル「いっぱーつ。」
祥子「お・や・す・みー。」
クマリン・クマエル「おやすみー。」
翌日の一高、柔道地区大会である。会場には、剛太郎達が準備運動中である。応援席には、既に、留美が来ていた。そこへ、祥子が到着。更に、なんと、秀英少林寺拳法部の加奈子もやってきた。試合会場では、まだ試合は開始していないが、応援席では試合が始まりそうである。
第三十七話に続く。
第三十七話に続く。第三十七話も書きます。




