第二十九話 祥子の葛藤
加奈子にデードに誘われる剛太郎、結果や如何に。
第二十九話 祥子の葛藤
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
DVD鑑賞が終わり、二階の祥子の部屋に移動した、剛太郎と祥子。剛太郎が祥子に話しかける。
剛太郎「合唱コンクールも頑張らなくちゃね。」
祥子「まあ、クラスのみんなで頑張らなくちゃいけないけど、こっちには剛太郎君っていうアドバンテージがあるかららね。」
剛太郎「うん。精一杯頑張るよ。あ、そういえば、手紙・・・。」
昼間の出来事を思い出す祥子。
祥子「あ、如月さんの手紙ね。い、今、読むの?わたしが見たら申し訳ないから、一人で読んでね。」
手紙の内容に気が気でない祥子。
剛太郎「うん。読んでみる。」
手紙を取り出し、読んでみる剛太郎。手紙の内容はこうである。
剛太郎へ
この間は、助けてくれてありがとう。男に助けて貰ったのは、初めてかな。わたしは、父の影響で、幼い頃から、空手をやってた。高校で、秀英に空手部が無かったんで、少林寺拳法部に入った。まあ、同じ格闘技だから、そう大差なかったけどね。性格も男勝りだから、今まで、可愛いなんて言われたこと無かった。初めて言われたかな。ありがとう。
明日の休みに、お礼がしたい。駅前に10時に待ってる。来たくなければ、来なくてもいいから。わたしの好きなカラオケと食事の予定。じゃ、明日、待ってる。 加奈子
手紙を読み終わった、剛太郎。
剛太郎「明日の休み、如月さんがこの間のお礼がしたいんだって。」
祥子「そ、そう、明日は、何時から?」
剛太郎「朝10時に駅で待ち合わせ。カラオケと食事らしい。」
祥子「カラオケと・・・食事ね・・・。」
気が気でない祥子である。
クマリン「デーーーーート?」
クマエル「お礼という名の、デートのお誘い。」
マモリン「積極的だね。」
祥子「い、いいいじゃない。行ってくれば?」
剛太郎「うん。相手の好意を無駄にはしたくないし、行ってくるね。」
ちょっと、悲しげな祥子。
祥子「そう、行くんだ。」
剛太郎「待ちぼうけになったら、申し訳ないし、僕も自分の気持ちを伝えてくるから。」
祥子「自分の気持ち・・・。」
剛太郎「本当の僕を受け入れてくれるか、クマちゃんマニアの事とか、まあ、思いっきり引かれるかもしれないけどね。」
祥子「うん。武士は好意を甘んじて受けるべしね。」
剛太郎「うん。行ってくる。じゃ、寝るね。おやすみなさい。」
マモリン「剛太郎、ぼくこっちで寝るから、こっちに置いておいて。」
剛太郎「ああ、分かった。祥子ちゃん。マモリン、ここに置いておくね。じゃ、おやすみ。」
祥子「おやすみなさい。」
剛太郎が、隣の部屋に移動する。
クマリン「一大事、一大事。」
クマエル「どうする?どうする?」
マモリン「作戦会議だ。その為に、ぼくこっちに来たの。」
祥子「みんな、ありがとう。でも、剛太郎君が、如月さんを選んでも、全然構わないから。」
クマリン「本心で?いやじゃない?」
クマエル「剛太郎のことだ、大丈夫とは思うが。」
マモリン「あの如月さんって、サバサバして、積極的だもんね。」
祥子「わたしの気持ちが剛太郎君に届いても、剛太郎君が受け入れてくれなかったら、その方がショックが大きいかな。いいの、わたしはこのままで。」
クマリン「ダメ!祥子が悲しむのは、絶対ダメ!」
クマエル「うん。祥子と剛太郎は運命の人だもん。」
マモリン「明日のことなんだけど、テレパスでやりとりしない?」
祥子「テレパスで?」
クマリン「おおっ、その手があったか。」
クマエル「うん、そうしよう。」
マモリン「ぼくが、剛太郎の一挙手一投足をクマリンとクマエルにテレパスする。みんなは気づかれないように、変装して遠巻きに尾行する。」
祥子「みんな、ありがとう。剛太郎君がどう返事しても、わたし大丈夫よ。さあ、寝ましょう。」
クマリン「祥子・・・、うん、寝よう。」
クマエル「明日は頑張ろう。」
マモリン「逐一報告入れるからね。おやすみ。」
不安と悲しみが交錯しながら、就寝する祥子であった。
翌日、10時の駅前、加奈子が、白のワンピースでめかし込んで剛太郎を待っていた。そこへ走って寄っていく剛太郎。
剛太郎「如月さん、お待たせ。待った?」
加奈子「いや。今来たとこだ。その迷彩カッコいいな。」
剛太郎は、いつもの上下迷彩、クマちゃんボディバックである。
剛太郎「そう、じゃ、行こっか。」
二人歩き出す。
物陰に隠れている祥子。
クマリン「祥子、変装って、逆にそれ目立つんじゃ。」
クマエル「確かに。」
男物のパンツスーツに、サングラス、怪しい男である。
祥子「そう?男のカッコの方がいいと思って、蒼太のジャケット借りてきたんだけど。」
クマリン「まあ、いいでしょ。あ、カラオケに行くみたいだ。」
マモリンテレパス「こちら、マモリン。剛太郎達は、カラオケに行く模様。」
クマリン・マモリン「ラジャー。」
クマリン「祥子、カラオケショップの前まで行こう。」
祥子「分かった。」
剛太郎達を追って、カラオケショップに向かう祥子、クマリン、クマエルであった。
カラオケショップに入る、剛太郎と加奈子。
加奈子「剛太郎、カラオケは大丈夫か?」
剛太郎「うん。歌えるよ。歌えるけど、ぼくが歌うとみんなしーんとしちゃうから。」
加奈子「ははっ、下手なのか。大丈夫、笑わないから。」
フロントで申し込みが終わり、部屋に移動する剛太郎と加奈子。
カラオケショップの前の祥子、クマリン、クマエル。
クマリンテレパス「マモリン、そっちの様子はどうだ?」
マモリンテレパス「えー、如月さんが先に歌って、次に剛太郎が歌ったんだけど、剛太郎の歌を聴いて、現在、如月さんうずくまってる状態。更に、剛太郎は、歌い続け、如月さんノックアウト状態です、どうぞ。」
クマリン「やっぱり。」
祥子「どうしたの?どんな感じ?」
クマエル「剛太郎の歌に、失神寸前の如月さんらしい。」
クマリン「しかも、他に誰もいないから、剛太郎がたたみかけている状態らしい。」
祥子「あの歌を、たたみかけられたら・・・。」
マモリンテレパス「剛太郎と如月さん、移動する模様。」
剛太郎と加奈子が、カラオケショップから出てくる。加奈子は足がおぼつかない。
剛太郎「如月さん、大丈夫?」
加奈子「大丈夫って聞く?剛太郎、君の歌、反則。」
剛太郎「反則?」
加奈子「そう、しーんするのは、下手でしーんじゃなくて、反則的に上手すぎて言葉が出なくなるしーんなんだから。」
剛太郎「そう?僕は普通に歌ってるだけだけどな。」
加奈子「こっちが歌でお礼するはずだったのに、逆にお礼貰った感じだ。ああ、ビックリした。」
剛太郎「次は?」
加奈子「次は、わたしの好きなパスタ屋。」
マモリンテレパス「こちら、マモリン。二人はパスタ屋さんに行く模様。」
クマリンテレパス「ラジャー。」
クマエル「祥子、パスタ屋さんに移動だ。」
祥子「パスタ屋さんね。」
剛太郎のあとを追う、祥子、クマリン、クマエル。
パスタ屋さんに到着した剛太郎と加奈子。店に入り席に着く。そのあとに、二人に気づかれないように、静かに入ってくる祥子。
剛太郎「さっきカラオケ代出して貰って、ありがとうね、ここは、僕が出すから。」
加奈子「ダメだ。それじゃ、お礼の意味になってない。ここもわたしが払う。」
剛太郎「女の子に払って貰うのは、しのびないな。」
加奈子「剛太郎は、女に払って貰ったことはないのか?割り勘はあるだろ?」
剛太郎「いや、父から女性に金を出させるもんじゃ無いって言われてるから。」
加奈子「武士だな。まあ、今回は目をつぶってくれ。」
剛太郎と加奈子がパスタを注文し、怒濤の食欲で食べる二人。圧巻である。
食事が終わった二人。加奈子が剛太郎に話しかける。
加奈子「これで、この間のお礼は終わり。このあと、ちょっとだけいいか?」
剛太郎「ああ、どこ行くんだ?」
加奈子「近くの公園。」
剛太郎「じゃ、行こうか。」
会計を済ませ、店を出る二人。祥子もその後を追う。
マモリンテレパス「二人は、近くの公園に行く模様。」
クマリンテレパス「ラジャー。」
クマエル「いよいよ、告白か?」
祥子「告白・・・。」
近くの公園に移動してきた、加奈子と剛太郎、二人ベンチに座っている。加奈子が話し出す。
加奈子「剛太郎、男だな。」
剛太郎「女にみえるか?」
加奈子「いや、その男じゃなくて、漢だな。」
剛太郎「ああ、男として普通だと思うが。」
加奈子「あ、剛太郎、すまん。ブゥッ。」
そういうと、加奈子は、腰を少し上げ、豪快におならをする。ちょっと驚く、剛太郎。
加奈子「すまん。食事したあとで、ちょっとお腹が張ったみたいだ。」
マモリンテレパス「こちら、マモリン、意外な展開、如月さんが屁をこいた。」
クマリン「へ、屁、なの?剛太郎じゃなくて?」
クマエル「凄いな、豪快だな。」
祥子「おならしちゃったの?」
再び、ベンチの二人。
加奈子「わたしはこういう女だ。人目も気にしない、自分流に生きるのが流儀だ。本当のわたしを見て欲しいからここに来た。」
剛太郎を見つめる加奈子。
剛太郎「如月さん、僕は、女性が豪快におならするのが好きなんだ。知ってたの?」
加奈子「そうなのか?」
剛太郎「変な意味じゃ無くて、男と女、同じ人間なんだから、出物腫れ物所嫌わずってね。まあ、変な意味もちょっとはあるかもしれないね。」
マモリンテレパス「こちらマモリン。剛太郎は、女性の豪快なおならが好きらしい。」
クマリン「ラジャー、剛太郎、ちょっと変態だな。」
クマエル「祥子、剛太郎は女性の豪快なおならが好きらしい。」
祥子「えっ、おならが好きって、何?」
クマリン「今度、祥子も剛太郎の目の前で実践だ。」
クマエル「ありだな。帰りに焼き芋買って帰ろう。」
祥子「ちょ、ちょっと、出来ないよー。」
再び、ベンチの二人。
剛太郎「これ?どう思う?」
そういうと、クマちゃんボディバック、迷彩シャツの下に着ているクマちゃんTシャツ、マモリンを加奈子に見せる。
加奈子「クマちゃんだな。可愛いと思うぞ。」
剛太郎「僕の持ち物、ぜーーんぶ、クマちゃんなんだ。クマちゃんマニアなんだ。引いた?」
加奈子「いや、ギャップがあっていいと思うぞ。クマちゃん可愛いし。」
剛太郎「こんなゴツいのにクマちゃんって、引かない?」
加奈子「引かない。信念があっていいと思うぞ。わたしのおならの方が、引くんじゃないか?」
剛太郎「そうだな。」
加奈子「単刀直入にいくぞ。回りくどいのは嫌いだから。」
剛太郎「うん。どうぞ。」
加奈子「剛太郎、お前の事、好きになってしまったようだ。わたしと付き合ってくれ。」
真剣な眼差しの、剛太郎と加奈子。
剛太郎「うん。ありがとう。でも、ちょっと考えさせて欲しい。」
加奈子「・・・やっぱり、ダメか。」
剛太郎「ダメって言うか、まだ、自分自身、分からないんだ。あの人を好きかどうか。」
加奈子「祥子ちゃんか?」
剛太郎「ああ、実はこんなに女子と話せるようになったのも、彼女のお陰なんだ。それに、彼女とは何か見えないもので繋がっているのを感じるんだ。」
加奈子「モールで見たとき、もう分かってたよ。でも、自分の気持ちを伝えないと気が済まないだちなんで、今回、つきあってもらった、ありがとうな。」
剛太郎「まあ、僕が本当に彼女を好きになって、告白して振られたら、次は如月さんのこと考えるかな。如月さんも可愛いしね、おならは豪快だし。身勝手な男だって思ってもいいよ。」
加奈子「二番目って事か。身勝手だとは思わない。恋愛なんてそんなもんだろう。おならは余計だ。」
剛太郎「うん。僕も人を好きになるのは初めてだし、よく分からないんだ。その人を他に取られたくないという気持ちと、自分よりもふさわしい人がいるんじゃないかっていう気持ちの大きさで、他に取られたくないっていう気持ちが勝れば本物なんだと思う。まだ、そこまで到達してないから、よく分からないのが現実かな。」
加奈子「わたしも、そうだな。初めてこんなに惹かれたのは。カラオケで尚惹かれ、クマちゃんで更に惹かれてるけど、祥子ちゃんの方が剛太郎を幸せに出来るんじゃないかって気持ちは、あるな。」
剛太郎「祥子ちゃんに振られたら、如月さんに告白しに行くかな。都合のいい男でごめん。」
加奈子「ああ、大丈夫だ。わたしも気持ちの整理がつかないまま告白したところもあるし、剛太郎よりも好きな人が出来たら、わたしの事はあきらめてくれ。」
剛太郎「如月さん、強いね。」
加奈子「少林寺拳法部だからな。強いぞ。」
マモリンテレパス「・・・つらい、辛すぎる・・・。詳しくは帰って話す。以上。」
クマリンテレパス「了解。」
クマエル「マモリン、帰って詳しく話すって。」
祥子「そう、分かった。じゃあ、わたし達も帰ろうか。」
再び、ベンチの二人。
加奈子「剛太郎、今日は、ありがとう。楽しかったよ。」
剛太郎「僕も楽しかったよ。ありがとう。あと、豪快なおなら、ほんとにありがとう。」
加奈子「おならは余計だ。変なやつだな。」
剛太郎「じゃ、また、どこかで。」
加奈子「ああ、祥子ちゃんに振られるの、待ってるぞ。」
剛太郎と加奈子が、固く握手をする。走り出す加奈子。その目は涙であふれていた。剛太郎も歩き出した。
剛太郎「如月さんの為にも、祥子ちゃんに気持ちを伝えないとな。」
そう呟く剛太郎であった。
第三十話に続く。
第三十話に続く。第三十話も書きます。




