第二十七話 祥子のライバル?現る
コンサートのテレビ放送始まる。そして、祥子に恋のライバル?出現。
第二十七話 祥子のライバル?現る
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
夏目家のテレビで、一昨日の一高オーケストラ部コンサートが放送される。時間は30分である。いよいよ、放送開始である。
祥子父一郎「お、いよいよ、始まるな。」
一高のオーケストラコンサート部の紹介から始まり、そのあとにコンサートが始まった。
祥子母律子「さあ、コンサートね。」
しかし、剛太郎の出番は、なかなかない。
祥子弟蒼太「30分だよね。もう終わっちゃうよ。」
最後の最後に、仮面を被った剛太郎のラストの歌声が、少し流れるだけであった。
祥子「これだけ?」
番組終了である。
祥子父一郎「剛太郎君の出番は、あれだけか。」
祥子母律子「まあ、30分の番組ですもの。こんな感じなんじゃないですか。」
祥子弟蒼太「剛太郎さんの歌、始めから終わりまで聞きたかったな。」
祥子「会場は、凄かったのよ。みんな立ち上がって、大歓声、大拍手だったのに。」
腑に落ちない、夏目一家。ただ一人納得顔の剛太郎。
剛太郎「あのディレクターさん、僕の意図を感じてくれたみたい。」
不思議な顔をする祥子。
祥子「意図?」
剛太郎「うん。僕が仮面を付けていたこと、インタビューを断ったことを汲んでくれたんだと思うよ。」
祥子「そうか。あの歌が流れちゃったら、あれは誰だって、学校やテレビ局に連絡が殺到する。」
剛太郎「多分、それを僕が望んでいないことを、分かった上での編集だよ。」
祥子父一郎「もったいないな。まあ、剛太郎君は柔道部の主将だからな。仕方ないか。」
祥子母律子「でも、残念だわ。コンサートの剛太郎君の歌声が聞きたかったのに。テレビ放送があるから、会場には行かなかったのに、やっぱり、行くべきだったわ。」
祥子「大丈夫よ、お母さん。オーケストラ部も独自でビデオカメラ回していたから。それは、オーケストラ部にあるはずだから、今度それを、ダビングしてもらってくるから。」
祥子弟蒼太「お姉ちゃん、お願いだよ。早く見てみたいな。」
祥子「うん、今度、貰ってくるから。」
祥子母律子「また、みんなで見ましょう。」
祥子父一郎「律子、ティッシュ買いだめしとかないとな。」
祥子「一人一箱ね。」
不本意な放送であったが、楽しく談笑する夏目家であった。
一方、放送終了後のテレビ局の様子。あのディレクターとカメラマンが話していた。
カメラマン「ディレクター、どうして、あの仮面の男の歌を全部流さなかったんですか?流していたら、みんな感動したはずですよ。」
ディレクター「そうだな。しかしな、あの仮面の男は、それを望んでいまい。自らの能力を表に出すのなら、わざわざ仮面を付けなかっただろうし、僕らのインタビューにも応じたはずだ。それを彼はしなかった。ということは、表に出して欲しくないって事じゃないかな。」
カメラマン「言われてみれば、確かにそうですね。でも、あの歌は、度肝を抜かれますよ。せっかくの才能が埋もれてしまうんじゃ。」
ディレクター「彼は、その才能をひけらかすのではなく、そっとしまっておきたいんじゃないかな。他に大事なものがあるんだろう。まあ、あの才能だ。どこかで日の目を見るよ。」
カメラマン「まだ、高校生ですしね。もし、あの歌がテレビで放送されたら、うちや学校に問い合わせが殺到したでしょうね。」
ディレクター「多分、彼はそれをいやがったんじゃないか。今回はこれで良かったんだよ。ただ、学校には、別の編集DVDを送るつもりだ。」
カメラマン「別のDVD?」
ディレクター「オーケストラコンサートの全てを収録したものをね。」
カメラマン「それはいいですね。」
ディレクター「僕は彼に男気を感じた、だから、放送で男気を返したつもりだよ。」
カメラマン「どうせ、高校生のオーケストラだって言ってたのは、どなたでしたっけ?」
ディレクター「まあ、最後にあんな隠し球持ってこられたら、どうしようもない。ただ、彼が望んでいることは、こうなんじゃないかなって思ったんだ。」
カメラマン「これで良かったんじゃないですか。」
ディレクター「ああ、これで良しとしよう。」
男気のある話をする二人で会った。
翌日の一高、祥子剛太郎のクラス。真奈美と和美が不満たらたらに話していた。
真奈美「何なのよ、あの編集。」
和美「テレビ局の人、分かってないよね。」
祥子「まあまあ、落ち着いて二人とも。あの編集には、意味があったんだから。」
真奈美・和美「意味?」
剛太郎「僕は望んだ通りの編集だったよ。あのディレクターの人、僕の意図を汲んでくれたらしい。」
真奈美・和美「意図?」
祥子「もし、あの剛太郎君の歌が、最初から最後まで流されたとしたら、今頃大騒ぎじゃない?あの仮面の男は誰だーって。」
真奈美「そうね。」
和美「それはあるわね。」
剛太郎「僕が仮面を付けていたこと、インタビューを断ったことを考慮してくれたんだと思う。男気のある人だったんじゃないかな。」
祥子「大騒ぎになったら、剛太郎君、柔道どころじゃなくなるから、主将だもん。」
真奈美「今回は、ピンチヒッターだしね。」
和美「そうそう、本番は、合唱コンクールだもんね。」
真奈美「コンクールに向けて練習だね。」
祥子「今日は、剛太郎カラオケ倶楽部は、行けないわよ。お父さんとお母さんがお出かけするから、早く帰って来てって言われてるの。」
剛太郎「僕も、柔道の試合が近いから、練習が遅くなるんだ。」
真奈美「まあ、時間に都合がつく時に集まりましょ。」
放課後、柔道の練習が終わり、一人帰っている剛太郎。バス停で男子二人と女子一人が揉めていた。秀英高校の生徒のようである。
秀英高男1「いいじゃん、付き合えよ。カラオケ行くだけだよ。」
秀英高男2「行こうぜ。1時間だけだから。加奈子もカラオケ好きだろ。」
加奈子「カラオケは好きだけど、あんた達とは行きたくないよ。それにもう遅いし。」
秀英高男1「せっかく、誘ってやってるのに、なんだよ。浩治、お前のことが好きなんだよ。」
浩治「おれ、加奈子のこと、前から好きなんだ。行こうぜ。修司も一緒だから、大丈夫だって。」
加奈子「わたし、弱っちい人嫌いなの。その腕が筋トレで2倍になったら、また誘ってね。」
修司「俺らのどこが弱っちいんだよ。試してみるか。」
加奈子「何?暴力?わたし一応、少林寺拳法習ってるから、強いよ。」
浩治「そういう気の強いとこがいいんだよ。なあ、カラオケ行こうぜ。」
3人がもみ合っている。加奈子がバックを捨て、少林寺拳法の一次構えの形をとる。そのやりとりを遠くで見ていた剛太郎。
剛太郎「少林寺拳法か?」
彼らに近づいていく剛太郎。
加奈子「怪我しても知らないよ。」
修司が加奈子に掴みかかる。修司の右腕を左腕の内側で跳ね上げ、腹部に一撃を加える。加奈子の上受け突きが決まる。腹を押さえしゃがみ込む修司。とっさに浩治が加奈子の後ろ側に回り込み羽交い締めにする。
加奈子「放せ。この野郎。」
立ち上がる修司。
修司「浩治、抑えとけ。」
そう言って、加奈子に殴りかかろうとする。
修司「あれっ。」
修司の腕を後ろから掴む男がいた。剛太郎である。
剛太郎「男が女を殴るのか。最低な男だな、貴様。」
修司「うるさい。」
修司は左拳で剛太郎を殴ろうとする。剛太郎は、掴んだ右腕を外側に捻り、左腕を修司の右腕に巻き付け、修司の右腕を下げ、肘関節の上の急所を極める。更に、谷落としの要領で修司を後ろに倒す。倒れた修司を脅す剛太郎。
剛太郎「まだ、やるか?」
浩治「あ、こいつ、一高柔道部の剛太郎だ。やばいよ、修司。」
修司「剛太郎って、あの柔道の交流試合の・・・。」
浩治・修司「し、失礼しましたー。」
必死で逃げ帰る二人であった。
剛太郎が加奈子に声をかける。
剛太郎「大丈夫か?」
加奈子「ああ、あんたも少林寺やるのか?腕十字固めやってたよな。」
剛太郎「いや、僕は柔道だ、少林寺は見よう見まねだ。単品の小技くらいしか出来ない。まあ、剛法より柔法の方が得意かな。」
少林寺拳法には、剛法と柔法がある、剛法は、突く・蹴るといった、空手の技に近い。柔法は、小手返しや腕十字など合気道に近い技である。
加奈子「あんた、強いね。」
剛太郎「いや、君の上受け突きも見事だったよ。君は、柔法より剛法の方が得意そうだね。」
加奈子「まあ、空手も少しかじったからね。」
剛太郎「二人を相手にするときは、戦い方を考えないとな。」
加奈子「どうするんだ?」
剛太郎「女の子の君には、必要ないだろう。」
加奈子「女の子・・・。」
剛太郎「まあ、ご参考までに。細い路地に入り込んで、一対一の状況を作る、それが出来ないなら、一人目を投げるか、極めて動けなくして、二人目に挑む。あと、一人目を二人目めがけて投げて逃げるとかね。まあ、いろいろあるけど。ああ、物騒な話でごめん。」
加奈子「いや、参考になった。助けてくれて、ありがとな。」
剛太郎「さっきの奴らが言ってた通り、僕は一高柔道部主将の岩田剛太郎。」
加奈子「わたしは、如月加奈子。高校では少林寺拳法やってる。」
剛太郎「ああ、君があの如月さんか。」
加奈子「わたしのこと、知ってるのか?」
剛太郎「秀英の少林寺拳法部に、男顔負けの女拳士がいるって聞いたことがあったよ。こんな可愛い子とは、思わなかった。」
加奈子「ゴツい、デカい女って思ってた?」
剛太郎が加奈子のバックを拾う。
剛太郎「気をつけろよ。無茶して怪我したら、家族も悲しむ。」
加奈子「ああ、分かってる。」
加奈子のバックのクマちゃんを見つけた、剛太郎。剛太郎の表情が変わる。
剛太郎「あ、クマちゃん。」
加奈子「クマちゃん?」
剛太郎「如月さん、このクマちゃん、どこで売ってるの?」
加奈子「これ?新しく出来た隣町のモールだけど。」
剛太郎「隣町か・・・。ありがとう。」
加奈子「いや、こっちがお礼言うとこだよ。」
はっとする剛太郎。
剛太郎「そうだな、気をつけて帰れよ。」
加奈子「ありがとな。」
その場で別れる二人。
加奈子「岩田剛太郎か・・・。女の子・・・、可愛い・・・か。初めて言われたな。」
加奈子は、思いを巡らせ家路を急いだ。
こちらも家路を急ぐ剛太郎。
剛太郎「隣町のモールか。明日、祥子ちゃんと行ってみよう。そういえば、あのバス停、前もあんなことあったような・・・。」
そんなことより、クマちゃんへの思いを巡らせる剛太郎であった。
翌日、隣町のモールの事を祥子に話し、放課後一緒にモールへ行く剛太郎と祥子。
祥子「今日は、部活はないんだ。」
剛太郎「うん、顧問の石橋先生が出張だから、今日は休み。今日休みで良かったー。」
祥子「ほんと、クマちゃんのことになると真剣なんだから。」
剛太郎「急ごう。」
走り出す剛太郎。
祥子「ちょっと、待ってよ。剛太郎君。」
剛太郎の後を、必死で追いかける祥子であった。
モールに到着した祥子と剛太郎。クマちゃんコーナーを見つける。
祥子「剛太郎君、あっちだよ。」
剛太郎「お、クマちゃん、発見。」
店に入ろうとする剛太郎。そこで、一人の女性に声をかけられる。
女性「剛太郎だよね。」
第二十八話に続く。
第二十八話に続く。第二十八話も書きます。




