第二十三話 クマエルの憂鬱
クマエルが、友達のピンチで、天界に戻される。しかし、奇跡は起こった。
第二十三話 クマエルの憂鬱
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
夏目家の二階、深刻な話のクマちゃん三匹。
クマリン「テレパス来たの?」
クマエル「それが、来たんだ。」
マモリン「何て?」
クマエル「ラファエルが、ナイトと揉めてるらしい。」
クマリン「ラファエルか?あいつ問題児だったもんな。」
クマエル「クマリン、ラファエルのこと、覚えてるの?」
クマリン「うん。少しずつ記憶は戻ってきてるよ。あいつ、前もナイトと揉めなかったっけ。」
クマエル「前は、ナイトと合わなくて揉めたもんね。今回は、ナイトとプリンセスのもめ事に首突っ込みすぎたみたい。」
クマリン「ヒーラーだからな。お節介やき屋さんだもんな。」
クマエル「ボクには、感情の浄化能力があるんだ、だから、呼ばれてるんだと思う。」
マモリン「みんな、色んな能力あるんだね。」
クマリン「マモリンは、生粋の武神だもんね。クマエル、で、いつ、召喚なの?」
クマエル「今夜かな。」
マモリン「ええーーー。そんな、みんな仲良しなのに。」
クマリン「剛太郎と祥子にも説明しないとね。」
クマエル「ああ。」
カラオケを終えた、剛太郎と祥子が、二階に上がってくる。祥子の部屋に入る二人。
祥子「今日も、歌ったわね。」
剛太郎「毎日、発声練習だね。」
上機嫌な二人に、声を掛けるクマリン。
クマリン「剛太郎、祥子、話があるの。」
祥子「何?クマリン。」
剛太郎「どうしたんだ?」
クマリン「うん、クマエルが今夜でお別れみたい。」
祥子「えっ、お別れ?」
剛太郎「クマエル、どっか行くの?」
クマエル「うん、ちょっと、天界に戻らなくちゃいけなくなったの。友達のケンカの仲裁ってとこかな。」
祥子「でも、それが終わったら、また、戻れるんでしょ。」
クマリン「そうは、上手くいかないんだ。」
クマエル「その仲裁が終わって、また、剛太郎に呼んでもらっても、ここに戻ってこられるとは限らない。別の誰かが呼ばれるかもしれないし、ボクが別のところに呼ばれるかもしれない。同じアイテムには、戻れないと思うから。」
剛太郎「戻ってきて欲しいと、僕らが強く願っても?」
クマエル「その時、ボクの力を一番必要としているところに、呼ばれるから。それは、分からない。」
祥子「戻ってこられるかもしれないし、戻れないかもしれないのね。」
クマリン「僕らは、そういう存在なの。」
マモリン「うん、仕方ないもんね。」
祥子「いつ、戻るの?」
クマエル「今夜、もうすぐだと思う。」
祥子「今夜・・・、そう。」
剛太郎「そうか、引き留める事は、出来なそうだな。まあ、いい、絶対もう一回、呼び戻すから。」
祥子「うん。私もお願いするから。」
クマエル「あ・・・、今・・・、来たよ。」
クマリン「来たか・・・。」
マモリン「またね、クマエル。」
剛太郎「カーニバルは、君がいなかったら、多分、優勝出来なかったと思う。君の冷静沈着な判断は、いつも素晴らしかった。」
祥子「一旦、お別れね。でも、安心して、必ず呼び戻すから。」
クマエル「せっかく、クマリンのところに来る事が出来たのに、残念だけどね。まあ、友達のピンチだから、ちょっと、行ってくるよ。」
クマリン「・・・そろそろ、かな。」
マモリン「来たの?」
クマエル「タイムアップだね。」
クマリン「さっさと、行っちゃえ、ラファエルが待ってるぞ。・・・グスン・・・またね。」
祥子「クマリン・・・。」
クマエル「じゃ、行ってきまーす。楽しかったなー、このパーティ・・・。帰りたくないけど、帰りたくないけど・・・、帰り・・・たく・・ない。・・・・・じゃ・・・・バイバイ。」
クマちゃんペンダントトップが光を放つ。
剛太郎・祥子・クマリン・マモリン「さよなら、クマエル。」
二人と二匹が悲しみに暮れる。
階下から、祥子母律子が、声を掛ける。
祥子母律子「祥子、お風呂いいわよ。」
ドアを開け、返事をする祥子。
祥子「うん、分かった。剛太郎君、私、先に入ってくるね。」
剛太郎「うん。じゃ、あとで、ゴールドクマちゃんにパワー充電してみるか。」
クマリン「うん、別れがあれば、出会いがある。」
マモリン「そうだね。また、凄いやつ来るかもしれないね。」
祥子「じゃ、入ってくるね。」
剛太郎・クマリン・マモリン「いってらっしゃーい。」
そのあと、剛太郎も入浴が終わり、再び、祥子の部屋に戻ってくる。
剛太郎「さあ、ゴールドクマちゃんにパワー充電だ。パワー5は、確実だな。」
祥子「そうね。あとは、どんな意識が入ってくるかよね。」
クマリン「やってみよう。」
マモリン「始めましょう。」
剛太郎がゴールドクマちゃんを取り出し、パワー注入する。一緒に祈る、祥子、クマリン、マモリン。
剛太郎「パワー充電。」
ゴールドクマちゃんが、金色の光を放つ。
ゴールドクマちゃん「摩利支天降臨。ホッキョクグマパワー5。」
マモリン「摩利支天だ、光の神、戦神だよ。」
剛太郎「しかも、ホッキョクグマパワー5だ、最強レベルだ。」
祥子「また、強いのが来たのね。」
クマリン「クマエルと同じ力だね。やったー。」
摩利支天「摩利支天と申します、どうぞよろしくお願いします。こんないいパーティーに入れて、幸せです。ありがとう、剛太郎、祥子、クマリン、マモリン。」
剛太郎「えっ、自己紹介まだなのに、僕たちの名前、知ってるの?」
祥子「こんないいパーティーって、分かるの?」
クマリン「透視能力でもあるの?」
マモリン「まって、摩利支天って、仏教の地方名だよね。たしか、クマリンとこの宗教じゃ名前が・・・。」
クマリン「あーーーーーーー、やったな、コイツーーーーー。」
祥子「もしかして・・・、嘘でしょ。」
剛太郎「そのまさかだね。」
クマリン「そうそう、思い出した。摩利支天は東方出張名称。本当の名前は・・・」
摩利支天「ミカエルでーーーす。あ、クマエルでーーーす。あーーよかった、戻れたー。」
クマリン「クマエル、クマエルなのか?なんで?なんで?ラファエルの件は?」
マモリン「クマリン、落ち着いて、クマエルからの説明を待とう。」
祥子「友達は大丈夫だったの?」
クマエル「それがね、聞いてよ。ボクが呼ばれたあと、ラファエルから解決しましたって、すぐ連絡が来たらしくて、ボクせっかく戻ったのに、どうしたらいいの状態。とりあえず、籍保留で、剛太郎からのリクエストがあれば、即戻すってなったの。」
マモリン「災難だったね。」
クマエル「あ、でも、今日、ゴールドクマちゃんパワー充電するって聞いてたから、すぐ戻れるなって思ってた。ラファエルにも、もう呼ぶなよって言ってきた。」
クマリン「でも、また、呼ばれるんじゃない?」
クマエル「もう大丈夫みたい。ナイトとの契約切ったみたい。当分、リクエストには応じないって言ってた。」
マモリン「でも、ほんとよかった。性格的にも、パワー的にも、クマエル以上のクマちゃんは他にいないもんね。」
祥子「摩利支天って言ったから、ビックリしちゃった。」
剛太郎「クマエル戻りましたで、よかったのに。」
クマエル「別れの時、クマリンが悲しんでいたから照れくさくて、ちょっと地方名で出てみました。」
クマリン「あーあ、やっぱり僕たちは腐れ縁だね。」
マモリン「まあまあ、せっかく、戻ってきたんだし。」
クマリン「でも、戻ってきてくれてほっとした、おかえりクマエル。」
クマエル「もー素直じゃないんだから、でも、ありがとう。クマリン。みんな・・・ただいま!」
剛太郎・祥子・クマリン・マモリン「お帰りなさい、クマエル。」
大事件発生でしたが、その日は、皆それぞれ、心地よい眠りにつくのであった。
翌日、いつも通り、皆、それぞれ、仕事、学校に向かった夏目家であった。
剛太郎と祥子が通う一高。そのクラスの昼休み、祥子と真奈美と和美が、今度の合唱コンクールの話をしていた。
真奈美「今度の合唱コンクールなんだけど、ソロパートのある曲にしない?」
和美「え、合唱なのにそんなのあるの?」
祥子「あるのは、あるわね。」
真奈美「そこのソロパートに、剛太郎君を抜擢するの。どう。」
和美「それは、いいかも。」
祥子「ポップスや歌謡曲が上手くても、合唱とかクラシックに通用するのかな。」
真奈美「元々、去年や一昨年は、剛太郎君、合唱コンクールには出てなかったの?」
祥子「剛太郎君、去年も一昨年も、柔道の試合があって、そっちを優先したんじゃなかったかな。」
真奈美「じゃ、今回も駄目なの?」
祥子「今年は、試合日時が変わったから、大丈夫って言ってたよ。」
和美「じゃ、参加するんだ、ラッキー。」
真奈美「通用するかどうか、確かめてみようよ。オーケストラ部の友達が、今度オペラの題目をやるらしいんだけど、アリアを歌う歌い手がいないって。で、合唱部からピンチヒッターで、誰かに来てもらうって。そのオーディションを今日の放課後やるっていってた。」
和美「そのオーディションに、剛太郎君を参加させるのね。」
祥子「でも、剛太郎君、今日、部活だよ。」
真奈美「顧問の先生に、ちょっと、剛太郎君お借りします。学校のピンチなんですっていえば、抜けさせてもらえるんじゃない。」
和美「わたし、あとで、言ってくるよ。」
祥子「剛太郎君、引き受けてくれるかな。」
真奈美「剛太郎君、男気の塊だから、オーケストラ部が困ってるって言ったら引き受けてくれるんじゃない?」
祥子「うん、それとなく、言ってみるね。」
真奈美「そうと決まれば、即作戦実行ね。オーケストラ部の友達に、話してくるね。
和美「私は、柔道部顧問の先生に話してくる。」
そう言って、それぞれ行動を開始した3人であった。
放課後の柔道場。主将の剛太郎が、乱取りの練習に檄を飛ばしていた。
剛太郎「さあ、気合い入れていくぞ、ファイトー!」
そこへ、祥子、真奈美、和美がやってくる。
石橋先生「剛太郎、そろそろ、時間じゃないか。練習抜けていいぞ。終わったら、戻ってこい。」
柔道の顧問は、体育教師の石橋先生である。
剛太郎「じゃ、先生、行ってきます。」
副キャプテンの内田に声を掛ける剛太郎。
剛太郎「内田、ちょっと行ってくるからな、頼むな。」
内田「おお、行ってこい、剛太郎、歌うまいのか。見かけによらんな。」
剛太郎「すぐ、戻る。」
そう言って、柔道場をあとにし、オーケストラ部がオーディションをしている音楽室へ急ぐ、剛太郎、祥子、真奈美、和美。音楽室に到着、ノックをし、音楽室に入る剛太郎達。
剛太郎は柔道着のままである。音楽室では、オーケストラ部と合唱部の顧問の先生、オーケストラ部の生徒全員、合唱部や歌に自信のあるものが10名ほどいた。
剛太郎「失礼します。」
祥子・真奈美・和美「失礼します。」
森山先生「あ、君が岩田剛太郎君ね。丁度、オーディションの最中なの、隣の部屋で練習してきて。これ、楽譜ね。読めないかと思って、歌詞は、アルファベットの上にカタカナで書いてるから。隣でも音楽は聞こえるから、練習してきてね。最後に聞くからね。」
原田先生「柔道部の剛太郎君ね。その体格だから、声量はありそうね。」
森山先生は、オーケストラ部の顧問、原田先生は、合唱部の顧問である。
祥子「剛太郎君、隣で練習してみよっか。」
剛太郎「うん、行こう。じゃ、先生、失礼します。」
真奈美「私と和美は、こっちにいるからね。」
和美「どんなレベルか、知っとかないとね。」
音楽室では、オーディションが再開される。隣の部屋に移動する、剛太郎と祥子。
時間が経過し、剛太郎の番となる。
森山先生「川口さん、剛太郎君達を呼んできてもらえる?」
真奈美「分かりました。」
そう言って、隣の部屋に、剛太郎達を呼びに行く真奈美。
しばらくして、剛太郎と祥子、呼びに行った真奈美も戻ってくる。ただ、祥子の目は真っ赤になっていた。
森山先生「じゃ、剛太郎君、始めましょうか。」
剛太郎がピアノの横に移動する。目が真っ赤の祥子に話しかける和美。
和美「祥子、どうしたの。目真っ赤よ。」
真奈美「剛太郎君の歌に、感動したらしい。」
祥子「・・・言葉が・・・出ないの・・・。」
前奏が始まる。剛太郎のアリアが始まる。
第二十四話に続く。
第二十四話に続く。第二十四話も書きます。




