第二十二話 剛太郎、唯一の手料理。
剛太郎の手料理とは?命名はアレ。
第二十二話 剛太郎、唯一の手料理。
その男の名は、岩田剛太郎。
高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。
見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。
頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。
ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。
スーパーに到着した剛太郎と祥子。話ながら買い物にいそしむ。
剛太郎「あと、何を買うの?」
祥子「メモメモ、んと、卵、小麦粉、お肉などなど、まだまだかな。」
剛太郎「いっぱいあるね。」
祥子「誰かさんが、たくさん食べるからねー。」
剛太郎「食費は、幾ら出すから。」
祥子「いいの、いいの。そんな、剛太郎君がお金出したなんて、お父さんに分かったら、本気で怒られるから。」
剛太郎「何故?」
祥子「お客様に、お金を出させるとは何事かってね。」
剛太郎「武士だね。」
祥子「うん。武士だ。剛太郎君と同じだね。」
談笑しながら、買い物を続ける二人。
剛太郎「お昼は、何か食べるの?」
祥子「うん。お母さん、お昼に来客っていってたから、済ませて帰った方がいいかなって思ってるけど。」
剛太郎「そうか。」
祥子「どうしたの?」
剛太郎「うん、今回のお礼と思って、僕が出来る唯一の料理を、祥子ちゃんに食べてもらおうって思ってね。まだ、9日もあるから、次の機会でもいいよ。」
祥子「剛太郎君の手料理・・・。気になる。今夜眠れなくなるから、帰って早速、頂きます。」
剛太郎「そんな、ほんとに、ほんとに、たいしたもんじゃないんだから、超簡単なやつだから、ほんと期待しないで。」
祥子「何だろう・・・。気になるーーー。さ、急いで、帰りましょ。」
剛太郎「ほんと、期待しないでね。」
スーパーの会計を待つ、剛太郎と祥子。剛太郎達の前に並んでいたおばあちゃんが、会計を終わり、カゴを袋詰めするカウンターに移動した。向こうから歩いてきた若い男が、おばあちゃんとぶつかってしまい、買い物カゴから商品が、転がっていた。。
若い男「おいおい、ばあさん。何ぶつかってんだよ。気をつけろよ。」
捨て台詞を残し、立ち去ろうとする男。その前に祥子が立ちはだかる。
祥子「ちょっと、ぶつかってきたのはあんたの方じゃないの。転がした商品くらい拾ったらどうなの。」
おばあちゃん「いいんだよ。自分でやるから、お嬢さん、いいんだよ。」
若い男「お嬢ちゃん、なんだ、俺がぶつかった証拠でもあんのか?」
証拠「さっき、ぶつかってたじゃない。みんな見てるよ。」
若い男「何言いがかりつけてんだ。テメー。」
祥子の後ろから、睨みをきかす剛太郎。拳を握り、指を鳴らす。鬼の形相で、睨みをきかす剛太郎。剛太郎の存在に気づいた若い男。
若い男「あ、おばあちゃん、ごめんねー、ぶつかって。今拾うからねー。」
全部拾って、逃げ出す若い男。
若い男「さ、さいならー。」
おばあちゃんに掛け寄る祥子。
祥子「おばあちゃん、大丈夫?」
おばあちゃん「ええ、ええ。ありがとうね。若夫婦さん。」
祥子「若夫婦さん?」
おばあさん「後ろの、頼もしい人は、旦那さんでしょ?」
祥子「い、いえ、私たちは・・・。」
おばあさん「羨ましいね。」
そこへ、孫娘らしき人が駆け寄ってくる。
孫娘「おばあちゃん、大丈夫?」
おばあさん「美和ちゃん、大丈夫だよ。このご夫婦に助けてもらったからね。」
孫娘美和「ありがとうございました。私が車を取りに行っている間に、何かあったみたいで。」
剛太郎「荷物、車まで持ちましょうか?」
孫娘美和「ありがとうございます。私が持ちますから、大丈夫です。」
その時、一人の男性が拍手をした。
祥子「あ、お会計・・・。」
会計を催促されたと思い振り返る祥子。
振り返ると、レジに並んでいたお客さん全員が、拍手していた。
剛太郎「祥子ちゃん、偉いね。でも、僕がいないときは危険だから、注意してね。」
祥子「剛太郎君と一緒じゃなかったら、あそこまでしてないよ。だって、絶対、助けてくれるって思ってたから。」
皆に拍手されながらの会計、照れくさい剛太郎と祥子であった。
スーパーでの買い物を終え、家に戻ってきた祥子と剛太郎。まだ、来客中のようである。
祥子「ただいま。」
剛太郎「ただいま戻りました。」
リビングから、ダイニングへ来る祥子母律子。
祥子母律子「お帰りなさい。剛太郎君、重かったでしょ。そこに置いていて。」
祥子「お客さん?」
祥子母律子「ええ、でも、もう帰られるとこ。」
ダイニングに顔を出す女性。
女性「では、失礼します。あっ。」
祥子「あ、さっきの、美和さん?」
祥子母律子「あら、あなたたち、知り合いなの?」
祥子「じゃあ、お客様って・・・。」
リビングへ行く祥子。
祥子「やっぱり、おばあちゃん。」
おばあちゃん「あら、あら、さっきはありがとうね。ここのお嫁さんだったの?」
祥子母律子「いえ、私の娘なんです。」
おばあちゃん「律子さんの娘さんだったの。」
祥子母律子「おばあちゃんね、うちの亡くなったおばあちゃんの同級生だったの。今日は、お参りにいらしたのよ。」
祥子「ありがとうございます。」
おばあちゃん「いえいえ、こちらこそ、さっきはありがとうね。ほんと、頼もしい旦那さんで羨ましいね。」
祥子母律子「じゃ、さっきの話の二人は、あなたたちだったのね。」
剛太郎「こんにちは。先ほどは失礼しました。どこもお怪我はなかったですか。」
おばあちゃん「ほんと、頼もしい限りね、律子さん、こんな立派なお婿さんでいいわね。」
祥子「おばあちゃん、私たち、まだ結婚はしていません。」
おばあちゃん「じゃ、婚約者なの?」
祥子「いや、クラスメートです。」
おばあちゃん「高校生なの?立派な体格だから、もう成人かとおもったわよ。今日はほんとにありがとうね。」
おばあちゃんと孫娘の美和が帰る。
ダイニングに戻ってきた祥子母律子。
祥子母「そういえば、あなたたち、早かったわね。お昼過ぎじゃなかったの?」
祥子「うん、剛太郎君が、手料理作ってくれるっていうから、早く帰って来ちゃった。」
祥子母律子「剛太郎君の手料理・・・。それは、楽しみね。」
祥子「お母さん、お昼は?」
祥子母律子「もう済ませたわよ。それに、二人の邪魔しちゃ悪いから、お洗濯でもしてますよ。」
祥子「邪魔って、もう、じゃ、私たちはお昼にするから。お洗濯頑張ってね。」
祥子母律子「ごゆっくりー。」
リビングへ行く祥子母律子。
祥子「じゃ、お昼にしようか。」
剛太郎「うん。じゃ、とりあえず、座ってて、作るから。」
ぎこちない手つきで、どんぶりをお湯で温める剛太郎。フライパンに、少量油を引き、卵を割り、目玉焼きを作っている。
祥子「何が出来るのかなー。」
剛太郎「あんまり、期待しないでね。」
どんぶりにご飯をよそって、その上に目玉焼きをのせる。それを、祥子の目の前に出す剛太郎。
剛太郎「はい、完成。醤油はお好みで。」
祥子「これ?これって・・・。」
剛太郎「笑わないでね。目玉焼き丼。」
祥子「剛太郎君らしいや。ワイルドだねー。」
剛太郎「でも、これ、美味しいから。」
二人分を作った剛太郎。
剛太郎「じゃ、食べようか。」
祥子「うん、頂きます。」
剛太郎「どうぞ。僕も頂きます。半熟卵を崩して、そこに醤油を入れて、かき混ぜてたべてみて。」
言われたようにする祥子、早速食べてみる。
祥子「うん、うん、うん、これは意外と・・・。」
剛太郎「美味しいでしょ。」
祥子「火を入れることで、味が濃くなるのかな?」
剛太郎「多分。よく分からないけど。」
そこへ、料理が気になってしょうがない祥子母律子が様子を見に来る。
祥子母律子「どれどれ。うん、剛太郎君らしいワイルドな料理ね。」
祥子「剛太郎君が出来る、唯一の料理なんだって。」
祥子母律子「今度、私も頂くね。」
剛太郎「是非、いつでも。5分で出来ますから。お腹いっぱいになりますよ。」
祥子に、お礼の手料理を振る舞った、剛太郎であった。
夕方になり、祥子弟蒼太、剛太郎妹今日子、祥子父一郎が帰ってきた。
祥子弟蒼太「ただいまー。」
剛太郎妹今日子「ただいまーー。」
祥子父一郎「今帰ったぞ。」
祥子・剛太郎・祥子母律子「お帰りなさい。」
祥子母律子「今日は、特別メニューがあるのよ。剛太郎君の手料理よ。」
祥子父一郎「なんと、剛太郎君、料理もできるのか?」
祥子弟蒼太「凄い、食べてみたい。」
剛太郎妹今日子「アレか!」
剛太郎「すまん、今日子。アレだよ。」
祥子「アレっていうんだ。」
剛太郎妹今日子「でも、アレ、以外と美味しいよ。わたしは、お兄ちゃんのアレ好きだよ。」
祥子母律子「じゃ、夕飯にしましょう。みんな、手を洗ってきてね。」
食卓を囲む6人。
祥子父一郎「では、頂きます。」
全員「いただきます。」
剛太郎の目玉焼き丼を目にする。
祥子父一郎「これは、これは。」
祥子弟蒼太「シンプルイズベストだね。」
祥子「命名、我が家でもアレにしよう。」
剛太郎「卵を崩して、醤油を垂らして、かき混ぜて食べてください。以上です。」
皆、同じように、手順を踏み、食べだす。
祥子父一郎「おおっ、これは、以外と・・・。」
祥子弟蒼太「味が濃いね。」
祥子「うん、美味しい。」
祥子母律子「5分で出来るのが嬉しいわ。」
剛太郎妹今日子「このアレ、いいでしょ。」
剛太郎「気に入って頂ければ、幸いです。」
皆、気に入ったようである。
そんな中、祥子父一郎が話し出す。
祥子父一郎「そういえば、今日、近くのスーパーでな、若い夫婦が、おばあさんを助けたらしい。何でも、ぶつかって謝りもしない男に、気の強い女性が怒り出し、屈強な男が相手の男を威嚇して、退散させたらしい。そんな筋の通った若者がいるとはな。」
祥子「気の強い・・・。」
剛太郎「威嚇・・・。」
祥子母律子「その話、どこでお聞きになったの?」
祥子父一郎「いや、今日の討論会でだ。昼休憩前に、他議員の秘書がお茶を買ってくるときに目撃したと言っておった。お年寄りや弱い人を思いやる心は、大切だという話になったんだ。そんな若者も世の中にはいるんだと、感心したよ。」
祥子母律子「あなた、その二人、あなたの目の前に居ますよ。」
祥子父一郎「は、そういえば、女性は美人で、男性は屈強な・・・!!!」
祥子母律子「はい、祥子と剛太郎君ですよ。」
祥子父一郎「だが、若夫婦と言ってたぞ。」
祥子母律子「今日は、スーパーに買い出しに行ってもらったから、カート押して仲良く買い物する姿は、若夫婦に見えたんじゃないですか?」
祥子父一郎「祥子、剛太郎君、そうなのか?」
祥子「気の強いって、まあ、剛太郎君がいたから、強くいけたんだけどね。」
剛太郎「後ろから、少々威嚇はしましたね。」
祥子母律子「そのおばあちゃん、美和さんのおばあちゃんよ、今日、お義母さんのお参りに来られたの、同級生だったからって。」
祥子父一郎「そうだったのか。祥子、剛太郎君、ありがとうな。うむ、気持ちも上向きになったところで、あとで、カラオケタイムだな。」
祥子「お父さん、歌いたいんでしょ。」
祥子父一郎「歌いたいし、剛太郎君の歌も聴きたいね。」
剛太郎妹今日子「わたしも歌うー。」
祥子弟蒼太「僕もー。」
祥子父一郎「うんうん、歌おう。」
今夜もカラオケ大会の様相である。
一方、二階では、クマエルが、クマリン、マモリンに深刻な話をしていた。
クマリン「あーあ、下は賑やかだねー。」
クマエル「そうだね。」
マモリン「でも、ぼくもずっとこっちにいられるから寂しくないよ。」
クマエル「そうだね。」
クマリン「クマエル、どうかしたの?」
クマエル「・・・うん・・・。戻らなきゃいけないみたい。」
マモリン「どこへ?」
クマエル「・・・天界・・・。」
クマリン・マモリン「えええええええーーーーーー。」
第二十三話に続く。
第二十三話に続く。第二十三話も書きます。




