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男!岩田剛太郎の秘密  作者: やのへい
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第一話 岩田剛太郎登場

見た目はゴツいが中身は・・・。男!岩田剛太郎の秘密とは。

第一話


 その男の名は、岩田剛太郎。

高校3年生18歳、ゴツいのは名前だけではなく、見た目もゴツい。身長185cm体重135kg、柔道部主将、屈強な体。目つきも鋭く、強面、かなりゴツい男。

見た目に反して、この男、気は優しく、あまり怒らない。

頭も良く、県下でトップクラスの進学校(一高)に通う。文武両道の男。

ただ、彼には、人に言えない秘密があったのです。


 一高の正門、柔道の練習を終え、家路に向かう剛太郎。途中、公園で遊んでいる、二人の小学校低学年女子を見つける。その一人の女の子の首から下げていた、クマちゃんポシェットが、剛太郎の目にとまる。

無言のまま、その二人の女の子に近づいていく剛太郎。剛太郎に気づくが、まだ二人で遊んでいる女の子たち。じわじわと距離をつめる剛太郎。そして、ついに女の子の目の前まで来る。あまりの威圧感に動けなくなる女の子二人。緊急事態に気づき、近くのベンチで話していた母親が、慌てて娘たちのところへ駆け寄る。

座り込む剛太郎。じっと一人の女の子のクマちゃんポシェットをじっと見つめる。

母親が割って入る。

母親「こ、この子に何か・・・、ご、ご用でしょうか・・・?」

勇気を振り絞って、話す母親。

母親の存在に気づき、会釈する剛太郎。

剛太郎「そのクマは、どこで買ったんですか?」

と、その母親に野太い声で尋ねる。

母親「えっ、えっと、そこのショッピングモールですけど・・・。」

母親が、指で指し示す。

剛太郎「そうですか。ありがとうございます。」

と一言。

ポシェットの女の子「ガールズハウスってとこだよ。」

とポシェットを剛太郎に見せながら答えた。

剛太郎「びっくりさせて申し訳ありません。」

そう答え、まじまじと、ポシェットを見る剛太郎。

こちらに危害を加えないと分かり、ほっとする母と女の子二人。

剛太郎「では、失礼します。」

と回れ右して、ダッシュでその場を去る剛太郎。

ポカーンとする、母親と女の子二人。


ダッシュ、ダッシュ、ダッシュ。ショッピングモールへ向かう剛太郎。

モールに到着し、ガールズハウスを探す剛太郎。

案内所へ向かい、案内所のお姉さんに話しかける剛太郎。

剛太郎「すみません、ガールズハウスは、どこですか?」

あまりの迫力に威圧されながら答える、案内所のお姉さん。

お姉さん「あ・・・、右の奥で御座います。」

お姉さんに会釈して、目的地を足早に目指す剛太郎。

ついに、ガールズハウスに到着。テナント内には、お客が10名ほど。客層は、小学校低学年から中高生のすべて女子。

のっしのっしと重戦車が乗り込んでいく。十戒のもモーゼのごとく道が開く。

そして、あの女の子が持っていたクマちゃんのコーナーを見つける。

ニヤリと笑い、座り込む剛太郎。何点か物色し、クマちゃんカードケースとクマちゃんコップを持って、レジに並ぶ。レジには3人並んでいたが、その威圧感からか、前の2名は、売り場へと戻りレジを開けてくれた。すぐに剛太郎の会計となった。

会計のお姉さん「お買い上げありがとうございます。贈り物ですね。」

と当たり前のように聞いてくる。

剛太郎「はい、そうです。」

と当たり前のように答える剛太郎。

精算を終え、重戦車の帰還。

贈り物なんだと安心する様子の客達。

帰り道もまた、皆、道を開ける。

モールを出て、一目散に帰宅する剛太郎。


帰宅途中、バス停で男女が揉めているのを見つける剛太郎。男は近くの高校(秀英高)のようである。女は剛太郎の同級生の夏目祥子であった。一高は公立、秀英は私立であり、学力はさほど変わらない高校である。

祥子「だから、いやだって言ってるでしょ。」

秀英男(稔)「いいから、付き合えよ。」

揉めているようである。

剛太郎に気づく祥子。

祥子「あ、剛太郎君、ここ、ここ、待ってたわよ。」

怪訝な顔する剛太郎。

剛太郎「え、夏目さん?」

祥子「早く、早く。」

とりあえず、急いで、向かう剛太郎。祥子の元に到着。

祥子「だから、私、彼氏いるの。」

稔に向かって話す祥子。

稔「まさか、こいつか?」

剛太郎を見上げる稔。

剛太郎「は?」

剛太郎の腕に抱きつく祥子。

祥子「私、強い人が好きなの。」

びっくりする剛太郎。

稔「こんなでくの坊がいいのか?」

稔は、中肉中背。

稔「嘘つくな、一緒に行こうぜ。」

祥子の手を、無理矢理引っ張る稔。

稔の手を振り払い、剛太郎の後ろに隠れる祥子。

稔「おい、どけよ。」

稔の手が、剛太郎の手にあたり、さっきモールで買った袋を飛ばしてしまう。

パリンといやな音。

三人同時に

剛太郎・祥子・稔「あっ!」

剛太郎の表情が鬼の形相に変わる。

剛太郎「貴様―!!」

稔の胸ぐらを掴み、なんと、片手で持ち上げる。足ブラブラ状態の稔。

稔「はいー?ちょ、ちょっと待って、降ろしてっ、降ろして。」

驚いた祥子。

祥子「剛太郎君、待って、待って。」

頭に血が上っている剛太郎、そのまま、稔をぶん投げた。後ろに尻餅をつく稔。

稔「イテテテテ。」

止めに入る祥子。

祥子「ちょっと待って、待ってーーー。」

祥子の言葉に、我に返る剛太郎。

剛太郎「あらっ。」

稔に謝ろうと、近づく剛太郎。

稔「ひいっ、ごめんなさい。」

逆に謝られる剛太郎。

稔は走って逃げていった。

安堵した表情の祥子。

祥子「剛太郎君、ありがとう。剛太郎君、やっぱり、力持ちね。稔を片手で持ち上げちゃうんだもん。びっくりした。剛太郎君が怒ったとこ、初めて見たよ。あ、あの子ね、稔っていうんだけど、中学が一緒だったの。先月くらいに彼女と別れたらしいんだけど、それからつきあってくれってしつこく言い寄られてたの。これで、稔もあきらめるでしょ。ありがとう。」

それどころではない、涙目の剛太郎。

剛太郎「コ、コップが・・・。」

祥子「えっ、コップ?」

祥子がモールの包装袋を開ける。

祥子「あ、コップ割れちゃってる。私のせいだね。剛太郎君、ごめんね。弁償するから。」

袋から割れたコップを取り出す祥子。コップのクマちゃんの顔が真っ二つ。それを見て気絶する剛太郎。

祥子「えっ、ちょ、ちょっと、剛太郎君、大丈夫?」

剛太郎を抱きかかえる祥子。

祥子「お、重っ、重い~。」

剛太郎の頬を叩く祥子。

祥子「おーい、だーいーじょーうーぶー。」

やっと、目を覚ます剛太郎。

剛太郎「あ、夏目さん、ごめんなさい。」

立ち上がる剛太郎。

剛太郎「クマちゃんは・・・。」

祥子「クマちゃん?」

はっとする剛太郎。

剛太郎「いや、コップは?」

申し訳なさそうな祥子。

祥子「ごめんねー。」

と、割れたコップを剛太郎に渡す。

剛太郎「ごめんね。」

???な感覚の祥子。

祥子「いや、謝るのはこっちだよ。剛太郎君は、何も悪くないよ。」

剛太郎「夏目さんにじゃないんだ。」

祥子「あ、わかった。誰かへの贈り物だったんでしょ。その相手にごめんねってことね。剛太郎君、ほんとごめんね。それ、あそこのモールのガールズハウスのやつだよね。わたし、明日にでも、同じもの買ってくるから。」

更に落ち込む剛太郎。

剛太郎「一個しかなかったんだ・・・。」

祥子「同じデザインとか、色違いでもいい?とりあえず今から行って買ってくるね。あ、剛太郎君も来る?」

剛太郎「行く!」

言葉に気合いが入る剛太郎。

祥子「そんな、気合い入れんでも・・・。」


剛太郎と祥子、ガールズハウスに到着。

祥子はコップのコーナーに。

剛太郎は、目をキラキラさせて、クマちゃんコーナーを物色。

祥子「剛太郎君、このコップで良いかな?」

クマちゃんコーナーにどっぷりの剛太郎。威圧感で誰も近寄れない。

そーっと、剛太郎の背後に回り込む祥子。剛太郎の独り言をダンボの耳で盗み聞き。

剛太郎「こっちのクマさんも良いな、でも、この眉毛のクマさん良いな。はむはむクマさんも良いな、あ、クッションもあるのか。」

この瞬間、全てを悟った、祥子。

祥子「あのー、お取り込み中、すみません。」

はっとする剛太郎。

剛太郎「あ、夏目さん、コップは決まりました?」

祥子「さっきから、呼んでるんですけど。」

剛太郎「ああ、ごめんなさい。」

祥子「このワンちゃんのにしようかなって。」

剛太郎「えっ、クマじゃ・・・。」

がっかりする剛太郎。

祥子「うっそぴょーん。こっち、こっち。」

割れたクマちゃんコップの色違いを見せる祥子。

ほっとする剛太郎。

剛太郎「それで、お願いします。」

会計を終え、モールを出る二人。


祥子「もう7時だよ。遅くなってごめんね。」

ニコニコ気持ち悪い剛太郎。

剛太郎「いいんです。」

祥子、核心を突く質問。

祥子「あのさ、剛太郎君って、クマちゃん好きなの?」

ぎょっとする剛太郎。

剛太郎「えっ、いや、その、い、妹が好きなんで・・・。」

祥子「ふーん。」

丁度、自分の持ってるクマのキーホルダーを、剛太郎に見せる。

剛太郎「あ、それ、どこで売ってるの?」

祥子「正直に言いなさい。クマちゃん好きなのは、剛太郎君でしょ。」

剛太郎「い、いや、妹が・・・。」

祥子「正直に言ったら、このクマちゃんあげる。」

剛太郎「・・・本当?」

祥子「あげるよ。」

剛太郎の前で、クマちゃんキーホルダーを振ってみせる。

鼻息が荒くなる剛太郎。

剛太郎「夏目さん、嘘言ってごめんなさい。クマちゃん好きなのは、僕です。」

笑顔になる祥子。

祥子「やっぱりー。なるほどね。よっぽど好きなんだね、あんなに怒ったり、悲しんだり、気絶したりするんだもん。」

照れる剛太郎。

剛太郎「このことは、内密にお願いします。」

祥子「なんで?」

剛太郎「だって、僕みたいにゴツいのが、クマちゃん好きって、やっぱりおかしいでしょ。柔道部主将だし、男だし。」

祥子「うーん、でも良いんじゃない。私は逆に、ギャップがあってカワイイって思うけど。」

剛太郎「そうですか?」

祥子「じゃ、正直に言ってくれたから、これあげるね。」

クマちゃんキーホルダーを剛太郎に渡す祥子。

剛太郎「クマちゃんだ!」

祥子「喜びすぎ。」

剛太郎「この事は、本当に、ご内密にお願いします。」

念をおす剛太郎。

祥子「じゃあ、みんなには、内緒にする代わりに、わたしのお願い聞いてね。」

ちょっと困った顔の剛太郎。

祥子「一つ目は、敬語でしゃべらないこと、同級生なんだから。」

頷く剛太郎。

祥子「二つ目、また、稔がちょっかい出してきたら、わたしを守ること。」

頷く剛太郎。

祥子「三つ目。」

まだあるのかって顔の剛太郎。

祥子「あ、いま、まだあるのかって思ったでしょ。」

頷く剛太郎。

祥子「ふふふ。三つ目、今度、剛太郎の部屋をわたしに見せること。」

一回頷こうとして、首を横に振る剛太郎。

剛太郎「それは、ちょっと・・・。」

祥子「じゃ、みんなに言っちゃおうかなー。」

仕方ないなの表情の剛太郎。

剛太郎「分かりました。」

祥子「敬語、使わない。」

剛太郎「分かった。」

祥子「じゃあ、明日、早速。」

剛太郎「えっ、明日はちょっと・・・。」

祥子「駄目なの?」

剛太郎「散らかってるし、掃除しないと。」

祥子「あ、大丈夫。わたし掃除得意だし、やってあげるから。」

観念した剛太郎。

剛太郎「はい、はい。わかりました。」

祥子「はいは、一回。」

剛太郎「ハイ!」




第二話へ続く。


続きます。第二話も書きます。

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