記憶のない少女
「ここ、どこ?」
私は、辺り一面真っ暗な中にいた。月の光さえ差さない、真っ暗な場所。
本当にここはどこなのだろう。わからない。
そもそも、どうして私はここにいるのだろうか。それもわからない。
心細い。どうしよう。どうして。
そこまで考えて、私は絶望した。自分がどうしてここにいるのか、ここはどこなのか、それ以前に、
「私は、だあれ?」
自分の名前も、それ以外の自分のことも、全てわからなくなっていたのだった。
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自分のことが何一つわからない。
そう気がついた後、あまりの心細さに泣きそうになったが、ここでうずくまっても状況は良くならない。
この暗い場所にいては、何かが襲ってきても逃げられない。
私は明かりを求めて移動することにした。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫。怖くなんかなーいさ。」
そんなセンスのない歌を口ずさみながら、真っ暗ななかを手探りで歩いた。
でも、どうしてこんなセンスのない歌が口をついて出たんだろう。なんだか、記憶がないはずなのにとても懐かしい。かつてどこかで聴いたのだろうか。
そうこうしているうちに、暗くて何も見えなかった周囲が少し明るくなってきた。
ぼんやりとだけど、ちゃんと自分の足下が見える。
そのまましばらく歩き続けていると、前方にぽっかりと、大きい穴が空いているのが見えた。
のぞいてみると、底が見えないくらい暗く、深かった。
その辺の石を投げ入れてみる。待てども待てども音がしない。
「どうしよう。」
困ったな。この穴を越えないと先に進めない。
途方に暮れて穴の前でうろついていると、背中に誰かの手が触れる感触がした。
次の瞬間、私は穴の中に落ちていった。
いったい何が、誰が私を穴に落としたのだろうか。
暗いのと、わずかな月の光による逆光で顔が見えなかった。
身体が落ちていく。衝撃で悲鳴もあげられない。
やっぱりそうとう深かったのか、まだ地面の気配がない。
「誰か、誰かっ 助けて...!」
やとのことでそれだけ言えた。
あたたかい光が広がる。炎のようなあたたかさではないけれど、静かで優しいあたたかさ。
そう、まるで月の光のような。
目の端に光が触れた気がした。
その光のおかげだろうか。どんどん落下速度が緩やかになっていく。
目を開けて下を見てみると、地面が見える。
ああ、私は助かったのか。そう思うと、ほっとして少し涙がにじんだ。
まるで宙に浮いているように、私の身体はゆっくりと地面に着地した。
この光はいったい何なんだろう。まだ私の周りを照らしている。
「まあ、いいかな。おかげでよく見えるもの。」
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「ここは、どこ?」
今いる場所から道が四方八方にのびている。どこに通じているんだろう。
...怖い。でも、進まなければいけない。そんな気がした。
自分からみて一番右の道を進もう。
なぜだか、その道を行けばいい。そう確信していた。
光があっても薄暗くてじめじめした道を歩いていく。石で覆われているらしいけど、ところどころヒビが入っていて、そこから草が生えている。
だいぶ進んだ所で、石の天井にくりぬかれた痕と、そこに続く階段を見つけた。
上ってみよう。
少し急な階段を上って、埃にまみれてクモの巣がはっている部屋にたどり着く。ここは誰かの寝室のようだ。
随分古く、普通の部屋よりもだいぶ広い。
まるでお姫様が使うようなドレッサーに、何着もきらびやかなドレスが納められているクローゼット、天蓋つきのベッドまである。
どうやら、私は相当なお金持ちの家に侵入してしまったみたいだ。
どうしよう!あやしいよね。悪いものじゃないって分かってもらえるといいけど...。
部屋を出て家人に出会うのを恐れてまごついていると、
ガチャリ
ドアが開いてしまった。
どうしよう、どうしよう!
隠れる間もなく開いたドアの向こうに、一人の男性が立っていた。
下手な文章ですが、読んでくださってありがとうございます。
のんびり書いていきます。
どうぞよろしくお願いします。