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忘れたいのに
本当に好きな人とは結ばれないようになっている。
そんな言葉を聞いたことがある。
昼下がりの空、確かにそうかも、と煙草の煙を燻らせた。
「弥生、こっちにおいで」
貴晴がわたしを呼んだ。
過去の記憶を断ち切るように煙草を灰皿にトン、と押し付けて 彼のいるベッドへと戻る。
「どうしたの?心ここに在らずみたいな顔して。」
貴晴が私の顔をのぞき込む。
「考えすぎ。」
わたしはクスッと笑って、彼のおでこに口付けを落とした。
考えすぎて、勘がいいから困るのよ。
あの雨の夜に置いてきたはずの気持ちが、わたしのなかで小さく疼く。
あの人は今、なにをしているのだろう。
まだわたしを忘れられずにいるのだろうか。
まだわたしを求めているのだろうか。
どうしてこんなにおかしな衝動を抑えられなくなるんだろう。
すべてあの夜に置いてきたというのに。
3本目の煙草の代わりに、わたしは貴晴に深い口付けを求めた。