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第六話:【創造】の魔王出陣する

 ロロノ人形が攫われてから、敵の位置情報が来るまでの間、ロロノが作った影武者用の人形を見せてもらっていた。

 今もクイナは自分の影武者人形を突いている。ついには服の中を手を入れて、怪しげな動きを始めた。


「すごいの、こんなところまで同じ」


 好奇心はわかるが、俺の前ではやめてほしい。

 そうこうしているうちに、ロロノ人形からの電波を受信し、ロロノが空戦と遠距離砲撃に特化した白騎士を発進させた。

 電波を受信できる白騎士に追跡させ、電波の圏外にダンジョンがあったとしてもしっかりと捕捉するためだ。


「マスター、白騎士が引き返し始めたみたい」

「敵のダンジョンを捕捉したようだな」

「ん。たぶん」


 それは朗報だ。

 これでこちらから仕掛けられる。


 敵は俺を倒すために同盟を組んでいる。

 そいつらと全員と正面衝突するのは避けたい。

 しかし、今回は違う。敵が一人のときに大義名分をもって報復するのなら、相手にするのは一人で済む。

 確実に戦力を削りたい。

 白騎士の帰還が待ち遠しかった。


「ふと気になったんだが、どうやってアヴァロンの外と通信してるんだ? アヴァロンから出た瞬間に電波なんて届かなくなるはずだ」


 そうなのだ。

 ダンジョンというのは異空間だ。アヴァロンは街ではあるがれっきとしたダンジョン。外からの電波は遮断される。

 普通なら、ロロノがここで電波を受け取れるほうがおかしい。


「原始的な方法で解決してる。アヴァロンの入り口に通信機器を乗せたゴーレムが一体いる。その子が五分に一回、【平地】エリアに入る。それから【平地】エリアのアヴァロンの街への入り口にいるゴーレムに溜めたデータを送る。データをもらったゴーレムはアヴァロンの街へと入ってきて私にデータを送る」

「……まるでバケツリレーだな」

「これが一番早くて正確。原始的な方法が優れている場合もある」


 確かにその通りだ。

 五分に一度のゴーレム通信リレーでは、外のゴーレムからデータをもらうだけではなく、内側のゴーレムからもデータを外に送っているらしい。


「このシステムなら、ストラスとマルコのところに設備とゴーレムを派遣して、中継局をいくつか用意したら、いつでも二人と通信できるな。今後は情報を密にしていく必要があるし、いつまでも青い鳥に頼ってもいられない。ロロノ、頼んでもいいか」

「難しいと思う。アヴァロンはダンジョン入り口から二フロアで、マスターがいる部屋。だけど、二人のダンジョンはそうじゃない。ゴーレムに何十回もリレーさせるのはしんどいし、たぶん冒険者たちに壊される」

「それもそうか、難しいな。いや、逆に考えようか。俺に話があるときはダンジョンの入り口で通信機器を使ってもらえばいい。手紙よりはずっと早い」

「それなら、なんとかできる。二人がOKしたら言って。設置してくる」

「その時は任せるよ」


 マルコは最近拗ね気味だ。

 会う時間はなかなか取れないが、こうやって気軽に連絡する手段があれば、距離は縮まるだろう。


「あっ、マスター。白騎士が帰ってきた」

「俺にも聞こえたよ」


 着陸音が聞こえた。

 ロロノと一緒に外に出る。

 白騎士が着陸していた。


「手足のないゴーレムには違和感があるな」

「空戦なら手足は飾り。手足を使わないといけない時点でコンセプトが破綻してる。砲が体の中心にあったほうが射撃の精度が安定する。あとは空力の徹底。手足なんて空力を悪くするデッドウェイト」


 ロロノがどや顔で説明する。

 白騎士は巨大な砲を中心に構築した白い戦闘機だ。

 もともと、飛行型で遠距離砲撃特化とは聞いていたが、ここまでぶっとんだものができるとは思ってなかった。


「マスター、白騎士が敵のダンジョンの画像を撮影してきた」


 そういって、ロロノはタブレットを操作し、ダンジョンの写真を見せてくれる。

 地図だけでなく、写真もあれば、どの魔王かの特定がしやすい。


 相手の魔王の力量を調べて、問題なく倒せるようであれば、今すぐに出発の準備を整える。分が悪いなら戦略を練る。


 ……ロロノ人形で打撃を与えて、取り乱しているうちに攻めたい。

 今から、【刻】の魔王のダンジョンに転移しよう。あそこにいる魔王たちなら、おそらく誰かは写真のダンジョンの持ち主を知っているはずだ。


「ロロノ、今から【刻】の魔王のダンジョンに向かって敵の情報を仕入れてくる。地図と写真のプリントアウトを頼む」

「ん、任せて」


 ロロノが頷き走り去るが、すぐに足を止めた。

 何があったのかとそちらを見る。


「その必要はない。私がきた!」


 白い狼耳と尻尾、褐色の肌を持つ美女が仁王立ちしていた。

 俺の親にして俺の魔物になったマルコだ。


「どうしてマルコがこんなところに?」

「水臭いことを言っちゃダメ。大事な妹分のピンチだしね。一応、私は君の魔物だ。ちょっと、ロロノ。それ見せて。ふむふむ、ああ知ってる。たしか五十年ほど前に生まれた子だ。【豪】の魔王、中堅ってところか。能力が能力だけに寝取られに気をつけろって話が出回ってたね。だから、印象に残ってる」


 俺は苦笑する。

 まさか、こんなに早く敵の正体を見つけられるとは。


「寝取られってなんだ」

「ん? その名の通りだよ。そいつは女性型の魔物を犯すと支配できるんだ。かなり危険な能力だね。ほしい魔物がいたら、攫って麻痺毒撃ち込んで、犯してゲット。そいつってバカそうに見えて狡猾でさ。そうやって支配した魔物を一度親元に返して、支配した魔物に、仲間を騙させてさらにゲットなんてことをやってさ。一部ではすっごく恨まれてる」


 えげつないな。

 ロロノが自分の体を抱いている。鳥肌が出ていた。

 もし、ロロノが攫われたらそうなっていたのか。ロロノだけではなく、ロロノを利用してクイナやアウラも手に入れようとしただろう。

 ……襲撃は失敗したが、そうしようとしただけで万死に値する。


「単刀直入に聞く。【豪】の魔王アガレスと俺ならどっちが強い?」


 その質問を聞いてマルコは笑う。


「断然、プロケル。私を救ったプロケルがそこらの魔王に負けるわけない」

「よし、なら出撃の準備だ。クイナ、デュークに攻撃部隊の準備を三十分以内に整えるように言ってくれ。ドワーフ・スミスにも主力が抜けての防衛準備の用意を」

「任せてなの!」


 クイナが走りさっていく。


「ロロノも、アヴァロン・リッターとコンテナの準備を頼む」

「ん。マスター、三騎士の出撃許可がほしい。本当はテスト運用をしてからがいいけど、こんな最高の実戦機会を無駄にはできない」

「おまえが、三騎士に欠陥はないと断言できるなら許可をする。俺の目よりも、開発者のおまえの判断を信じよう」

「問題ない。事故は起こさないし、仲間の脚もひっぱらない」

「よし、なら積み込め!」

「ん。三十分以内に強襲用装備に換装する」


 ロロノも走っていった。

 三騎士は今回の戦いで大活躍してくれるだろう。


 そして、実のところ今回の戦いは願ってもないことだ。

 ティンダロスのティロのレベル上げに随分と難儀していた。やはり【戦争】でもないと大きくレベリングすることは難しい。


 今回はロロノと同じパーティにティロを入れておこう。

 三騎士は、ロロノの装備扱いであり、彼らの倒した魔物の経験値はロロノのもとへ行く。それが分配されることは大きい。

 今回の戦争は、三騎士の性能実験とティロのレベリングが主になるだろう。


 ◇


 いつもなら、【平地】に軍を並べるのだが今はカジノや周辺施設が並んでいる。

 さすがに物々しい軍勢を並べるわけにはいかない。


 というわけで、地上一階の元【鉱山】エリアに俺の魔物たちが並んでいた。

 そろそろアヴァロンの街が手狭になってきたこともあり、【鉱山】を下の階層と入れ替えて、ここを【平地】にしていた。


 暗黒竜グラフロスがずらりと待機し、アヴァロン・リッター、武器弾薬が詰まったコンテナがいくつも並んでいる。


 暗黒竜グラフロスの空輸で大量の戦力を音速で届ける。

 アヴァロンの得意とする電撃戦だ。


 今回は時間との戦いだ、時間をかければかけるほど、他の魔王に救援を呼ばれたり、主力が抜けたアヴァロンを襲撃される危険性が増す。

 俺の魔物たちが整列する。


「みんな、聞いてくれ。アヴァロンに襲撃があった。敵の狙いはロロノだ。敵はロロノを攫い、辱めるつもりだった!」


 多くの魔物はすでに知っているが、知らない魔物たちは驚き、怒りの声をあげる。


「このような蛮行をけっして俺は許さない。おまえたちの中にはロロノが作った武器に命を助けられたものも多いだろう。報復を行う! 間抜けな魔王に教えてやる。いったい、自分が何に手を出してしまったかを! さあ、みんな。大事な仲間を攫おうとした不埒物に鉄槌を与える。全力で力を振るえ!」


 叫び声が上がる。

 いつにもまして、士気が高い。

 ロロノのことを大事に思ってくれている魔物は多いのだ。


「全員、配置につけ! 出発だ!」


 魔物たちが駆け足で予定されていたコンテナに乗り込む。

 暗黒竜グラフロスたちが叫び声をあげて、コンテナを抱えて飛ぶ。

 さあ、ロロノに手を出した報いを受けさせよう。

 俺は俺の娘に手を出した奴を絶対に許さない。

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